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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
第二章 幼年編~②
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2-28

『ほっほっほ。まだまだ行くぞ!』


「ん・・・鬼!」


「悪魔!」


「えっと・・・へ、変態!?」


『アル、それは無いじゃろ・・・』



 グレーターデーモンとの戦いから一ヶ月。 アルベルトの実力に不満を感じたマーリンの賢者式幼児教育は苛烈さを増す一方で、それはヴィクトリアやエリザベスを巻き込んで行われており、その苛烈さは正に伝説の賢者(やり過ぎ賢者)の二つ名の通りであった


 しかし、そのお蔭というのもアレだが城門には立派な跳ね橋と堀が出来上がっており水路を悠々と泳ぐ水棲の魔物達は修行の過程でテイムしたアルベルトの従魔だったりとその効果は如実に表れていた


 相変わらず焦ると言葉のチョイスが微妙になるのは変わっていないが地獄の特訓とも言えるマーリンの修行を熟す事でアルベルトの実力は確実に上がっていた



「ホントよくこんな事を思い付くって感心するわ」


「ん・・・同意」


「そうかな~。でも実際、冒険者さん達も増えてきて良い感じになって来てるよ」



 最近のマーリンのお気に入りの修行は迷宮を使った二十四時間耐久魔物殲滅作戦である。 魔力さえあればカリュアーが迷宮を創り出す事が出来る。 それを利用して迷宮を創りだし、敢て攻略はせずに外部に溢れだした魔物達と戦うのだ。 その際に使った魔力はカリュアーを通して迷宮の力になるので魔物達は無限湧き状態になるのだ


 更に、余った魔力を新しい迷宮の作成に廻す事で難易度を調整し多くの冒険者を呼び寄せる事に成功していた



「そう言う事じゃなくて・・・」


「ん・・・言っても無駄」



 確かにバイマトの目論み通り冒険者が集まる事で人の流れが活発になったセイレケ砦は既に町と言える規模に成長していた。 今は食料を商人達に頼っているが来年になればそれも自給できるようになるだろうからアルベルトの言う様にいい感じになってきているのだが、彼女たちが言いたいのはそう言う事では無い


 今のセイレケ砦の発展は三人の修行で周囲に満ちる魔力や魔素が不可欠であり、それを彼等に吐き出させているのはマーリンの修行である。 まるで町の発展の為に身を捧げている様なもので二人には堪ったものでは無かった



「慣れると結構楽しいけど・・・」


「ん・・・異常」


「まぁ生まれた時からマーリンさんと付き合ってるんだからしょうがないわね」



 実際アルベルトも初めは文句を口にするが、取り組み始めると実に楽しそうに修行を熟す。 魔法を使わず素手で水源の掘削をしている時など笑顔すら浮かべていたのだ


 挙句の果てには岩盤をブチ破り溜まっていた高圧の水流に天高く打ち上げられる始末だ。 慌ててバイマトが大地にぶつかる前にキャッチしたからこそ大事に至らなかったが、一歩間違えば大怪我をする程であった


 しかし、彼が開口一番にに言ったのは「マーリン、これ楽しい!!他の水源は無いの?」であったのだから、何だかんだでマーリンに毒されている様だった



「アルちゃん。様子を見に来たよ~」


「カリュアー!森の方は大丈夫なの?」


「もうすっかり元通りよ。 これだけ豊富に魔力が満ちていれば態々集めなくても良いからね」



 周囲から魔力を集めることで惑わしの効果を発揮させようとしていたカリュアーの森は、城壁造りの過程で生み出された濃すぎる魔力で魔境化してしまっていたがグレーターデモンとの戦いの過程でアルベルトが澱んだ魔力を浄化した事で正常化に向かっていった


 しかし、魔境化していた事で様々な弊害もありカリュアーは森の修復にてんてこ舞いであったのだが、嫌な顔一つしないでマーリンの修行に付き合っていたのだった



「精霊達も元通りになったし、もう心配もないから遊びに来てね」


「うん、お休みの日にでも遊びに行くよ」


「・・・でも、悪魔が出る様な森なんでしょう?」


『ほっほっほ。アレは澱んだ魔力が濃すぎて空間を歪めたせいじゃよ。 そうポンポン悪魔が出てくる事は無いじゃろう』



 魔境化した事自体は不可抗力とは言えカリュアーが係っているが、グレーターデーモンが森に出現した事まで彼女のせいでは無い。 増してやその事だけで森を不安視する必要は無かった



「フンッ!嫌ならアンタは来なくてもいいのよ?」


「何よ!アルが行くんなら私も行くわよ!!」



 要はカリュアーとエリザベスの相性の問題なのだろう。 ヴィクトリアに対しては嫉妬心は余り湧かない様だがそれ以外の女性?と仲良くするのは気に入らないのか顔を合わせれば揉める二人



「ん・・・正妻の余裕」


「ちょっと!誰が正妻よ!!」


「そうよ!アルちゃんはみんなの物よ!!」


「もう、みんなやめてよ・・・」



 カリュアーとエリザベスが揉める隙を突いたヴィクトリアが定位置であるアルベルトの右側で彼の腕に抱き着く。 それだけならば良かったのだが聞き捨てならないセリフにエリザベスとカリュアーが噛み付いた


 その結果、またしても自身を中心に揉める女性陣という格好のアルベルトは一応は止めに入る。 しかし聞いて貰えないのが判っているのだろう、天を仰いで呟く様に弱々しく言うのが精一杯であった



『ほっほっほ。こればかりは儂の修行では如何にもならんからの』


「そんな~何とかしてよマリエモン」


『誰じゃそれは・・・』



 神話に登場する耳の無い青い猫に頼み込む主人公の様に守護霊に泣き付くアルベルト。 しかしこればかりは賢者の知恵をもってしても良い修行法は思い付かなかった



『ふむ、久しぶりに見てみるか【鑑定】!』



 ステータスの数値に一喜一憂して教育方針を変えるのは長期的に見て良い結果を生まないだろうと頻繁に見ることは控えていたのだが、何かの解決策にでもなればと久しぶりにアルベルトのステータスを見るマーリン。



『フムフム、なかなか良い感じじゃな。 僅かな期間でLVが7も上がっておるぞ』


「へへへ、僕頑張ったもん」



 マーリンの言葉に珍しく子供らしい笑顔ではにかむアルベルト。 一年も経たないでLVが7も上がれば誇って良い数字だ。


 因みに彼の周囲ではまだ三人が揉めているのだが気にしたら負けとばかりにマーリンとの会話に集中するアルベルト。 正に現実逃避という言葉がピッタリであった


 敢てその事を指摘しないマーリンの眼にはアルベルトのステータスが次々と浮かんでくる。 ヴィクトリアとの契約で爆発的に伸びた前回と違って今回は比較的マーリンの予想に沿った成長であった


 LVが上がったのは帝国軍やグレーターデモンとの戦いで得た経験値だろう。 残念ながら賢者式幼児教育では経験値の大幅な獲得は難しい事から、やや不満が残るマーリンであったが彼が成長していると思えば大した問題では無いと割り切れた 


 他にも身体能力の分野である筋力や耐久力に関しては年齢的な事もあり余り伸びてはいないが、成長のピークはまだ先なので特に問題は無い。


 寧ろ敏捷性や器用さが良い伸びを示しており、これは本人の資質だろうが将来が楽しみな数値であった


 そしてマーリンにとっては嬉しい事にLVの割には魔法に関する数値が良い伸びを示していた。 賢者式幼児教育でLVが上がった訳では無いが、ステータスの数値にはその効果が出ており非常に満足のいく結果だ


 だが、ある一点。 どうしても見逃せない文字にマーリンは複雑な表情でアルベルトの瞳を見つめる


『アル、残念な知らせがある』


「残念って・・・ステータスが下がってたとか?」


『いや、それは問題ない。寧ろかなりいい感じじゃ。 しかし・・・称号が増えておる』


「称号?それなら問題ないんじゃないの?」



 基本的には称号はステータスに良い結果を齎す事の方が多い。 それ自体は数値に影響しないがステータスの伸びに関係すると言われているので、後々を考えれば称号が増えて問題が出る事は無い



『良いか、気をしっかり持つのじゃぞ?』



 マーリンがアルベルトにだけ見える様に可視化したステータスを彼の眼前に映しだす



 LV    32

 HP  1850

 MP  4500

 STR  800

 VIT  630

 AGI 1400

 DEX 1250

 INT 1350

 MAG 1400

 CAM   90

 LUC   75


 スキル 身体強化

     魔法強化(全属性)

     無詠唱

     上級剣術

     格闘術

     隠密術

     気配察知

     精霊魔法


 加護  慈愛神の加護

     武術神の加護

     魔法神の加護

     暗黒神の加護

     精霊の加護


 称号  賢者の守護

     神に愛されし者

     苦労人(女難)←new



 契約 ヴィクトリア(始祖の一族)

    カリュアー(上位樹精霊)




「なにコレ!つまりこの状況って・・・」


『そのままの意味じゃろうな』


「こんな称号ありなの!?」



 三人に囲まれた状態のまま絶句するアルベルトであった・・・


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