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77話

「え~と、つまりだ。その子はまだオークの理性がある内に連れてこられた子だということね?」


「う、うむ。そういう事になるな」


 デカマラが少し戸惑った様子で応えてくる。


「で、最初の内は怖がってたけど、そのオークが優しく接してる内にお互い意識をし始めたと。そういう事?」


「話を聞いている分にはそのようですな」


 犬が生暖かい目を、肩を寄せあってイチャイチャしてる二人に向けているねぇ。

 てかなんだろうねぇこれ。


 まぁ、そんなわけで、本来なら種付けされりゃアヘるんだけど、こいつらに関しては、他のオークも気を使って出来るだけダークエルフに目を付けられないよう気を使ってたそうだ。

 

 なんだその無駄な仲間意識。


 ちなみに、こういったオークとなんかちょっといい感じになった甘酸っぱい純愛みたいな体中が痒くなる恋愛してる連中は他にもいるようだ。


 まぁでも結局それはダークエルフの知る所になっちまって、結果的に理性を奪うって手に出ちまったらしいんだけどね。


 ……家畜として捕えたのに、いつのまにかハートマーク浮かべてチュッチュされたらそりゃたまらんか――


 てか言葉も通じないのにようやんな。オークも名前ぐらいはなんとか喋れるようになったらしいけどね。

 まぁ本来の名前はジョセフィーヌらしいから、ちょっとちがってけど。


「いやはや。愛は言葉も種族の壁も超えるのですな」


 黙れ犬。


「その、それでこういう事をマリヤに頼むのもなんなのだが、何組かのオークと女達は、ダークエルフへの行為は、や、やめてだな。一緒になりたいと言うておるのだが……いやもちろん今宿している子供は産むらしいが。その後は正式にお互いのその、なんだ、子作りに励みたいと――」


「勝手にしたらいいじゃん。そんなの」


 あたしは半ば呆れた気持ちで返す。

 たく、大体オークと人間が結ばれようがなんだろうが、別にどうでもいいっての。

 結局孕むのがダークエルフから人間の女に変わっただけだし、愛とか別にしんねぇし。


「――あ、あの……」


 うん? おいおい今度はあの茶髪がモジモジしだしたよ。


「……まさかあんたも実はオークに惚れてましたとかなのかい?」


「ち、違う! ただ、その、その、や、やっぱりこんなこと言えない!」


 いや、だったら言うなよ。てか真っ赤にさせて両手で顔覆って、なんなんだよ。


「……ク――との……けんが――なんて言えないですぅ……」


 ……いや、お前絶対聞いて欲しいんだろ?


「そんなゴニョゴニョしてないで、言いたいことあるならはっきり言いなよ」


 イライラしつつそう聞いたら、指の間からこっちを見てきたよ。


「で、ですから、わ、わすれられなくて……」


「……何が?」


「だ、だからオークとのこ、行為が忘れられないんです! もう、やだぁ~~~~!」


 いや、しんねぇよ。てか今度は両頬に手ぇあてて、身体うねうねさせてっけど、お前さっきまで死にたがってたよな?

 異世界人の情緒パネエな――


「犬。もう愛だ恋だ言ってる奴と、オークの腰つきが忘れられないってのと、その他に上手いこと割り振っといて」


 そういうの犬は得意そうだしな。


「ワン! 承知いたしました!」


 素直で助かるよマジで。





◇◆◇


 まぁとりあえず、犬の仕事が早くて捕らえられていた女の件も落ち着いてきた。

 その日の内にやっちまうのが犬の凄いとこでもあるな。

 しっかしカップルが結構出来てたな。オークと人ってわりと相性よかったりすんのかね。


 あとはオークの身体が忘れられない! とかいうのもまぁまぁいた。そいつらは早速今日から交配活動に入ってる。

 まぁ元気な赤ちゃんをしっかり産んでくれって感じだね。


 ソレ以外に関しては何もせず遊ばせておくのも何だから、手、というか腰の空いてるオークと一緒に城の掃除とかやってもらう事にした。


 あと既に産まれてるオークの餓鬼の世話な。

 コレが意外にも女達に好評でね。小さい内はなんでも可愛くみえるもんなんだね。

 正直あたしには只の豚にしか見えなかったけど。


 ちなみにそういった掃除なんかの指導は正気に戻ったメイド長がやってる。

 孕んではいるけど教えるぐらいはできますわ! て妙に張り切ってたね。

 流石メイドの鏡だ。


 で、とりあえずまた馬鹿とスラパイの部屋に戻ってきたんだけどねぇ。


「ところでマリヤ。実はオークとゴブリンの件だが、一度は了承したのになんなのだが、アキバ兄にも念のため知らせておいた方が良いかなと思うのだ」


 ……はぁ? 全くマジかよこいつ。


「……それは本気で言ってるのかな?」


「え? いや、勿論だ。今回の件マリヤの為にも色々と動いてくれたのだし、やはり筋は通しておいた方が――」


 あたしはこれ見よがしに、はぁ~~~~、っと大きくため息を吐いてやる。


「な、なんだ? どうしたのだそんな顔して?」


「いや。まさか気づいてないわけじゃないよね?」


 一応確認してみる。


「き、気づいてないとは?」


「……あのさ、明らかにここに足りないの一人いるよね?」


 あたしがそこまで言って、漸く馬鹿が感づいたように、むぐ、と唸る。

 難しい顔はしているけどね。


「メルセルク様。流石にお気づきとは思いますが、レイダン殿がここにはいません。念のため場内を探しましたし、エロイーヨにも確認しましたが、そもそも彼女は捕らえられてもいなかったのです」


「そ、それはつまり、なんとか上手く逃げおおせたからではないのかな? 私としては彼女だけでも助かって良かったと思ってるのだが」


「そんな筈無いじゃん」


 全くどんだけお人好しだよこいつは。


「――あの時、馬車の中にいた女が眼の痛みを訴えた際、レイダン殿だけはその顔をみようとはしませんでした。それはハッキリと覚えております。そう考えるとつまりですな――」


 犬がそこまで言って、流石の馬鹿も判ったみたいだね。顔を伏せて、そんな、そんな、と繰り返してるよ。


「でもなんで、なんでアキバ兄がそんな――」


「それはタイトウって奴とグルになって、あの神宝ってのを手に入れたかったからだろ?」


「ですな。実際エロイーヨに聞く限り、七彩の神玉は既に【ニポリ・シンジュルク・タイトウ】の使いに渡ってしまってるようです」


 犬の説明に更に馬鹿は肩を落としたね。まぁまさか兄弟みたいに慕ってたのに裏切られるとは思わなかったんだろうね。


 スラパイも流石に、貴方……、て肩に手を添えて心配そうにしてるよ。

 

 かなりショックも大きいようだしね、仕方ないからあたしと犬は取り敢えず部屋を後にする事にした。





「しかし弱りましたな。こうなるとやはり、領地の事が気掛かりです」


 外に出て歩きながら犬が言ってくる。

 まぁ確かにそうなんだろうけど、弱ったことにね。


「でも、戻ろうにも脚が無いしねぇ」


 一応城の中を探して(犬とオークが)みたけど、ダークエルフは馬車とか持ってはいなかったんだよねぇ。

 まぁ、つっても、馬車があったからってこの状況で簡単に戻れるか? て問題もあんだけどね。


 それにしても捕まってた女達に馬鹿の領地に来いなんて言っては見たけど、そもそも領地に戻れないなんてね、参ったねこりゃ。


「まぁ暫くはここを拠点って感じにしてもいいっちゃいいかなぁ……結構過ごしやすそうだし」


 なんとなくそんな事を言ってみる。


「しかしマリヤ様。ここは本来タイトウの治める領内でもあります。この森内はダークエルフに任せられてるとも聞きますし、あの神宝も渡してる以上、暫くは大丈夫かとは思いますが――」


 いずれはタイトウとかの手下とか兵とかが来るかもしんないって事かね。

 まぁその時はその時だよねぇ。


「しかし、出来ればやはり一度領地に戻っておきたいとこですな。ロリン様とクラウン様の事も――」

「マリヤ!」


 うん? あたしと犬がそんな事話してたら、デカマラが随分慌てた様子で駆け寄ってきたね。

 ドスドスって揺れが激しいよ。


「何? 何かあった?」


 目の前までやってきたデカマラにそう尋ねる。鼻息まで荒くしてなんだろうね一体。


「う、うむ、実はだな。マリヤに合わせてくれというものが来ておるのだ――」

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