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76話

 薬はエロババァの言うとおり、隠し階段降りた先が小部屋になっていて、そこの棚に数おおく並んでいた。

 オークを操っていたダークエルフが秘術だなんだと言ってた材料の薬っぽいのもあったな。

 

 そんで他にも蛇みたいのが入ったビンとか色々並んでたけど、目当ての物は特徴も聞いてたしすぐわかった。


 その薬を犬やオークに持たせて、部屋へと戻る。


 で、スラパイとメイド長に飲ます。食事もそのままじゃ食べないぐらいなのに飲めんのかなとか思ったけど心配なかった。


 見た目に白くてドロッとしたその液体はアレにも似てるし、匂いが彼女たちの感心を引いたようでね。

 わりとあっさり口にしてくれたよ。


 だけどね、そしたら突然身悶えだして、喘ぎ声まで出し始めたよ。

 

「あ、あぁあああ、しゅごい! 熱い! 身体がぁああぁああ、あちゅい~~~~!」


「ら、らめ、らめ、ふぁああぁあ~~~~ん! らめぇえぇええ!」


 ……おいおい。これもしかして治すほうじゃなくて媚薬かなんかじゃないのかい?

 とか思っちゃったりしたんだけど――


「はぁ……はぁ。あ、あら? ま、マリヤ様? 私ったらどうして……」


「う、ん、……? そういえば私達たしかオークに……そしてそれから――」


 ……ふぅ。全く紛らわしい薬だよねぇっと。まぁとにかく正気には戻ったわけだねっと。





「とにかく、アリスもメイド長も元に戻ってよかったよ……」


 馬鹿が安心したように言う。でも瞳にはまだ憂いの色が見えるねぇ。


「それにしても私達がそのような目に……マリヤ様の助けにと思って来ましたのに情けない限りですわ……」


「な、何を言ってるんだアリス! 悪いのはあのダークエルフ達だ! 大体そのような目にあ、いや、そのなんだ」


 馬鹿がちらっとデカマラの方をみたね。


「……我らは責められて当然の立場だ――何を言われても仕方ないと思っておる」


 そう言って頭を下げる。二人には正気を取り戻してすぐ申し訳無さそうに謝ってはいるけど、まぁやっぱ気にすんのかね。


「私もメイドとして情けないですわ……少しですが記憶がありますが……マリヤ様の前であのような形でアヘ顔さらすなど……マリヤ様との情事でならともかく――」


 メイド長は言い方がストレートだなおい。


「あたしだって、結局捕まってこいつらともヤラされたしな。お互い様ってとこだ」


 まぁ一応は気を使って笑って言う。


「ですが結果的にその、マリヤ様が股を開いた結果、我々は助かったわけですがな」


「本当に素晴らしいですわマリヤ様!」


「マリヤ様が股を開いたら向かうところ敵なしですわね! メイドとして誇らしく思います!」


 うん。改めて思うけど、こいつらの感性は絶対におかしい。


「いや、しかし。確かに助かったと言えなくはないが……」


 馬鹿がどこか微妙な顔つきで、二人のお腹を見た。


「その、そっちの問題は残ってるわけなのだがな」


 あぁ。まぁそっちはそうなんだろうけどねぇ。て、二人も妙に真面目な顔になったね。


「マ、マリヤ様はどう思われますか?」

 

 うん?


「そうですわ。マリヤ様のご意見を私も聞きたいですの!」


 二人共まゆを寄せて真剣な顔つきだね。う~ん、じゃあっと。


「……あんな目にあった二人にこんな事いうのは酷かもしれないけど……先に言ったようにあたしが子供を産めない身体だからね――」


 そう言ってあたしは一度顔を逸らして、だから、と若干の重みを声音に加えて。


「どんな形であれ、生まれてくる命は……大切にしてほしいと思うの――」


 溜まった涙を拭いながら二人に告げる。


「……マリヤ様――判りましたわ! 私産みます!」


「私も初めての子供ですが……産みます!」


 二人共本当にチョロインだったよ。


「う、産むと!? ほ、本気なのかい!」


 馬鹿が慌てだしたね。いいから覚悟きめろよ全く。


「……その、このような事をいったからと気休めにもならないかもしれぬが、産まれてくる子供は我らオークが責任をもって育てる。元々我らはそういった種族だ。だから、産んで頂けるというなら、いや、このような事いえる義理ではないな……」


 デカマラが顔伏せたけどね。


「大丈夫だって。二人が産むって決めたんだ。あたしが愛したメルセルクなら受け入れるに決まってるさ」


「え?」


「そうですわね。まさか貴方はオークの子を産んだからと掌を返すような真似はしませんわよね? 私信じてますので」


「え?」


「旦那様は私が一度は愛した御方。まさかオークの子を産むからと軽蔑されたりはしないと信じておりますわ」


「え?」


「いやいや。この私が主として忠誠をお誓いした程の御方です。そのような事を気にされるような器の小さな方であるはずがない」


「え?」


「むぅ流石マリヤの愛した男だ。その度量! 尊敬に値するぞ! オークを代表して心から御礼を――」


「え? あ、いや……」


 まぁそんなわけであたしも含めて、皆の視線が馬鹿に注がれてるわけだけどね。


「……も! 勿論ではないか! そうだな! 産まれてくる命は大事にせねば! 私は二人を応援するぞ!」


 はいチョロインっと。





◇◆◇


「しかしマリヤがそこまで我らの一族の事を考えてくれるとは……やはりお主は我らの女神だ」


 改めてデカマラがそんな事を言ってきた。他のオークも含め一生の忠誠を誓うともね。

 まぁそれならそれでありがたいね。


 力仕事とかも役立ちそうだし、活用法は色々多そうだしねぇ。今は数は全部で五十体ぐらいだけど、子供が産まれれば更に手は増えてくだろうし。


 で、今はあたしたちより前から捕らえられていた女達の部屋に向かってる。

 なんか厄介な事がおきたとかオークから連絡を受けたんだけどね。


「しかしマリヤ様は流石ですな。奥様もメイド長もマリヤ様のお言葉で産む決意を固めましたし」


 犬がそうやって称えてくるけどね。まぁちょっと涙見せて落ちてくれるなら安いものだよねぇ~。

 この世界で堕ろすってあんのかしんないけど、折角出来たのに勿体無いしね。


 まぁとりあえずっと、その問題の部屋に入ってはみたけどねぇ。


「殺して! 今すぐ私達を殺してぇええぇええ!」


 ……いきなりヘビーだなおい。


「これは一体どうしたと言うのだ?」


 デカマラがオロオロしてるオーク達に聞く。


「そ、それがですが、あの薬を飲ませて正気になった瞬間暴れだして殺してくれって効かなくて――」


 うむぅ、てデカマラが腕を組む。


 てか殺してくれって何いってんだかね。


「……わたし達、こんな、こんな――」


 見たところ一番右端の女が特に激しいね。セミロングの茶髪で、結構きっつい眼はしてっけど、その両目からなんかボロボロ涙までながしてるし。

 他は……ここはダークエルフの兵が休んでたと思う四人部屋で、別の三人は不安な顔して抱き合ったりもしてるね。


 ……て、よく考えたら当たり前か。こいつらはオークの言語わからないわけだし、気がついたら、すぐ側にオークの顔があったら怖いわな。


「なぁ犬。ちょっと説明してやってくんない?」


「説明……あ、そうですな! 判りました」


 そう言って犬が説明を始める。で、それで納得してくれっかなと思ったら。


「そんな話聞いたところで関係がない! いいから私達をさっさと殺せ! もうこんな身体で生きていたってしかたない!」


 意志は変わらずってかい。相変わらず他の三人も抱き合ったままだしね。

 てか、なんだこの死にたがりは?


「私達は、こんな、こんなオークの子などを孕んでしまったのだ……もうまともな人生など期待は出来ない! だから、さっさと殺せ! さぁ! 一思いに!」


 ……デカマラがまた妙に悲しい顔してんな。


「つまりあんたらはアレかい? オークの子供を孕んだから、それが嫌で殺してくれって騒いでんのかい?」


 うん? キッ! て茶髪が睨んできたね。はん、小生意気だね全く。


「……アホらし。だったら勝手に死ねばいいじゃん?」


「ちょ!? マリヤ様流石にそれは――」


 犬が慌てた感じで言ってくるけどねぇ。


「だけどね。殺してくれってのは無視が良すぎじゃないのかい? どうしても死にたいってならね、自分の手で勝手に死にな!」


 あたしがそう言ってやると、な!? て絶句したみたいになって。


「だ、だったら死んでやるわよ!」


 叫んでベロ出したね。舌噛みきるってかい? そんなんで簡単に死ねるわけねぇだろ。頭わりぃなコイツ。


「はいはい。どうぞご勝手に。そうやって悲劇のヒロイン気取って死ねて本望なんだろ? 苦しいからって命を捨てて逃げて済まそうなんてお気楽な人生だね全く」


 あたしは両手をヤレヤレと上げて、ため息をついてみせる。


「あんたに何が判るのよ!」


 全く煩いったらないね。耳がキーンってなるよ。


「オークなんかの子を宿した女はね! もう居場所がないのよ! このまま返してもらったってロクな人生が待ってないの! だったらもう死ぬしかないじゃない!」


 ……茶髪の叫びに、皆してシクシク泣き始めたね。全くうぜぇな。


「……確かに、場所によってはそういった異種の子を孕んだものは、不浄のものとして始末される事さえあると聞きますが……」


 可哀想な物を見るような眼を向けて、犬が言う。


「そうよ……場合によっては処刑される事も……どう? これでも逃げだって言うの! どっちにしたって絶望しか残ってない私達が!」


 逃げは逃げだろ。たく、てかそんな理由かよ。だったら。


「……あたしの世話になってる領主はさ。自分の妻も屋敷で仕えていたメイド長も、あんたらと同じようにオークの子を孕んじまったんだよ。今別の部屋にいんだけどな」


 え? てキャンキャン煩い茶髪と身を寄せ合ってる三人の目が丸くなる。


「でもな。そいつは二人とも受け入れるって言ってんだよ。子を産むのも認めるってな」


「……受け入れる? そして認める?」


 信じられないって顔で、茶髪があたしの言葉を復唱する。


「……だからさ、その男ならあんたらのことだって受け入れてくれるさね。これでどう? 少なくとも居場所がないって心配はなくなったろ?」


 あたしがそう言ったら、茶髪が目をパチクリさせて、他の三人も、え? え? て互いに顔を見合わせてるね。


「それは……でも、だからって赤の他人の私達なんて――」


「大丈夫だよ。あいつはそんなの気にする玉じゃないし、オークとどうこうあろうが笑顔で迎えてくれるさ」


 後ろから犬が、勝手にそんな約束して大丈夫でしょうか? とかヒソヒソ声で言ってきたけどね。まぁ大丈夫だろって。


「あ、でも、でも――」


 ……迷ってるように見えっけど、茶髪の顔が少し明るくなってんよ。


「そ、それじゃあ……」


 うん?


「私はオークの子供を宿しても、攻められる事はないのですか?」


 ……なんか身を寄せ合ってた三人の一人が唐突に質問してきたね。赤髪でおさげの女だ。可愛らしいけどちょっと地味な雰囲気があるね。


「あぁ。誰も攻めやしないよ」


「あぁ、それなら……それなら、オークと、オークと一緒になる事も――」


 うん? 一緒? てか、なんだ? 急に外からドタドタとやかましい音が近づいてきて、バン! て勢い良くドアが開いて、ってだから煩い――。


「ジョゼフィーヌゥ!」

「ブヒリュックス!?」


 ……え? いやオークがなんか人語で名前を呼んで、さっきのおさげが反応してそのオークを見つめて……。


「ジョゼフィーヌゥゥウウゥウ!」

「ブヒリュックス~~~~~~~~!」


 で、お互い掛け合って、部屋の中心でヒシッ! て抱き合って……え? 何コレ?

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