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73話

「え~い! 首輪がなくなった程度で調子に乗りおって! お前たち! ダークエルフの実力をみせてやるのだ!」


 エロババァがそう叫ぶと、前に並び始めたダークエルフが一斉に何かを呟き始めたね。

 詠唱って奴かよ!


「むぅ! 小癪な! 首輪さえ取れてしまえば、恐れぬものなどないわ!」


 そう言ってデカマラが大きく息を吸い込んで――


「グゥォオォオオオォオォオオォオオ!」


 て! デケェ! 思わず耳を塞いじゃうような咆哮だよ! そういうのやるなら先に言っとけって!


 あ、でも、キャァ~、って悲鳴あげて、詠唱が途切れたね! やるねデカマラ!


「う、う~ん」


「あ、首領ドン今のはもしかして首領の咆哮ですかい!」


「てか、俺達一体……」


 おっと。他のオークも起きだして次々しゃべりだしたね。オーク語で。


「おお! お前たち正気に戻ったか!」


 なんだかデカマラも嬉しそうだねぇ。てか。


「なんだあんた、やっぱこいつらのボスだったんじゃないかい」


「うん? いやそれは小奴らが勝手に言ってるだけで……ってマリヤ! 我らの言葉が判るのか!?」


 あぁ、そこ驚くんだやっぱ。


「女、女王! オーク共が起きだしって何かを話し始めてます!」


「ぐ、ぐぅ、何だというのだ一体!」


 あ、ダークエルフにはオークの言語は通じてないみたいだね。


 まぁいっか。とりあえず詠唱始める前に、あ、でも――


「何? いや勿論マリヤの願いとあれば、そうするが――」

 

 あたしが耳打ちして囁くと、まぁ若干不満そうではあるけどね。


「その方があんたらの為にもなるからさ。だから頼んだよ! それじゃあ、とりあえずあたしは先に行くよ!」


 デカマラにそう告げて、あたしはダークエルフに向かって飛び出した。

 その直後に詠唱を始めようとしてきたけど、一気に跳躍!


 うほぉおお! すげぇ跳躍力! きっもちいぃいいいぃいい!


「な! あのワーウルフが飛んで――」


「ヒッ! もうここまで!」


 はいはいやってきたよ~ん。そんじゃまとめて、バーーーーン!


「キャァアアァアア!」


 おっと! すげぇすげぇ。あたしがちょっと右腕振っただけで、ダークエルフ数人が軽々と飛んで行ったよ。

 で、床に落下と。


 よっし! これならいける!


「首、首領! あの女は一体?」


「……ふむ、そうだな、あれは言うならば我らを助けし戦女神よ! さぁ我らも女神の後に続け! 今こそ反撃の狼煙を上げるのだ!」


 う~ん、オーク達も盛り上がってきたみたいだねぇ!


「そ、そんな、妾の兵達が……こんな!」


「だ、駄目です! 女王これ以上ここに留まっていては危険です! 早く避難を!」


「クッ! クソ! クソ! メス豚風情がぁあああぁあ!」


 随分と汚い言葉使い始めたねぇ。て、あ、逃げ始めやがった! 逃すかよ! 


「女王! 早く上へ!」

「ここは私達が!」


 あ、何だよ。増援がやってきやがった。全く仕方無いねぇ。


「く! くるな!」

「き、汚らしい豚が! って、ギャン!」


 お? オーク達が馬鹿と犬の方にいたダークエルフをやっつけてくれたみたいだね。

 で、二人を柱から解いてくれているよ。


「え? なぜオークが私達を?」


「これはまた一体?」


 二人共戸惑っているねぇ。


「おい! オーク達はもうあたし達の仲間! いいからあんた達も自由になったなら協力して!」


 二人共顔を見合わせて、判ったと行ってとりあえずこっちに向かって駆けつけたよ。


「マリヤよ! 奴等の魔法には気をつけろ!」


 わ~たよ! て、ふぁっと! なんだい稲妻が飛んできたよ。こいつら、そもそも使う魔法がソレなのな!


「唸れ雷の鉾よ!」


 あ、こっちも! な、槍みたいになった電撃の塊が、一斉に――


「フン!」


 デカマラ! あたしの前に出て壁になってくれたよ。てかまともに全弾喰らってっけど――


「な! き、効いてない!」


「ふむ。この程度なら丁度いいマッサージ代わりよ!」


 流石規格外!


「え~い! 雷がダメなら風魔法で斬り裂くのだ!」


 ダークエルフがそう叫んだら、むぅ、て顔色が変わったね。どうやら風魔法というのは好ましくないみたいだね。


 でも!


「我らが下へ集結し風の精霊よ、その――」


「させるかよ!」


 詠唱中のダークエルフの顔面にウルフキーーーーック! まぁ只の飛び蹴りだけどね。


「ふぐぉ!」


 おっと情けない声。


「な! こ、この!」


 あ、剣抜き始めたのもいるね。でもね、こう接近したら――


「オラァ! セイ! デヤァ!」


 あはっ! 腕とか脚とか軽く振ったり蹴ったりしてるだけなのに、すっげぇビニール人形みたいに吹き飛ぶ吹き飛ぶ。


「ほれ、お主達の首輪も取れたぞ」


「あ、こ、これは、助かったありがとう……」


 馬鹿はまだちょっと戸惑ってるみたいだね。


「首輪さえ取れてしまえば! この犬! いますぐ助けに向かいますぞ!」


 え? 犬? てまた馬鹿が驚いてるよ。犬は犬でつい口走っちゃってるし。


「ちょ、調子にのるな!」


 おっと! あぶねあぶね。突きとか斬りとか躱しながら、はい、蹴りっと。


「ぐふぇ!」

 

 わ、キッタネ! 吐くなっての。


「チェストオォオオオオ!」


 犬! 流石に早いね! どうやらダークエルフの剣を拾ったみたいで、奴等の剣を次々と払い飛ばしていくよ。


「助太刀いたしますぞ! マリヤ様!」


 ……うん。まぁ頼んだよ裸犬騎士ってね。まぁそれはそうとこいつにも耳打ちしとく。


「な、なんと!」

「出来るだろ?」

「も、勿論マリヤ様の願いとあらば!」


 よっしゃ! ここにいるダークエルフも、もう残り少ないし。さっさと女王を追いかけるよ!





◇◆◇


「お~ほっほっほ! ノコノコやって来おって! 馬鹿が!」


 地下を抜けてメインの通路に出たとこで、エロババァが大勢率いて待ち構えていた。

 後ろの方にいるはずなのに、高飛車な声はよく響くよ。


「むぅ! あの雌。ここでの全面対決を挑む気か! 望むどころよ!」


 デカマラが鼻息荒くして熱くなってんな。まぁ他のオークもだけど。ちなみに全員の首輪はもう外してる。


「ふん! 愚かな家畜共め! この距離があれば、貴様らなど恐れぬに足りぬ! 一斉に放ちし風の刃で切り刻んでくれるわ!」


 う~ん。確かに長い廊下だから、結構距離があるね。しかも前に並んでるダークエルフが一斉に詠唱ってのを始めたよ。


「ふん! そんなもの!」


 お、デカマラが大きく息を吸い始めたね。あの咆哮をやる気かい。詠唱さえ中断させちゃえばあたしの脚で一気に間合いを詰めれるけど――


「その声を封じよ! 沈黙の風!」


 うん? いち早くダークエルフの魔法が、て、デカマラ! 声が出てねぇよ!


「お~ほっほっほ! 頭の足りぬ奴等よ! 同じ手に妾が何の対策も興じずにおるわけがなかろうが」


 あ~あ。勝ち誇ったように高笑いを決めてるね。で、前にいるダークエルフも両腕を合わせて、もう発動しそうだよ! これはやば、くないんだなこれが。


「ウォオオオオォオオン!」


 あたしはダークエルフ達に向かって思いっきり咆哮してやった。案の定、奴等の詠唱が止まって魔法も中断される。


 いやぁ、やっぱあたしにも出来たね。ダークエルフ達もこれは想定外だったみたいだね。

 よっしゃ! それじゃあ!


「ひ! そんな!」


 あたしは左右の柱を蹴りながらジグザグの動きで跳ねるように接近していく。

 なんか気分はアクションスターって感じだねぇ。まじで爽快! 


 で、ダークエルフ達の集まるど真ん中に着地っと。近づいちゃえば、もうこっちのものだからね!


「はい、いっぱ~つ! には~つ! さんぱ~つ!」


 あたしがちょっと暴れただけで、ダークエルフの女どもが、まるで紙くずのように舞い上がっていく。

 こいつら肉体的には軟すぎだねぇ~まぁあたしの力が相当に上がってるってのもあるんだけど。


「うおおぉおお!」


 お? デカマラの声も復活だね。あんまり長いこと効果は続かないのか。てか、いやぁ派手に暴れまわってるね。


「こ、この! この!」

「ふん! 甘い!」


 お、馬鹿もやるね。ダークエルフの突きを躱しながら上手いことカウンターを決めてるよ。


「あ、そんな私の武器が」

「一瞬にして三人の……」

「し、信じられない――」


「フッ。マリヤ様の剣術に比べれば、こんなものは赤子と変わりませんぞ。さぁもう諦めなさい」


 何裸でかっこつけてんだ犬! キメ顔もなんか腹立つよ! 


「犬! 三回まわってワンしろ!」

「えぇ! ここでぇえぇぇええ!」


 とか言いながらも。


「ワン! ワン! ワン!」


 ちゃんとやるんだなこれが。しかもしっかり攻撃してダークエルフを打ちのめしてるよ。三回まわってワン斬りってとこだねぇ。


「アレックス……」


 ……あ、うん、馬鹿が犬を見つめてるね。ま、まぁ馬鹿はなんとなく大丈夫だろう。なんかちょっとガッカリな目をしてる気もしないでもないけど。


「己! なんなのだ! これは! 一体なぜ! なぜ!」


「悔しがってるの悪いけどさあ」


 さぁてっと、漸くここまで来ましたってね。


「散々我々を愚弄し、このような扱いまで……とても看過できるものではないのう」


 お、デカマラもやってきて拳を鳴らしてるね。迫力すげぇな。


「クッ! コレ以上女王に手出しは!」

「絶対にさせん!」


 て、親衛隊みたいのが突っかかってきたけどねぇ。


「はい邪魔っと」

「小童がぁああぁああ!」


 あたしとデカマラがあっさり撃墜っと。おぉ飛んだ飛んだ~。


「さぁ! 覚悟せい!」

 

 あ、なんだよちゃっかり先に出て殴りかかっちゃったよ。


「むぅ!」

 

 て、あら? 見えない壁に遮られて――


「お、愚か者め! その程度の攻撃妾の障壁の前では!」


「でもそれって一方向しか防げないんだよね?」


「むっ、確かにそうではある、て、え?」


 はい、背後がガラ空き~っと。馬鹿だろコイツ?


「きゃ~~!」


 あ! クソ! 躱された! てかゴロゴロ転がって……こいつ、あんな声も出るんだね。


「はぁ、はぁ、妾が、こ、この妾が……」


「いい加減もう諦めたら?」


 仲間はもう全員やられちゃってるしね。


「ふ、ふざけるな! ふざ、くぅ! ならば!」


 うん? 口角吊り上げて――


 シュッ! て何か投げてきたね、ひょいっと、あ、ちと掠ったかな。


「クッ、クハッ! あたったな! あたったなメス豚!」


「……いや掠っただけだし」


「愚か者が! そのナイフにはダークエルフ特性の毒薬が塗ってあるのよ! 掠っただけでも死に至るな! こうなったらせめて貴様だけでも道連れにしてくれる!」


 道連れって諦めてはいるってことかね。まぁいいや。とりあえずっと。


「お~ほっほ! さぁ! 死ぬがよい! 苦しみもが、もが、い、え? な、何故だ! 何故死なぬ!」


「あ、ごめん。多分あたし毒とか効かないわ」


 そう言ったら、な!? て絶句しちゃったよ。


「そ、そんな、なんなのだ、貴様、こんな、人外――」

「誰が人外だコラァアァアァアア!」

「ひゅぎぃいいぃいいいぃ!」


 あたしのアッパーに華麗に吹き飛ぶエロババァ。そのまんま天井にぶつかって――激しく床に落下したね。

 

 ありゃ、やり過ぎたか? あぁでもピクピクとは動いてるね。しぶといこって。

 まぁ何はともあれ、これでここは制圧! なんてねっと――

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