67話
目の前の女王というのは、ダークエルフという連中の長だって話だった。
なんだか判んない間に連れてこられた、森のなかで暮らしてるらしいねぇ。
全く、だったら大人しく森で走り回って、キャッキャウフフ、でもしとけってんだ。
「ここがどこで、貴方が誰かは判ったわ。それで、あたしを裸に剥いて、こんなところまで連れてきて、目的は何? それにあたしの仲間も一緒にいた筈だけど、どうした?」
とりあえず残りの質問もあたしは女王とやらにぶつけてみる。
そしたら一瞬目を細めて、その肉感的な唇を開いてくる。
「おやおや。家畜が少し話す自由を与えてやったら、またえろぉ生意気な事よのう。妾がわざわざお主のよな小汚いメス豚に応えてやっておるのだ。一つ応える毎に地べたに頭を擦り付けて有りがたがるのが筋というものだろうに――」
で、指を、くそ! こいつまた――
「ふふっ、お~ほっほっほ! 妾が少しフリを見せただけで肩を震わせおって……惨めやのう、無様やのう、フフッ、その哀れな姿に免じて、質問には応えてやるぞ。それにその質問の一つは、どちらにしても妾から問う必要があったからのう」
クッ、このエロババァ……あたしも人のこと言えないけど、こいつの性格も大概だねぇ。
てか、一つは問う?
「先ずはそうやのう。お主と同類の家畜たちの命は無事であるぞ。安心するがよい」
「……そうかい」
あたしが短く返すと、このエロババァの目尻が意味深に下がったね――
「だがのう。家畜たちがこれからどうなるか? それはお主しだい。ここに連れて来た目的と言うたのう? まさしくソレが関係する事……既に他の家畜共には話を聞いておるが、家畜の分際で中々口がかとうてのう。残ったのはお主ひとりよ」
人を四つん這いにさせておきながら、連々と長文並べやがって……でも、あたし次第でって一体何があるってんだい。
「さて、それでは問うとしようぞ。お主、アレの場所はどこか知っておるか? 知っておるなら素直に話してみせよ。痛い目に遭いたくなかったらのう」
……アレ? 何言ってんだこいつ? そんなんで判るわけねぇだ――
パチンッ――
あ"ぐぎぃあぎひぎぃいいいあいいいぃいひいいいいぃいいいっぐうううぅうううう!」
「ガハッ! ゲホッ、ゲホッ……」
「妾が質問をしとるのに、ダンマリを決め込むとはいい度胸をしておるのう」
「ふ、ざ、けん、な。ちょっと、考えて、い、た、だ――」
パチン――
「あ"ぐひぃいいいいぃいいやぁあぁああぁあヴぐヴぎひぎやぎぃいいい!」
「家畜の分際で口答えをするでない。妾の質問には迅速に答えよ。考える暇など与えぬぞ。さぁ、答えよ、お主はアレを知っておるか?」
「だ、から、アレって、何のこ――」
パチン――
で、ぐっひいいぎゅうううぅううううごおぉおおおぎいぃいいいいぁあ"あ"あ"あ"あ"!
「お~ほっほ! 言い様やのう。肉の焼けたようないい匂いじゃ。……言うておくが、お主が素直になるまではコレを繰り返すからのう。それが嫌ならとっとと話す事よのう」
こ、こいつ、この! イカレエロババァが! 訳のわかんねぇ質問ぶつけてきて勝手なことを!
パチン――
ヒッ! あ、ぎ、ぐぅううううあぎいいぃいい!
◇◆◇
「全く随分と強情な家畜よのう」
ゲホッ、ゲホッ! ち、ぎ、じょう……いっだい、どでだげ、電撃、浴びせ――畜生、がらだ、じゅう、しびでまぐっで――
「ふふっ。目から鼻から口から、汚らしい液が迸っておるぞ。中々いい顔になってきたではないかえ」
勝手な、ことばっか、いいやが、って。
「王女。この家畜。そろそろ限界かと」
なんか、周りの、奴、の、一人が、言って、ちぐ、じょ、たじかに、いじぎが、もうろ――
ハッ! てなんだ、身体がまた軽くなって。
て、目の前にあのクソエロババァと、周りにダークエルフ? それが手をあたしに向けて……。
「女王陛下。回復処理完了いたしました」
「ご苦労よのう。下がってよいぞ」
ハッ! と頭を下げて全員去っていったね……てこれは?
「どうかのう? 随分と楽になったであろう。妾に使える者には回復魔法の使い手もおる。死なれてしまっては元も子もないでのう」
……そういう事かよ。それで回復魔法ってか。いい趣味してるぜ。
「さて、それでは尋問を再開しようかのう」
こいつ、普通に尋問とか言ってやがるけど、こんなの拷問じゃねぇか。て、また指――
「プッ、ククッ、いい! 良いのう、その恐怖に引きつった表情! 全く低俗な人間を家畜に落とした時の楽しみは、コレとアレに限る。全く無様よのう、惨めよのう」
……楽しそうに笑いやがって、こいつは間違いなくドSだな。エロババァが……。
「さて、どうかのう? そろそろ素直に話す気になったかえ?」
「ザケンな! さっきからアレアレって、そんなんで何かわかるわけねぇだろうが! 人に物聞くならもっとわかりやすくいえ!」
あたしは一気にまくし立てた。かなり苛ついてるのが自分でも判る。全くこんな格好させられて、拷問まがいの事まで喰らって、冗談じゃねぇってんだ!
「判らない?」
て、こいつ目をキョトンとさせて……そして広げた右手の甲を口に付けて。
「お~ほっほっほ! 確かにそうやのう。それはそうかえ。アレじゃあ確かに判らないかも知れぬのう。これは愉快じゃ。お~ほっほっほ!」
クッ! このイカレエロババァ! さてはワザと……。
「ふむ。ならばのう。改めて問おうぞ。お主は……七色の光を放つ【七彩の神玉】というのを知っておるかのう?」
……七色の――て、まさか! そうか、そういう事なのね……それであたし達を――
「……その顔。どうやら知っておるようやのう」
!? チッ、気取られたかい――顔に出てしまった? いやハッタリって可能性だって――
眼が、怖いね。さっきまでのネズミを弄ぶようなのと違って、今にも飲み込んできそうな、蛇の眼をしてるよ。
多分ここでしらばっくれても容赦なく電撃を浴びせてくるだろうね。
だったら――
「あぁ知ってるよ。だったらどうする?」
「ほう。素直なのは感心やのう。それならばすぐにでも吐き出すがよい。もう痛い目は見たくないであろう?」
目つきが変わって、また余裕の笑みを浮かべ始めたね。チッ、本当にムカつくエロババァだ。でもね――
「だったら先ず、この首輪外してくんねぇかな?」
エロババァの細い眉がピクリと動いたね。
「あんたら、あの神宝ってのが欲しいんだろ? わざわざここまでするぐらいだ。喉から手が出るって程なんだろうさ。だったらもうあたしに下手な事はしない方がいいねぇ。アレはあたしでなきゃ取り出せないところにあるし、もし死んでしまったりしたら、二度と手に入らないよ」
そう……相手の欲してる物がわかれば、それを盾に話を進めるだけだ。
エロババァも……黙ってこっちを見据えてるねぇ。
みる限り、やっぱあたしが隠し持ってるコレが相当ほしそうだ。
「そうだね。ついでにこれまでの非礼もお詫びしてもらおうかな。地に四つ足つけて、ブヒブヒってね」
言いながらあたしは立ち上がる。何も、してこない! よし! いける!
「さぁ、どうしたのかなぁ? そんなところで偉そうに座ってないで。宝が欲しいならそれ相応の、ねぇ?」
ここまで言って、エロババァ漸く立ち上がった。よし……。
「妾も、随分と足元を見られたものよのう――」
……こいつ、また蛇みたいな眼で――でも! ここまで来て引けないよね!
「足元? 何を言ってるのかなぁ。これは取引だよ。あたしから情報を得る代わりに、首輪を外して、非礼も詫びろといってるんだ」
ジッと絡みつくような瞳で見てくるけど……あたしも負けずに、眼を、そらすな――
「フフッ、成る程、中々いい度胸をしておるのう」
「それはどうも」
「フフッ」
「あはっ……」
「クッ、ほほっ、お~ほっほっほっほっほっほ!」
「あ~はっはっはっはっはっはあ!」
パチン――
「は……ぎぃいいいひいいいぐうういいいぃいいぎいいひいいぃいいがぁっはぁ!」
きょ、きょいつ、みゃ、た、りぇん、げ、き――
「全く家畜の分際でご主人様に取引など、とんだメス豚やのう。身の程知らずもいいとこであるぞ」
「グッ、て、てめぇ、宝の場所、知りたいんじゃ……」
「随分と妾もコケにされたものよのう。そんな物、取引などしなくても幾らでも手はあるというのに。全く愚かなメス豚よ」
手だって? くそ、また電撃か――
パチン――
あひぃいいいぃいいいいぎいいい!
「ふふっ。そう、家畜はそう鳴くべきであろう。あぁそれと、安心せい、殺したりはせんぞ。妾はそうやって苦しみ藻掻く姿をみるのも好きでのう。電撃もそう簡単に死ぬものではないわ。勿論危なくなったなら回復もさせてやるぞえ」
ぐひぃ、ひぃ、顔歪めて、人の苦しむ姿みて、楽しんでやがんなこ、いつ。
「ふむ。とは言え電撃も少々あきたのう。お前たち、次の準備は出来ておるかえ?」
「はい!」
な、なんだ? またダークエルフが返事して、周りに集まりだして……何をする気だい?
「ほら! 口を開けろ!」
こ、こいつらあたしの顎掴んで。じょ、冗談じゃないよ。何をされるかも判らないのに口なんて……。
パチン――
あひぃいいいいぎぅいいいいいぃ!
「ほら空いたぞ! 突っ込め!」
ズボッ!
「ぐむぅ――うぉ、うんぉうぐぅ」
な、なんだ、喉奥に、鉄の棒みたいの――てか上が開いてて、漏斗みたいな。
「ほら流すぞ!」
「ん、ぐふぉ! うんぐぉ、ご、ごぼ、ごぶぉぅ、ぐふぃお、ぐぼぉ……」
何だこれ……ぐ、ぐるじ、ち、くしょう、い、息が、液が、入って――




