49話
「何もそこまで怒らんでもえぇのにのう……」
神官に咎められて、なんかシュンとしちゃってるよ。大丈夫かこの爺さん?
「あ、あの大司教様。そろそろ本題のほうに――」
と、ここでショタが大司教という名のエロジジィに振って来たね。
「うむ。そうじゃな」
そしてまた目を鋭くさせて……て、もうさっきのですっかり威厳は薄れちゃったけどね。
「コ、コマゴメフ大司教様! そ、それにイメクラ支部長!」
お? ここで二十秒が雁首揃えて前に躍り出てきたね。ずっと近くにいたんだけど、出るタイミングを掴みかねてたって感じだったからね。
「うん? こやつらは?」
「あ、はい。私の部下である聖騎士の三人でございます」
火の玉が応えたね。そういえば二十秒も一応聖騎士か。最近じゃすっかりそんなことも忘れてたね。
「お、お初にお目に掛かりますコマゴメフ大司教様――」
と言ってから二十秒がそれぞれ自己紹介した。名前とか初めて知ったけど、覚える気はさっぱりない。どうでもいいし、二十秒は二十秒だ。
「我ら! イメクラ支部長の言いつけを守り! メイド長の事をしっかり監視し続けておりました! えぇもう完璧なまでに!」
どの口がそれを言う? てか自分からその事を振るなよ。黙っとけば忘れてたかもしれないのに。
「メイド長? はて?」
ほら。エロジジィも疑問符浮かんでんじゃん。馬鹿かあいつら。
「大司教。メイド長とはマリヤ・メルセルクを魔女であると吹聴してまわった……」
火の玉が説明してるね。流石にこいつが忘れてることはないか。
「おお、おお。そうであったな。で、今はどこに?」
「はい! 私どもがご案内申し上げます!」
二十秒がずいぶん張り切って先導しはじめたね。なんでこいつらがって気もしないでもないけど、まぁいっか。
「ところでスリーサイズこっそり教えてくれんかのう?」
歩きながらもエロジジィがそっとあたしの耳元で聞いてきやがった。まぁ減るもんじゃないし。
「上から9――」
「ムホッ! なんとパワフルな!」
耳打ちしてやったら鼻息あらくして興奮してんね。その様子を神官や聖騎士が呆れ顔でみてるよ。全くこれだけ見てるぶんには本当只のエロジジィだねっと。
◇◆◇
とりあえず例の小屋について地下へと降りる。もちろん全員ってわけにもいかないから、あたしと犬に馬鹿とスラパイは当然として、エロジジィ、火の玉、でショタと、まぁそれでも結構いる上に前は二十秒が歩いて行く。
で、奥の牢屋にはついたんだけどね。
ん? メイド長がうつ伏せになって倒れてるんだけど……。
「か、かの者がメイド長でありますが……」
とかいいながら二十秒も戸惑ってる様子だね。なんかピクリとも動かないし、
で、馬鹿も心配になったのか格子の側に寄って。
「メ、メイド長?」
と声を掛けた。
そしたら、お? ピクッと動きだしたね。
「ア"……」
ん?
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ヴァッ、ア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッ――」
何これ! え? 何だよ! 突然へんな呻き声出して、ゆっくりと上半身を起こして、で、また倒れてって……。
「ヴ、ヴァアァアアア"ッア"ッア"ッア"ッ
イグゥィア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッ」
「ヒ、ヒィイイィイイイ!」
馬鹿がめっちゃ怖がってる! てか這う動きはや! シャカシャカシャカってお前どこのサダコだよ!
――ガシャァアアン!
「うぉお!」「キャァア!」「ヒィイィイイ!」
鉄格子を思いっきり叩きつけられてビビってるよ皆! なんかメイド長顔伏せてるけど……それを、ゆっくりと持ち上げてぇ。
「ヴァア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッ
」
「キャァアァアアァ!」
スラパイさっきから絶叫しっぱなしじゃねぇか! どんだけだよ! てか何これ! なんかメイド長もやたら目が充血してるし、顔も痩けて……って、え? なんで? て、あよくみたらメイクじゃね? すげぇなメイド長!
「これは、これは一体どうしたというんですか!」
ショタが叫んだ。確かにどうしたメイド長。
「ア"ッア"ッア"ッびずぅ」
「びずぅ?」
ショタが再度聞き返す。
「びずぅォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"なにもォ"ォ"ォ"
口にぃいぃい、ア"ッア"ア"ッア"ア"ッア"ア"ッア"」
気合い入りすぎだろ。
「ア"ッア"ア"ッア"マ、マリ、マリヤざまア"ッア"ア"ッア"ア"ッア"、ワダジがァ"ワダジがァ"わるガッダレスゥ、もうニドドォ、ニドドォ、デズガラァーーーーーーごのボノダジィイイニィイイ、もうイダイゴロォ、ザぜ……」
二十秒を見ながら、すごい迫力で言葉を続けていくね。で、ちょっと溜めて……
「いだヴぃノワ、イ、ヤ、ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"」
「ひぃいいいぃいいい!」
二十秒。お前たちがビビってどうする。
「こ、これは一体、こんな、こんな! とにかく彼女をこのままにしておくわけにはいかない! とにかく一旦鍵を! 宜しいですな?」
急にショタが仕切るように言い出したね。
で、なんとなく皆の顔を見回して、いいと感じたんだろうね。
「ベンツ! 鍵を!」
「え? あ、あぁ」
馬鹿も戸惑ってるね。そりゃそうか、事情は知ってるはずだからね。
うんで、鍵を受け取るなりショタが牢屋の扉を開けて、メイド長に駆け寄り腰を屈める。
「君! 大丈夫か!?」
「あ、ア"ア"ア"リガドゥごずぁィマズゥウ――」
しかしすごい声だな。一体どこから出してんだ?
「ここまでやるなんて……メイド長、恐ろしい娘――」
いや何言ってんだスラパイ。
「これは一体どういう事だね!」
おっと、更にショタが叫んで、二十秒を睨みつけたよ。で、え? え? と奴らも戸惑ってる様子だ。
「ここの監視をそなた達聖騎士が任されていた以上、きっと誰もここに近づく事さえ出来なかったはずだろう! つまりこの仕打はそなた達の行為によるものという事になる!」
まぁ、色々やらかしてるっちゃ、やらかしてるんだけどね。
「ぞ、ぞのどおりで、ごずぁいまず。わだじは、今日久しぶりに、みなざまにぃい」
むせび泣くようにしながらメイド長が言う。てかどういう設定だよ。
「くっ! いくら幽閉の身とはいえこのような……マリヤ! 君の意見はどうなのかね? 彼女は十分に自分の行いを悔い、改めようとしているように思える! これ以上このような仕打ちは必要ないだろう!」
「……え、えぇまぁ。勿論私としては、出来ればメイド長にも戻ってきて欲しいとは考えております」
なんかとりあえず流れ的にそう答えておく。てかショタ、妙に気合入ってるな。
「聞かれましたか大司教! マリヤもこう申されておりますし、ここは是非ともお慈悲を――」
そう言ってショタが大司教へと眼力を強め、じっと見てんだけど。
「うん? あぁ別にいいんでない? それで」
軽! めっちゃ軽! そんなんでいいのかよ!
「それにのぅ」
うん? なんか言いながらこっちに寄ってきたな。
「わしは彼女の方に特に興味があるからのう」
……て、んな事いいながら、この状況で、あたしのケツをもんで来やがった。しかもかなりガッツリと。
あ、馬鹿も目を丸くさせてんな。
でもまぁ――
「私にでございますか? それはとても光栄に思います」
揉みつづける手を特にどうともせず、あたしは笑顔を振りまいた。
すると、ほぉ、とエロジジィも目を丸くさせあたしの顔を見上げてくる。
「お主中々見込みがあるのう」
「ありがとうございます」
あたしも軽く会釈をして返したけどね。
たく。エロジジィが。いいながらもずっともみまくりじゃねぇか。ま、こんなこたぁこれまでも何度も経験してるし。
いちいち動じたりはしないよってね。
「さて。それではメルセルク卿。実は旅のせいか喉が乾いてしまってのう。お茶の一つでも頂いて宜しいじゃろうか?」
エロジジィの言葉に、は、はい! 勿論です! と馬鹿が返事して。
そして案内のため前を歩く馬鹿に、エロジジィや火の玉が付いて行くんだけど。
「あぁ、そうじゃ」
とエロジジィが振り返って。
「メイド長だったかな。いや、中々いい演技じゃったが、出来れば上では素顔の方をみせてもらいたいものじゃ。中々のべっぴんさんにも思えるしのう」
そう言って、高笑いを決めながら牢を後にしていく。
てか――
「あぁ、さすがは大司教様ですな。やはりバレてましたか」
そう、結局バレてた……て。
「チヨダーク様も気づいてらしたのですか?」
「まぁ何となくだがね」
ショタが笑いながら立ち上がる。するとその横で……メイド長が何か凹んでるね。
「私の演技、駄目でございましたか……」
いや、まぁ頑張ってたとは思うけど……。
「いやいや凄かったと思うよ。大したものだ。ただ――」
ショタの言葉に、ただ? とメイド長も聞き返す。
「少々やり過ぎだったかと」
ニッコリ微笑んでショタが言う。
けど、うん、まぁやっぱそうだよな。正直方向性は間違ってんだろう。
鬼気迫るものはあったけど。
「しかしメイド長の演技はすさまじい迫力でした。もっと自信をもってもいいと思いますぞ。私も少々漏らしてしまったぐらいです」
うん。励ましてるつもりなのかもしれないけど、なにげに凄い事いってんぞお前。
まぁ、そんなわけで、メイド長を一応は励ますようにしながら、あたしもあのエロジジィの下へ向かうことにする。ショタも一緒にくるみたいだね。
まぁここからがどっちかというと本番なのかもしれないけどねっと。




