44話
メイド長もまぁ無事堕ち、屋敷の生活は快適さが戻ってきた。
ぶっちゃけメイド長の仕事はやっぱ完璧だ。改めてみると隙がない。
あたし以外の部屋の掃除する。
料理の下ごしらえする。
洗濯する。
あたしの部屋の掃除する。
発情する。
ヤル。
夕食の支度する。
と、まぁこんなぐあいに、この世界に相応しい言葉かは知らないけど、なんともタイムラインにそった動きをしやがる。ちなみにプレイ時間も狂いなく一緒だ。プレイ方法は変わるけど。
てか、基本掃除とプレイが一緒になるのはなんとかならんのかね。
その方が捗るんですよ、なんて笑顔で言われてもなぁ。
まぁ拒んだ瞬間に、やる気スイッチゼロになっても面倒だから今の所はあわせてやってるけどね。
うん、でもね。
「ちょっとメイド長! 最近マリヤにベタベタしすぎでないこと?」
「あら奥様。そんな事はありませんわ。私はただ業務を全うしているだけで――」
「だったらなんで部屋に入る前に、そのように腕を絡ませる必要があって?」
「コミュニケーションですよ奥様。ただのふれあいじゃないですか~。え? もしかして嫉妬ですか? 女の嫉妬はみっともないですよ」
どうしてこうなった。
ちなみにメイド長は確かに、あたしと部屋に入る直前には、その腕を絡めてくる。
感覚的には、さぁラブホで僕頑張っちゃうぞ! て彼氏とそれに甘える彼女って感じだ。
うん、まぁあたしゃ女だけどね。
で、今の状況はそんな二人を目撃してしまった妻が詰め寄ってきたって感じだ。
うん軽く修羅場だね。まぁあたしは女だからこの例もどうかと思うけど。
「――何が嫉妬よ! 大体マリヤがメイド長なんて本気で相手にするわけないじゃない? ほら、だって、メイド長はもう結構お年ですし」
口に手を当てて余裕の笑みを浮かべるスラパイ。
まぁ確かにメイド長も年でいったらミソジだ。
「あら? でも子供さんをお二人も産んで、すっかりたるんでしまったボディよりは私の方が肌も潤いも上だと思いますけど?」
傍から見てると女同士の争いってこんなに醜いものなんだな。
「キーーーッ!」
あ、キーッ! って本当に言うんだ。いやこんな事思うのもアレだが猿みたいだぞスラパイ……。
「もう許せませんわ! ここは、はっきりさせるしかないですわね! さぁマリヤ! 貴方からもはっきり言って上げてください!」
はぁ?
「そうですわね。マリヤ様の口からどちらのほうが、ベッドを共にするに相応しいか……」
こいつも隠す気ゼロかよ! てか、もう普通にめんどい。
「お二人共」
ニコッと微笑んでそう言ったあと。もう二人を連れて部屋に入った。
「え? マリヤ? これは――」
「マ、マリヤ様そんな、こ、こんな――」
「あぁああぁああぁ! らめぇええぇええ!」
「マリヤ様しゅぎょい、しょぎょいぃいいぃいい!」
はい、メイド長とスラパイの漬け丼一丁上がりっと。
◇◆◇
「というわけで今はもう、アリスもメイド長も上手くやってるってわけ。まぁ二人が険悪になって妙な空気撒き散らすよりはいいよね」
「はぁ……」
犬はなんとも気の抜けた返事だ。
「何? 何か不満でもあるの?」
「いえ、そういうわけではありませんが……ただその事は、できるだけメルセルク様にはばれないようにして頂いたほうが宜しいかもと……」
「うん? なんで? なんかもうメンドイし、ぶっちゃけてもいいかなって感じなんだけど」
「いやいやいやいやいや! 流石にそれは! 御自分の愛された女性が、ついでにメイドともなんて知られたら流石に心が持ちませんょ!」
そんなもんか? てかこの面子だと知らないのなんて、もうあの馬鹿ぐらいなんだけどね。
「でもあたしとアリスの事は知ってるわけだし、今更メイド長との事を知っても大した事ないんじゃない?」
「いや、そんな簡単にすむ話とも……そもそもメイド長との事も『なぁアレックス。私はメイド長に好きだったと告白されたのだが、その直後にもうなんとも思っていないと言われたのだ。これってどういう事なのだろうな?』なんて事を数日にわたって相談されたぐらいですから!」
なが! てかあの馬鹿、あの事そんなに気にしてたのかよ! ナイーブすぎんだろ!
「ですので……」
「あぁはいはい。判ったよ。でもバレるときはバレるからね。その時は知らないよ」
犬は、はぁまぁそうですな、と鼻から息を吐き出す。
たく、こっちもそんな事イチイチ気にしてられないしね。まぁいざとなったら全員まとめて相手すればいいだろうし。
で、さてっと。
「じゃあ、始めるとしようかな」
うん、まぁそんなわけで今はあたしは、犬と、町から少し離れた先にある森に来ている。狩りという名目でね。
目的は勿論狩りにあるってわけじゃなくて、ちょっとした確認。
とりあえず犬に見てもらって適当な的を見つけてもらう。
「あの獣など如何でしょうか?」
犬が指さしたのは、十数メートル程先で草を貪ってる、豚のような獣だ。
というかその色からして見た目はまんま豚なんだけど、やけに身体が丸っこい。
ほんと、ボールみたいだ。
「あれはボールポークと言いまして、肉が柔らかく、脂ものっていて夕食にもピッタリでございます」
まんまじゃねぇか! 全く思わず叫びそうになっちゃったよ。
でもまぁ、確かにどうせならちゃんと利用できるもののほうが無駄にならなくていいだろうしね。
「それじゃあやってみようかな」
言ってあたしがスカートをめくり上げると、こっちを見たボールポークがビクッ! と震えた。
なんだ、獣でも人間の雌の股には驚くのか。
「……マリヤ様。あの、その、お召し物は?」
「うん? あぁ脱いできた。だってイチイチ面倒じゃん」
「…………」
てかアレックスが目を点にして、あたしのお尻を凝視してる。
「たく。そういう時は敢えてみないようにするというのが紳士なんじゃないのかな?」
「と、言われましても、流石にこのような状況は想定しておりませんので」
たく、優秀なんだから仕える主が、もしかしたら今日ノーパンかもしれない、って予想ぐらいしておけよ。いざと言う時のために。
まぁいいや。それじゃあっと。
あたしはとりあえずスカートを捲ったまま、草の上に腰を下ろし、例のごとくM字開脚をして、目標に照準(股)をあわせる。
そして件の吸いとった火球が、中から発射される様子をイメージした。
その瞬間、ちょっとした刺激と共に、膣が広がる。
そしてあの支部長とやらがあたしにお見舞いしてきた火球が、ゴオォオォオ! という激しい音を奏で、正面にいるボールポークに向かって飛んで行った。
てか、我ながら凄いな。これ、まるであたしのココが砲台みたいじゃん。M字砲台って感じ? なんか言ってて恥ずいな……。
で、火球はやっぱ動きは遅くて、ソレにビビったボールポークは明後日の方向に逃げ出すんだけど、そこはそれ、例の誘導って能力のせいか、どこまでも目標を追いかけ、そして速度も段々と上がっていき――ついにはこんがりと焼けた豚の丸焼きが一つ完成した。
「これ、このままでも食えそうじゃない?」
「そうですな、ただ中々のボリュームですし、やはり屋敷に持ち帰った方がいいでしょう」
まぁ確かにね、でも一体どうやって……て、犬がこっちを見てるんだけど――
いや! ムリだろう! これ丸い分結構でかいし! 流石にこんなの……。
スポンッ――
入っちゃたよ。マジかこれ。
「これで今夜の食事は豪勢になりそうですな」
笑顔を浮かべる犬だけど、冷静に考えてみりゃあたしの股に入ってるんだぞコレ? あたしは気にしないけど犬もパネェな。
さてっと、実は問題はこれからでね。
とりあえずあたしは適当なもの……と言っても、もう目ぼしいのはないねぇ。
「あ、そうだ犬、ちょっと逃げて」
「えぇえぇえええぇえ!」
じゃあ行くよ、とあたしは砲台(股)を犬に向けた。
「ちょ! おま! な、冗談でしょう!」
妙な奇声を上げながら犬があたしの股から離れていく。普段は自分から突っ込んでくるくせに。まぁ逃げろっていったのあたしだけど。
「さてっと」
とあたしは再びイメージするんだけど。
「……やっぱり駄目だねぇ」
ふぅ、と息を吐き出し立ち上がる。犬はちょっと離れた木々の影からこちらを覗きこんでいた。なんか情けないぞ。
「お~い。もういいや。やっぱ無理だった」
犬は安堵の表情で戻ってきた。だからまたM字開脚してみたら、ビクッと震えやがる。中々面白いね。
「どうもやっぱ吸い込んだ数の分しか使えないみたいだね」
あたしがそう言うと、犬がひとつ頷き。
「ただそうであっても大したものです。マリヤ様の中に収まってしまえば、詠唱などしなくても魔法の力が行使できるのですからな」
詠唱? あぁそういえばあの支部長ってのもなんかブツブツ言ってたな。あれが詠唱だったのね。
さてっと、とりあえずはこれで一つ確認は終わりっと。で、あとは、う~んまだちょっと時間が早いかなっと、あたしが思いを巡らせていると――
「マリヤ様~~~~!」
「こちらにおられましたか~~~~!」
うん? なんか後ろから聞き覚えのある声が響いてくるね――




