37話
※2014/09/19 修正版と差し替えました
次の日の朝には当然だけどマセコの調子は完全に元通り……まぁというか。
「あ、マリヤ。そのおはようございます」
「おはようアリス」
まぁ、うん、ちょっと呆気にって顔をしてるけどね。うん、まぁ笑顔で挨拶は返しておく。
「おはようマリヤ。それに、か、カグラちゃんもおはよう。……うんまぁ、元気をとりもどしたようで」
……流石の馬鹿にも戸惑いの色は見えるけどね。でもマセコはなんかもう、コロコロした笑顔で挨拶を返す。もう普通に元気は取り戻したって感じだよね。うん元気は。
でもね……腕に抱っこするように身体を寄せてくるのはね。うん、暑苦しいぞマジで。
「おはようございます~。はい~。もうバッチリなのれす~。マリヤおねぇ様~ふふん~のおかげで。もう、元気モリモリれす~」
元気モリモリなのはいいんだけど、所々発音がおかしいぞ、おい。
「え? おね?」
「いや、あの。カグラちゃんが妹みたいに可愛くて。それにお姉さんが欲しかったと言うので、そう呼んでもらうように――」
「なるほど! それでこんなにも明るく! さすがマリヤさ、マリヤですわ!」
「うむ。それならわかるぞ! 確かに本当に仲の良い姉妹みたいだ! さすがマリヤ! やはり君に任せて正解だったな」
なんか二人共手放しで喜んでくれてるけどね。
でもまぁ正直。
ずっと腕に絡みついてスリスリと頬を撫で付けてきてるコレは何とかしてほしいって思いもあるんだけどねぇ。
「はい! 私とマリヤおねぇ様は~ふふ~ん姉妹、いえ、ソレ以上に深く繋がってるのです~。キャハッ! マリヤおねぇさま~ふふ~ん」
うん。とりあえずお前ら全員に思うことだけどね。うん……ちょっとは忍べよ! 包み隠せよ!
そしてマセコ、お前はとりあえずおねぇ様の後で変なハミングを付け加えるな。何を奏でてるんだ、何を。
「マリヤ様……」
チッ! こいつ犬のくせに、やりやがったなコイツ、みたいな目でこっちみてんよ。
予想通りって顔してんよ。
言わんこっちゃないって空気出まくりだよ。
だから違うっつの。
で、食堂言って朝食とるってなったら、マセコがせっせこせっせこ、動きまわって、椅子を引くわ、大きな器に入れられたサラダを取ってくれたりと、色々とやってくれた。
てか大丈夫かこの子? 尽くし体質? この年でそれだとちょっと先が心配になるレベルだな。処女とか奪われたらそれこそ、あなたのために一生尽くします! とかやりそうだ。
まぁあたしが気にするこっちゃないけどね。
「もう出て行ってしまうのね。寂しくなるわん」
朝食を撮り終え、帰りの挨拶をすると、特定の二人に熱い視線を送りながら、オネェ系化け物主人が言う。
「これ。良かったらお昼にでも食べてね。私の、愛がこもった、て・づ・く・り、よん」
オネェな化け物は妙に身体をくねらせながら、弁当を渡してくれた。受け取ったのは犬だけど、握られた手を振りほどくのに苦労してんな。
ちなみに弁当はしっかり人数分用意されてた。化けもんだけど気は効くなおっさん。
「貴方も頑張ってねん。応援するわん」
「はい! ありがとうございます! マリヤおねぇ様~ふふ~ん。応援されちゃいました~」
……何だ? 同士だと思われてるのか? なんかマセコと固い握手まで交わしてるし。性別を超えた友情ってか……でも化け物と同士にされて嬉しいのかマセコよ――
とりあえず馬房から馬車を出して犬が荷物運び。で、準備が整ったところで、馬鹿と犬で改めてギルドに挨拶にいったね。
あたしは、流石に二度も行っても仕方ないから、待ってたけど、戻ってきた二人の話だと、早速朝から冒険者が森に向かったらしい。
まぁそこから先はギルド任せだからね。あたし達は馬車に乗ってその町を後にする。
それからはすっかりペースを取り戻したマセコのお陰か、ユニコーンも快適な走りを見せていた。
勿論、昨晩の行為でも処女は奪ってないからね。舌をちょっと使ったぐらいだし、そんなミスはしませんよっと。
途中太陽が真上に来た頃には馬車を一旦止めて、あのバケモノが手渡してくれた弁当を食べた。メインは定番のサンドイッチだったけど、他にもおかずの入ったバスケットが持たされてたね。
でも馬鹿と犬にだけ、LOVEみたいのを食材で上手く表現してたのには笑えた。
愛されてんなお前ら。
「マリヤおねぇ様~ふふ~ん。これも美味しいですよ~はい」
「あ、ありがとうカグラちゃん。でもそこまで気を使って頂かなくても大丈夫ですよ」
あ~んとかされてもな……つい苦笑いが出そうになんな。
てかスラパイがそもそもこれでもかってぐらいの渋笑いだし。
「しょ、少々仲がよろしすぎるような……」
「ほ! 本当に私、妹ができたみたいで嬉しいですわ!」
て、なんでこんな事あえて言わなきゃいけないんだか……全くこいつもマジで極端なんだよな……。
「あっはっは。いや確かにこうしてみてると、本当の姉妹みたいだな」
馬鹿は鈍感だな。まぁ馬鹿だしな。
まぁそれでお昼も食べ終えて、再び馬車で出発。そのまま走り続けて日が傾く頃に宿場に付いた。
で、ここは本当に宿だけって感じだね。
ただ【フォレストサウスタウン】に向かう人とかが結構立ち寄っていくらしく、宿自体は中々広めの造りだった。
あたしたちがチェックインした時も、まぁまぁ部屋は埋まってたらしい。
食堂は酒場も兼ねてるらしくて、いかにもそうですって感じの冒険者も多くいるね。
まぁと言っても流石にここで絡んでくるのはいなかったけどね。
で、そういった宿だからあの化け物ほどじゃないけど、食事はまぁ食えるレベルだった。
馬鹿なんかは、マセコの調子も戻ったことで、安心したのか軽く酒なんかも飲んでいる。
スラパイも誘われてるけど……。
「夜に支障をきたしますからやめておきます」
こいつは笑顔で何言ってんだ……てか視線がこっちに。あぁもう完全その気だし、馬鹿も、そういわれるとそうだな、て一杯でやめるし。
更に一生懸命あたしに尽くしてくれるマセコは小さな声で、
「今夜もおねぇ様と~ふふ~ん、とかいってるし、犬に関してはどこか、ヤレヤレ、みたいな表情をみせてやがるし。ておい! ざけんな犬!
まぁそういうわけでね。
「マリヤおねぇ様~ふふ~ん」
「マリヤ、そろそろ、あれだ、部屋にだな」
「あ~マリヤ様。今夜はまた、うふ、うふふ~」
と見事にダブルブッキングしてる感じなわけだよコレが。
……めんどい! あぁもう三人纏めてやっちまうかな。……まぁそうもいかないよなやっぱ。
「お二人は部屋でお待ち頂けますか? その、マセ……カグラちゃんはあぁ見えてまだ心のケアは必要だと思いますの。ですので少しお話してまいりますので」
「な、なるほど! さすがマリヤだ! なんと心優しい」
「マリヤ様のお気持ちに私頭が上がりませんわ! それなのに私ときたら自分の快楽のことばかり……」
快楽とかズバッといっちゃうのな。
「それではまた、後ほど……」
頭を下げて、あたしは先ずマセコの部屋に向かう。
「マ、マリヤおねぇしゃまぁあ~今夜は、今夜はいってゃい……」
「えぇ。今夜は108性技の22式と27式、それに6式改を織り交ぜて逝きますわよ」
「しょ、しょんなに……」
「さぁ、それでは……」
時間かけたくないからとっとと終わらせるよ!
「ふぁああ~~ん。お、おねぇしゃまぁああ~~~~~~~~!」
よし! 次!
「おおマリヤ。もう大丈夫なのか?」
「はい。今はぐっすり眠っております」
「そ、そうなのですか。流石ですわね。それでは……」
「はい……お二人を、めくるめく快楽の渦に――」
さぁ、こっちもちょっと本気出して――
「マ、マリヤ! ――フォオオオオオオォオオ~~!」
「あぁマリヤしゃま、マリヤしゃま、今夜は一段とはげ~~~~~~~~!」
よっし! 夫婦丼も合わせて完食!
うん、まぁそんなわけで、ちょっと本気出せばこれぐらい楽勝よね~っと。




