事の真相
このお話の登場人物、団体はフィクションです。
実在の人物、団体には全く関係ありません。
…氷ついた教室で、私は一人何も分からずに戸惑っていた。と、とりあえずこんなときは…
「い、以上です、仲良くしてください。」
スマイル、スマイルだ、それしかない。私は笑顔を顔面に貼り付け、周囲を見回した。微弱ながら拍手が起こる。…もう、良いだろう。黒板に持たれて泣いているお母さんをチラリと見て、「終わりましたよ、先生」と伝えた後、私は自分の席に戻った。やがてはっと我に返ったお母さんは、涙を拭いた後普通に自己紹介を始めた。まだ空気はかなり冷たい。やっぱりこの空気は私が作ってしまったようだ。少し悪いきがするなぁ…。
「ちょっと…、ちょっとアンタ…。」
「何かなトイ・プードルちゃん?……あ、ごめ、ノートの角は勘弁して」
久澄さんが此方を読んだので返答したら、何故ノートで攻撃されてしまった。地味に痛いんだよね。それにしてもこの子、怒った表情も可愛いな。うん、美少女だ。意味もなくニコニコ(ニヤニヤだったかも)して見つめていると、やっぱりまた顔を逸らされた。ううむ、そういう態度はやっぱりグサッとくるなぁ…。
そんな他愛もない事を考えていると、不意に久澄さんから話してきた。この子、実は話好きなのかな?
「全く……それより、ホントなの?」
「…?」
折角話してくれたないようが意図の分からない質問だったでゴザル。意味不明といった表情を汲み取ってくれたのか、質問を変えてくれる。
「本当にあの小説愛好会に入るつもりなのって聞いてるの。」
「うぅん…、入るつもりって言うか…もう入部が決定してるって言うか…。」
「なっ…、ちょ、正気なの?あそこは魔物の巣窟よ?」
「まぁ…止むを得ない事情がありまして…。」
「…?」
苦笑を浮かべて肯定をする私の言葉を聴いて、今度は久澄さんの表情が困惑に変わっている。腕を組んで「う~ん…?」等と言っている表情はたまらなく可愛い。私は久澄さんに朝の全ての事を説明することにした。朝の美人のこと、その人が自治会長だったこと、おかしな質問をされたこと、そして、権限を使って脅されたこと。……部員全員が美人だったこと?ホイホイ釣られたなんて言えません。
一応の事情をかいつまんで説明すると、久澄さんの表情は困惑から呆れたような表情に変わり、そして私に色々教えてくれた。
「はぁ…まず、自治会長にそんな権限はないわよ。一応似た様な事は出来るけど、だからって会長独断で罰なんか与えられないわよ。」
「え?そうだったの!?全然知らなかった…。」
「それに生徒一人がうるさくした位で、その生徒を罰する事なんて出来るわけ無いでしょ。故意に叫んでた訳でも、過度な大音量な訳でも無いんだし。」
「…………。」
くっ…あの自治会長め、無知な新入生に何てことを…。これは一度話し合いの機会が必要だな…。ん?絶対負ける?ハハハ、ナニヲコンキョニソンナ。
「兎に角…今からでも遅くはないから、会長に文句言って辞めさせて貰いなさい。」
「うーん…でも入りたい部活でも無いし…別にやっていけるんじゃないかな?」
「はぁ?アンタあの場所の怖さを知らないの!?」
「ちょ、ちょっとプードルちゃん、声が…」
「だれがプードルよ!?」
「久澄さん?周防さん?何を楽しくおしゃべりしてるのかしら?」
あまりにヒートアップしていく口調に嗜めようとした瞬間に、立ち直ったお母さんから言葉が飛ぶ。…ああ、やっちゃった。
私、久澄さん、絶賛立たされなう。まさか高校生にもなって会話で立たされることになるとは思いませんでした…何というか、教師モードのお母さんには全く敵う気がしない。いつものお母さんなら何とかなるけど、あのお母さんには勝てない。うん、本能が逆らっちゃいけないって言ってるしね。
ふと隣を見ると、一緒に立たされていた久澄さんは仏頂面を変えずに一切動かずに静止している。可愛いんだけど、やっぱり笑っている顔もみたいなぁ…。きっと凄く可愛いんだろうなぁ…。
「…姉が、ね…」
じっと見ていると、いきなり久澄さんが話し出した。私は思考を遮断して相手の次の言葉を待つ。
「小説愛好会に居るの…。自分で進んでね…。三年生なんだけど…優しい人で、自慢の姉さんなんだけど…ホントを言うと、居させたく無いんだ…」
「………。」
まずい、シリアスパートなの…?ほのぼの路線の読み物が、たった三話でシリアスに入っちゃったの?というかそんな負のオーラ出されたら私話せないよ?
「私も誘われてはいるんだけど…姉さんはいいとして、あの会長が……」
…え?あの会長?その会長が何か問題なの?久澄さんの言葉は何かを知っていることが大前提なみたいなんだけど…私はその大前提を知らないから何と返したらいいのか分からない。というかこの言葉だって独り言のようで私に向けての言葉なのか分からない。仕方ない、ここはシリアスを崩さないように…。
「あの…プードルちゃん、小説愛好会って、そんなに怖いところなの?私、全然知らないんだけど…。」
「プードルちゃん言うな。」
くっ…選択肢を間違えたみたいね…ここは賢者らしく『胸を揉む』が正解だったか…?そんな事を考えていると、久澄さんの唇が再度開く。思わず私は聞く体制になってしまう。
「…あの部活は、活動自体はしっかりしてるのよ…。皆と小説の批評をしたり、新聞にコーナーを作って自作の小説を書いたり…。でも、実際は入りたいと思う人なんて居ないわ…。あそこは、会長の城だから…。」
「会長の、城…?」
「そう、表向きの仕事以外、部員の仕事は会長の下の雑用なのよ。自治会の面倒な仕事や、学校行事の進行補助。噂じゃ会長と身体の関係を迫られるなんて話もあるわ。」
うわぉ、それは凄い…何ていうか、要約すると本当に会長の所有物になっちゃう訳だ。それは誰も入りたがらない訳だな…。……ん?身体?
「か、身体って…身体の関係って…」
「……多分、その想像で合ってると思うわ…。」
若干久澄さんの表情が紅くなり、俯いている。なるほど、全て理解した。察しの良い読者諸君なら分かったハズだから、もう何も言うまい。分からない人は作者へメッセージを書けば、教えて貰えるよ!……私は誰に向かって言ってるんだろ?
兎に角これで皆の雰囲気が凍った理由が分かった。まあ、身体の関係を別にしたとしても好き好んで学校の雑用なんかしたくも無いよね…。うん、納得。あ、そういえば…。
「…お姉さん、小説愛好会に居るんだよね?」
「ええ、そうよ?」
「…その話、お姉さんに直接聞いてみたの?」
「……雑用関係は認めたわ、でも自分たちから進んで代わってるんだって言ってた。身体については…微妙な顔で、うやむやにされた…。」
……段々と怖くなってきた。うん、危険信号が真っ赤になってる。私は更に深い話を聞こうと唇を開く。その瞬間、授業終了のチャイムが鳴ってしまう。それでも、私は話しをしようと口を開こうとする。しかしながら話すことはできなかった。教室の扉が開き、お母さんが此方に向かってくる。
「あなた達も入りなさい。終了の挨拶はもう終わってるから。今日はもう解散よ、まっすぐ帰りなさいね?」
「…はい。」
久澄さんと二人で俯きながらお母さんに頭を下げる。合わせたようにハモってしまったけど、まあいいだろう。既に廊下には帰り支度を終え、帰宅しようとしているクラスメートも居た。と、その時学校のスピーカーから、呼び出し用のチャイムが鳴る。
『呼び出しを致します。小説愛好会の部員、並びに、一年Cクラス、久澄明日香さん、周防小百合さん、Dクラス、淡路佐弓さん。至急三階、第二資料室まで来て下さい。』
……………え?
はい、ぐだぐだが続いてすみません…。しかし更新ペースを落としたら怒られそうなのでこのグダグダを続ける所存であります。段々と人物が増えてきましたので、今のグダグダがひと段落したらちゃんとした自己紹介を書きますので、今は雰囲気だけでお楽しみ下さい。
それでは、此処まで読んで頂きありがとうございました。また次回におあいしましょーノシ