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第2話 俺の仲間達

俺は、留置所から拘置所に移動させられている。

つまり、これから裁判を行って、

有罪なら刑務所行ということである。


留置所だろうが、拘置所だろうが暇なのは同じである。

誰も差入してくれる人もいないし。


俺は、毎日、筋肉トレーニングをしている。

筋肉は裏切らない。

筋トレをすると精神エネルギーも強くなる感じなのだ。

目的があると、嫌いなものも好きになってくる。


 「ユウスケ、もっと頑張りなさいよ、

  あと500回くらい楽勝でしょ

  ほら、根性よ、根性。頑張れ。」


エレナが、応援してくれている。

エレナが応援してくれるのには理由がある。

あれから毎日、俺は筋トレや精神集中など修行しているのだが。

俺の精神エネルギーが強くなると、

何故かエレナの精神エネルギーも自動的に大きくなるようなのだ。


 「ほら、休んでないで、次よ、次」


そう、エレナは口だけで強くなれるという、

新しい技をあみだしたのだ。


そのおかげか、頭の中のエレナは暗闇ではなく

今では、明るい空間ではっきりと全身が映し出されている。

許容範囲なスタイルで、大切なところを隠しているだけだが、

見慣れたので、今では、そんな姿を見ても嬉しくもなんともない。


たまに、スカートのような布切れを、めくって

ホレホレと太ももを見せようとするのが腹立つぐらいだ。


俺の修行を応援したいのか邪魔したいのか

わからないのだ。


 「うん。やはり私が見込んだ男ね。

  着実に強くなっている。

  これなら、この拘置所くらい破壊して

  脱出することも可能かもよ」


恐ろしいことをエレナは口走る。


 「お前、漫画の見すぎだろう。

  俺が修行しているあいだ、俺の記憶で漫画ばかり読みやがって。」


俺は、腕立てをしながらエレナに文句を言った。

文句を言ったところで、エレナを止めることは俺には出来ない。


 「勉強しているのよ。漫画はとっても参考になる。

  何となく、今ならビームで壁をぶち抜けそうだし。」


エレナが興奮して言ってくる。

ビーム?

何の漫画を読んだんだ?


しかし、エレナと、もう2ヶ月くらいの付き合いになった。

色々とエレナの星のことも聞いた。

俺のことについては、エレナには話していない。

だって、勝手に俺の記憶を見られてしまうのだから、

話す必要もないのである。


エレナの星は、俺の星と全く違っていた。

精神エネルギーが発達しており、

物質的な科学は、俺の星の方が遥かに進んでいるようだ。


 「私の星では、物質エネルギーは決められた法則でしか存在

  できないもので、

  究極に世の中を解明することは出来ないとされているの。」


エレナが珍しく難しいことを言っていた。

なるほど、この星で言う物理学だな。

確かに、現在、行き詰っていて量子力学を混ぜながら様々な

研究がされている。

ただ、精神エネルギーの世界と量子学は全く違うらしい。


 「この世界は、精神エネルギーが初めに存在して、

  その精神エネルギーによって、

  物理エネルギーが存在したと言われているの。

  まあ、誰も証明できていないけど。」


誰も証明できてはいないのか。

なら、その理論も不確定なわけだ。


 「ただ、この精神エネルギーを進歩させられたから、

  私たちの星では、生き返りや、

  生まれ変わりが当たり前のように出来る人間も一部いるのよ。」


輪廻転生か。エレナが偉そうに説明してくれたのだが・・

脳がないのに、記憶まで・・・・不思議だ。

しかし、実際にエレナは前の記憶をもっている。


 「なるほど、その当たり前を失敗したのがエレナ様ということですね」


エレナが偉そうだったので、俺は少し馬鹿にしてやった。


 「失敗は成功のもとなのよ。

  だから、私は成功したのよ。

  失敗なんてしていない。」


エレナの言っている意味が解らない。

そして、エレナ様は、くじけるということを知らない。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


修行をしながら、検察から取り調べを受けていたのだが、

担当の検察官が女性だったので、少し嬉しかった。


取り調べは、小さな部屋で行なわれる。

俺は手錠がされたままで、まるで罪人扱いのようだ。

机を挟んで、女性検察官と向かい合って座る。


谷間を覗かせるような上着に、ミニスカートという服装の検察官だ。

黒髪のショートカットで眼鏡をかけているが、大人の色気を感じさせる。


こんな状態だが、女性と話せるのは嬉しい。

いや、こんな状態だから女性と話せるのか。


 「あの、私をあまりジロジロ見ないで下さい。

  気持ち悪いです。鳥肌がたちます。

  床だけをずっと見ていてください。」


女性検察官は、はっきりと物事を言うタイプのようだ。

見て欲しいという恰好だからジロジロ見ただけなのに。

だったら、そんな恰好で来なければ良いのに。

しかし、仕方ないので、俺は床を見ることにした。


 「ユウスケ、ツンデレよ。ツンデレ」


エレナが囁くが、ツンデレとは絶対に違う。


 「取り調べによると・・・・・・・・

  内容に誤りは、ありますか?」


女性検察官が、俺に聞いてきた。

あの警察官、本当に俺を政府転覆罪にしやがった。


 「全部、出鱈目です。僕は何もやっていません。

  本当です。

  信じて下さい。」


俺は顔を上げて、

女性検察官の目を見ながら真剣な顔で答えた。

俺は嘘なんてついていない!

俺の嘘をついていない目を見てくれ。

信じてくれ!伝わってくれ!

 

 「床だけを見ていて下さい。私を見ないで下さい」


この女性検察官は、絶対に女王様タイプだ。

俺は、こういうプレイも嫌いではないが少し腹が立った。


俺は床しか見ていない・・・

というかスカートの中しか見ていないのだが、


 「左手が、手が勝手に・・・・?」


女性検察官が不思議そうにしている。

もう少しで見えそうだから、精神エネルギーで

女性検察官の手を使い少しスカートを持ちあげさせた。

女性検察官が自分で俺に、チラッと見せつけている感じが良いのだ。

チラリズムだな。


俺が、何のために修行を頑張っていると思っているんだ。


 「顔をすぐに上げなさい。顔をすぐに。」


先ほどは、床だけ見ていろと言っていたのに。

理不尽な女性検察官だ。


 「見ましたか?」


女性検察官が怒った顔で俺に聞いてくる。


 「何をですか?」


俺はとぼけた返事をした。


 「あなたの好きな色は?」


女性検察官がわけのわからないことを聞いてくる。

尋問と関係があるのであろうか?


 「黒です。」


俺は何気に答えた。


 「有罪。」


女性検察官が言い切った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そして、いよいよ裁判の日になった。

俺は手錠をかけられた状態で裁判所に出廷。


俺の担当弁護士は、小柄なお爺さんだが強いオーラを感じる。

修行をしてきた俺にはわかるのだ。

期待を感じさせる弁護士だ。

俺の隣で「任せなさい」と自信たっぷりの態度に、

俺は安心している。


 「被告、ユウスケは同世代の女性に相手にしてもらえず、

  少女に興味を持ち始めたが、それも無理という人生を歩んできた。

  そのため、現実を逃避しゲームで自己満足をする人生を送っていたが、

  モテないのは、きっと社会が悪いからという思い込みをし、腹いせに、

  交番に嫌がらせをしたということです。」


女性検察官が、裁判官に犯行の動機を簡潔に述べた。

そして、女性検察官は、俺の方を見ると何故か

恥ずかしそうにうつ向いてしまった。


 「ユウスケ、何度聞いても可哀そうな人生ね」


エレナが俺の頭の中で同情してくれる。


 「お前、俺の記憶見て知っているだろう。違うよ。」


俺は頭の中でエレナに反論した。


 「そう?

  記憶と大して違わないけど、

  まあ、違うとすれば交番への嫌がらせくらいよね」


エレナ様、俺の記憶を消してください。。


そして、弁護士の登場だ。

なんとかしてくれ。


 「被告は、同世代や少女だけではありません。

  熟女でも良いという非常に守備範囲の広い男です。

  また、近所の方々によると、

  いつも胸に挨拶してくるということで、

  非常にシャイな性格の人物でもあります。

  そのような人物が交番に嫌がらせをするなんて。

  まして、証拠が途切れ途切れの動画だけ。

  当たり前ですが、無罪を主張します。」


お爺ちゃん弁護士が、

いらないことまで堂々と言ってくれた。

無罪を勝ち取ってくれそうな気迫を感じる。


そう、やっていないものは、やっていないのである。

白を黒には出来ないのだ。

黒は、この女性検察官のパンティーだけで良い。


 「裁判長、動機に関する証拠品を提出します。」


女性検察官が山のような証拠品を裁判官の前にもっていく。

えっ?

やっぱり出すの?

イヤー。やめてそれは。

俺のゲームやビデオ。

裁判官も証拠品のタイトルを見て引いている。


 「被告人、これは、あなたの物で間違いありませんか?」


山積みの証拠品に手をのせ、裁判長が俺に聞いてくる。


 「いや、それは友達が勝手に置いて行ったもの・・・・でなく

  はい。自分のものです。

  すみません。すみません。」


俺は、何故か申し訳ない気分になってしまった。


 「うん。ユウスケ偉いよ

  嘘はついては駄目だからね」


そんなところをエレナに褒められても嬉しくない。


 「いかがでしょうか?

  これでも被告がやっていないといえるでしょうか?

  まあ、書類が燃えた程度で、人的被害もないことから

  テロとは言えず、悪戯程度と考えても良いのですが、

  全く反省もしておらず、非常にスケベなので

  検察としては、懲役1年を求刑します。」


女性検察がニヤリと笑みを浮かべて弁護士に問うてきた。


「 フッ。笑わせますね」


お爺ちゃん弁護士が、かっこよく立ち上がる。

そうだ。

こんなのが証拠になるなら、みんな犯罪者にされてしまうぞ。

かましたれ、俺の最強弁護士!


 「被告人は、精神的に可哀そうな人なのです。

  情状酌量をお願いします」


俺の最強弁護士は深々と頭を下げた。

おーい。

白が黒になっちゃうよ。


 「判決

  被告を懲役6ヶ月の刑と処する」


はい、白は黒になりました。

裁判官も適当だ。こんなので司法は大丈夫なのか?

検察も弁護士も裁判官もみんなグルなんじゃないのか?

 

 「良かったね。

  短くなって。

  あの最強弁護士さんのおかげだね。」


エレナは気軽に言うが、俺は刑務所なんて初めてで不安しかない。

まあ、この程度ならA刑務所だろう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


何故だ?

俺の罪は、いたずら程度の犯罪だよな


 「あのう、何で俺がC刑務所なんでしょうかね?」


俺は、刑務所の刑務官に聞いてみた。


 「俺が知るはずないだろう。

  よっぽど、検察官に恨まれたりするようなこと

  したんじゃないか?」


刑務官がそんな回答をしてくれた。

検察官に恨まれるようなこと?

身に覚えがない。


 「なあエレナ。俺、検察官に何も悪いことしてないよな」


俺は唯一の証人であるエレナに聞いた。


 「そうよね。

  何度も何度も精神エネルギーで

  スカートをめくったり、

  胸のボタン外したり、

  ブラジャーのフック外したり

  ブラジャーの紐を肩からはずしたり

  胸を揉んだりするくらいしか・・。」


エレナが頭の中で答えてくれる。

そう、俺は取り調べの最中も修行していただけだ。


刑務所に入って、

俺は、刑務官に全ての荷物を渡し、囚人服に着替えた。

そのあと、色々刑務所のことについて説明をうけたが、

脱走は無理だということはわかった。


頭頂部分には、健康管理という目的でチップを埋め込まれた。

プシュッと銃型の注射で埋め込むのだが痛みはほとんどない。

しかし、このチップ、健康管理以外にも色々出来るらしく、

遠隔操作で埋め込んだ人間を気絶させることもできるらしい。


つまり、刑務所内で暴れたり、脱走しようとすると

すぐに気絶させられるということだ。

しかも、気絶させられ起きた時には、特級刑務所。

 

刑務官は、特級刑務所のことは知らないようだ。

何故なら特級刑務所は、政府の手を離れ、国際連盟の管轄であり

管理者は、グローバル企業であるらしい。

噂では人体実験がされているとか刑務官が脅かしてくるが、

本当の内情は、警察でもわからないらしい。


俺は、施設の環境を精神エネルギーで確認してみる。

監視カメラが少ないし、刑務官も少ない。

まるで、暴動や脱走を誘導しているかのようだ。


俺が連れていかれた部屋には、3人が寝転がっていた。

部屋には監視カメラや盗聴などはないようである。


 「G53、ここがお前の部屋だ。

  ルームメイトに色々教わっておけ。仲良くしろよ。」


そう、ここでは番号で呼ばれるのだ。


ピピッ


刑務官は、俺が部屋に入るのを確認すると

電子鍵をかけて歩いて行った。


 「よう、新入り。

  お前は、何をしてここに入ったんだ?

  殺しか?テロか?」


角刈りで体格の良い男が、

寝ながら、俺の方に振り向きドスの聞いた声で聞いてきた。


 「いや。交番に落とし物の書類が入った紙袋を届けた罪です」


俺は、正直に答えた。


 「なにっ?」


すると、3人が驚いたように

ガバッと起き上がり俺の元に寄ってきた。

俺を中心に輪になった感じだ。


 「書類ですと?

  どんな書類でした?中身は見ましたか?」


眼鏡をかけた、丁寧な口調のおじさんが

小さな声で俺に聞いてきた。

冤罪とかに反応ではなく、書類というワードに反応したようだ。


 「中身は見てません。1冊のファイルだったことしか。」


俺も小さな声で、当時の状況を説明した。


 「Xファイルかもしれねえな?

  中身を見てたら、お兄ちゃん、この世にいなかったかもな」


何か怖いことを、長身でスラッとした

ジェントルマン風のおじさんが話してくれた。

刑務官や隣の部屋に聞かれることを気にしているのか、

皆、小さな声で話している。


 「Xファイルって何なんですか?」


俺は気になって聞いてみた。


 「見た者は必ずこの世からいなくなるらしいのです。

  そして、その書類は現われてはすぐに、何者かに処分されてしまう。」


眼鏡おじさんが説明をしてくれた。

この世からいなくなる?

俺は大丈夫なのかしら?


 「そういえば、交番のお巡りさんが行方不明とか・・・」


俺は思い出して、皆に話した。


 「おそらく、交番のお巡りは消されたな。

  書類は、その場で燃やしたと・・・

  政府を転覆できるかもしれない資料かもしれねえのに。

  もったいねえ。」


ジェントルマンおじさん、怖くないの?


 「仮に僕が拾ったのが、そのXファイルだったとして

  何で道なんかに落ちてたんだろう?」


俺は、素朴な疑問を口にしていた。


 「俺の仲間に聞いたんだけどよ。

  噂では、わけのわからないところに突然現れるらしいんだ。」


ジェントルマンおじさんが、何か詳しそうだ。

あけのわからないところに突然現れる?


 「でも、見た人は消されちゃうんでしょ。

  だったら、突然現れるとか証言できる人いないでしょ。」


俺は、素朴な疑問をジェントルマンおじさんに聞いてみた。


 「いや、お兄ちゃんだって、中身を見てなくても実際に見たんだろ。

  突然、現われたんじゃなかったのか?」


ジェントルマンおじさんが答えてくれた。

なるほど。

確かに、あの時、コンビニに行くときは無かったものが

帰り道にいきなり紙袋が落ちていた。

突然現れたと言えば、突然現れたのか。


 「確かに、突然現れたと言えば現われたのかもしれません。」


俺は、しばらく考えて、ジェントルマンおじさんに言った。


しかし、なるほど、俺なりに推理してみる。

俺の拾った紙袋の中身の書類が、Xファイルだと仮定すると

中身を読んだ、お巡りさんは消された

Xファイルは交番の中で燃やされて処分された


俺が中身を読んでいないことは、監視カメラで確認済み

だから、俺は消されずにすんだが、

紙袋を燃やした実行犯の身代わりが必要だった。

実行犯は、監視ドローンの画像を編集できる奴等。

つまり、政府関係者?


 「何か、政府とやらの悪を感じるわね。やっつける?」


エレナさんは、何か正義感に目覚めたらしい。


 「それで、お兄ちゃんは、どれくらい此処に、いられるんだい?」


何か、旅館みたいな感じで角刈りおじさんが聞いてきた。


 「拘留もあったので4ヶ月くらいかと」


俺は懲役を答えた。


 「まずいな。お兄ちゃん、気をつけな。

  ここの刑務所は、テロや殺人罪で、ほとんどが無期懲役だ。」


ジェントルマンおじさんが心配してくれる。


 「それは、囚人たちのイジメとかですかね?」


俺は、オドオド聞いてみた。


 「まあ、俺の前ではさせねえが、羨ましがる奴がいるからな」


角刈りおじさん、見た目と違って優しい。

なるほど、イジメか。

しかし、考えようによっては修行になるか?


そして、皆が自己紹介してくれた。


 「俺はゴウゾウだ。

  いきなり、わけのわからねえ奴等に喧嘩を売られてな。

  向こうも刃物やバットなんて持っていたからよ、

  10人みんな病院送りにしちまった。

  正当防衛だって主張したんだが、

  何故か、無期懲役になっちまった。」


角刈りおじさん、怖いです。

というか、ゴウゾウさんも冤罪?

ゴウゾウさんが言っていることが本当だとすればだが。

監視カメラで検証すれば、正当防衛は

わかるだろうに。


 「筋肉がすごいですね。

  何かやってらしたんですか?」


俺はゴウゾウさんに聞いてみた。

筋肉で服がはちきれそうなのだ。

フンッとか力を入れれば、服が破れるのではないか?


 「一応、武道やっていてな。

  これでも、フルダイブVR武道ゲームにデータ協力して

  やったこともあるんだぜ」


ゴウゾウさんが自慢げに教えてくれた。

腕の筋肉がピクピクしてる。


マジか。すごい。

俺も欲しかったけど高いので買えなかった。

武道の実体験ができるらしい。

 

まあ、フルダイブVRなら、あっち方面を先に買うだろう。

相手の女性も本物にしか見えないレベルで、しかも自分の好みに

顔もボディも声も加工できるらしい。

仮想空間か実体験なのかわからないレベルらしく、一般人でも

貯金すれば買えるので少子化の原因とも言われている。


 「僕は、レイマンです。

  こう見えても科学者で、テレポーテーションの開発・研究

  をしていました。

  いきなりデータ没収された上に反逆罪で逮捕されて無期懲役。

  ハハハハハ」


レイマンさん、笑い事ではないです。

俺より可哀そうな冤罪じゃん。

しかし、テレポーテーション?


 「テレポーテーションって本当に出来るんですか?」


俺は興味津々で聞いてみた。


 「理論は出来てます。後は実験装置が出来るかどうかですが」


レイマンさんは簡単に言うが・・・・本当か?

ゴウゾウさんと並ぶと、

痩せているレイマンさんが小さく見えるが、

背筋が伸びていて、言われてみれば

科学者っていう感じに見えてくる。

あと、レイマンさんの眼鏡は、単なるオシャレなのか?

今の世の中、眼鏡をかけている人はほとんどいない。


 「俺は、クオンだ。

  一応、100人程度の反政府活動家リーダーだった。

  色々、理由があってな。

  当然、無期懲役だ。」


クオンさん・・・色々って・・・聞かないでおこう。


 「理由を聞きたくないのか?」


クオンさんが俺に尋ねてきた。

どうやら聞いて欲しいようである。


 「あっ。どんな理由があったんですか?」


俺は仕方なくクオンさんに聞いてみた。


 「まあ。あまり話したくはねえけど。仕方ねえ。

  俺の両親がテロリストだったんだが、小さいころから

  色々と教え込まれてきた。

  学校で教わる授業とは全く違う歴史や社会の仕組みとかな。」


クオンさんは、胡坐をかきながら、両手を組んで語りだす。

なるほど、クオンさんは親に洗脳されたのか。可哀そうに。

 

 「ユウスケ。ここにいる3人は、

  少なくとも学校や報道されていることが

  全て真実ではないと思っているんだ。

  まあ、クオンの話を聞いてやってくれ」


ゴウゾウさんは、俺の表情を見て感じるところがあったのか

クオンさんの話を聞いてくれと頼んできた。


 「そうだな、ユウスケに話をしても信じられねえだろうが。

  戦前はな・・・・・・・・・・・・・・・」


クオンさんは、話したくないと言っていた割には1時間くらい

話をしてくれた。

クオンさんの話をきいていると矛盾がないし面白かった。

しかし、陰謀論や都市伝説みたいな話だ。

 

 「あるあるだね。

  ユウスケ頭が固くなっているよ。

  小さいころから、

  教科書や先生の言うことが正しいと教え込まれるから

  偉い人や頭の良い人が言うと正しく思えてしまう。

  仕方ないところよね。うん。うん。」


頭が柔らかすぎるエレナが偉そうに話してくる。

まあ、エレナの言うことも正しいかもしれない。

いきなりクオンさんの話を信じることが出来ないのは確かだ。

柔軟に考えれば俺が、社会に洗脳されている可能性だって

あるのかもしれない。


 「凄い話ですね。いきなり信じることは出来ませんけど・・・

  俺が社会に洗脳されてきた可能性もあるということですよね。」


俺は、クオンさんに思ったことを話してみた。


 「ハハハハハ。

  ユウスケは柔軟な考えが出来そうですね。

  科学も柔軟な考えがないと、間違ったことが正解だと

  思い込んで、いつまでも解明できません。」


眼鏡を手でクイッとカッコよく動かしてレイマンさんが言った。

眼鏡は、このポーズのためか。


 「フッ。信じるか信じないかはユウスケ次第だ。

  俺は、一人でも多く、この話を出来るのが喜びだし、

  使命だと思っている。

  親と違って、武力とかは使わねえ」


クオンさんは、組んでいた両手をほどき、その両手を膝の上において

胸を張り俺にそう言ってくれた。


しかし、みんなと話が出来て何か打ち解けた感じがした。

目の前で話をするって、信頼関係を築くのに大切なのかもしれない。

そういえば、人と直接こんなに話をしたのは何年ぶりだろう。


この部屋には


筋肉モリモリ格闘家のゴウゾウさん

眼鏡で痩せている科学者のレイマンさん

ジェントルマンでテロリストのクオンさん、

そして俺の4人。

 

なんか凄いメンバーで、俺が小物で浮いている感じだ。。


いや


 「フフフ、どうやって政府をやっつけてやろうかしら・・」


もうひとり、正義感に目覚め過ぎたエレナを加えて5人か。


明日から、辛い毎日が待っている。

しかし、何故か不安が無い。

ゴウゾウさん達と話せたこともあるが

辛いことも修行にして更に強くなれるかもしれない

そんな期待が心の片隅にあるからかもしれない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 「ユウスケ、私、ここ爆発させて木っ端みじんに出来そうなんだけど

  やらせてくれない?」


爆発女が頭の中で騒いでいる。


 「駄目です。エレナさん。無理ですし、やろうともしないで下さい。」


俺は、爆発女を止めた。

何かエレナはやらかしそうで怖いのである。


昨日の夜、ゴウゾウさんのイビキがうるさかったのだが、

突然、静かになった。

ゴウゾウさんの様子を見てみると

エレナによってゴウゾウさんの鼻と口が閉じられていた。

ゴウゾウさんの顔が青ざめていたので、

俺が鼻と口を無理やり開かせて何とか大丈夫だったのだ。

 

 「鼻だけ摘まむつもりだったのよ。

  何故か、口まで閉じさせてしまって。

  ドンマイ。」


エレナには反省という言葉がない。

そんな感じなので、

エレナには能力を使わないように言い聞かせているのだ。


いま、俺がいる場所はゴミの山である。

ここは、昔使われていた太陽光パネルや家電製品、

車両やなんやかんやのゴミの山である。

5メートルくらい高さのあるゴミの山だが、

俺達、囚人10人で担当作業する山らしい。

20人でも、1年以上かかるのではないか。


今日の仕事は、このゴミの分別である。

就労しながら精神エネルギーの修行をしたいのだが。


俺は、まず、段取りを考える

ゴミの山から車両、家電、パネルなどを分別する。

その後、其々分解して、更にゴミを分別する。


問題は監視カメラや周りの人間の目だ。

能力を色々と試したかったが、難しい状況だ。

 

さて、どのくらいできるか、やってみますか。

俺は、監視カメラの位置を把握して山の裏に移動した。

今なら、俺の周りに人もいない。

精神エネルギーで気配がわかるのだ。


精神エネルギーにより車両を山から抜き出して、

空いたスペースに車両だけを並べていく。


それほど苦でもなく、車両一台くらいなら簡単に

持ちあげられるようだが、結構、難しい。

音を立てないよう崩れてくるゴミも制御しながら

目当ての車だけを抜きとるのだ。

将棋の山崩しのゲームみたい。


1分くらいで10台分の車両だけの列が出来た。


 「あれっ?いつのまに?」


刑務官が不思議そうに車両の列を見つめている。

俺は知らんぷりしながら、車両の分解を始めた。

電動ドライバーなどで外していくのだが、面倒くさい

手作業しながらも、ほかの部品を精神エネルギーで外していく

先ほどの精神エネルギーは、パワー系だが、

今回はネジを回すという繊細な技の修行である。


5分くらいで、車両1台のネジがほとんど外れた。

 

他の囚人たちも、こちらに集まってきたので、

あまり目立つことが出来なくなったが、

それでも、他の車両のネジを見つからないように

精神エネルギーで外していく。


パワー系よりも、ネジ回しなどの方が疲れるかもしれない。


 「何か、今日、楽じゃね。既にネジが緩んでいるよ。」


囚人たちの声が聞こえるが、気にしない。


 「おい、新入り、これ向こうまで持っていけ」


囚人の一人が俺に命令してくれた。

車両のドアが、その囚人さんの近くに20枚くらい並んである。

それを持って行けというのである。


 「はい。わかりました。」


俺は丁重に返事をして、車両のドアを積み重ねて両手で持つ。


 「おい、おい、ありえねえだろ・・・」


命令した囚人の驚いた声が後ろから聞こえてくる。

俺は、20枚程度のドアを座布団のように重ねて運んでいる。

400Kgくらいであろうか。

当然、精神エネルギーの助けを借りているが。

周りから見たら異様な光景だろう


 「終わりました。他には何をすればよろしいでしょうか?」


俺は命令した囚人にお伺いを立てた。


 「す、すごいですね。とりあえず、大丈夫です。」


お褒め頂いてしまった。


 「おい新入り、山から家電を全部、あっちのスペースに持っていけ」


またまた、違う囚人の方が命令をしてくれた。ありがたい。

山から家電だけを分別してスペースに持っていけというのだ。


 「ありがとうございます。わかりました。」


俺はお礼を言って作業に入る。

さすがに人前で家電を浮かしたりは出来ないので、片手で家電を

山から引き抜き、掴んでは、言われたスペースにぶん投げる。

テレビだろうが、洗濯乾燥機だろうが、大型冷蔵庫であろうが・・・


 ブンッ


掴んでは、ぶん投げる・・・・


 ブンッ、ブンッ、ブブンッ


5分くらいで家電の山を作ることが出来た。

俺に命令した囚人は、口をポカンと開けたままだ。


 「終わりました。他には何をすればよろしいでしょうか?」


俺は、お伺いを立てた。


 「見かけによらず、力持ちなんだね。今はとりあえず大丈夫」


またまた、お褒め頂いた。


しかし、あれだけの山が随分と小さくなった。

刑務官も不思議そうである。


ウーウーというサイレンが鳴った。

お昼ご飯の時間のようだ。

囚人たちは、手を洗ったあと、整列してから、食堂に向かっていく。


食事は質素というより、ご飯が少し臭い。古米だろうか?

おかずは、まあ、それなりである。

それでも、食事の時間が楽しみなのは間違いない。


 「食事、ランチ、ご飯?」


エレナも食事は嬉しそうである。

どうやら、前の星での食事は、すごく質素だったらしい。

出所したら、美味しいインスタントラーメンでも食べてやろう。


俺は並んで配膳をしてもらったのだが、何故か前の人より

ご飯やおかずの量が少ない気がする。

同じ量で配膳するのが難しいのであろう。


俺が、食事をトレーに配膳してもらい席に着こうと歩いていると

後ろから、勢いよく人が近づく気配がした。

このままでは、ぶつかりそうなので横に避けてみた。


 ガラガラガッシャン


 「てめえ、いきなり避けるんじゃねえよ」


囚人の方が、どうやら俺に文句を言っている。


 「すみません。こんどから避けないようにします」


俺は素直に誤った。


 「A65、溢したのか?仕方ないな。

  食事は人数分しかない。

  拾って食べてもいいぞ。

  それか、皆から、分けてもらうかだな。

  まあ、もらえればだがな。」


刑務官は、容赦がないようだ。

小太りして髭を生やしているので、

俺は、その刑務官にチョビ髭刑務官とあだ名をつけた。

 

他の囚人は、溢した囚人と目を合わせない。

溢した囚人さんは、クッと悔しそうな顔をしている。

俺のせいで、ご飯が食べられないというのは申し訳ない。


 「どうぞ。俺のせいで溢したんでしょ。食べて下さい。」


俺は、その囚人に自分のトレーを差し出した。

 

 「えっ。いや。えっ?

  駄目だろ。そんな、だって、俺は・・・・」


囚人さんが、戸惑っている。


 「では、半分ずつにしましょう」


俺は、囚人に笑いかけて言った。


結局、ほとんど囚人さんにあげたのだが、ものすごく

感謝された。

まあ、優しさというより、単に、ご飯を抜くのも精神修行

になると思っただけなのだが。


 「バカバカ、アホなの。デザートまであげて。」


エレナ様はご立腹である。

前にデザートを我慢して精神エネルギーをとか言ってなかったか?


しかし、あの食堂のチョビ髭刑務官は感じ悪かったな。

何もしていない囚人を笑いながら蹴っ飛ばしたり、

ひとりだけ、豪華な昼食を見せびらかすように食べていたし。


俺は、毎日、鼻くそをチョビ髭刑務官のご飯に混ぜることを日課

にすることを心に決めた。。


なんやかんやで、1日の就労が終わって風呂の時間である。


 「キャー。

  イヤー。

  すごく大きい。

  クスッかわいい。

  あれは可哀そう。

  あの形は珍しい・・・、」


風呂場では、エレナが騒いでいる。

まあ、俺の見たものは見えてしまうから仕方ないが、

アソコについて、研究しているようである。

博士号でも目指すのだろうか?


風呂に入る前に、俺は体を洗う。

良い汗をかいた。

 

仕事終わりの風呂は、充実感というか何というか気持ちが良い。

汗や汚れと一緒に疲れもとれるような、初めての感覚だ。

仕事が初めてだから当たり前だろうけど。


 「ユウスケのは・・・・・・」


体を洗っていると、エレナ博士の声が聞こえてきた。

エレナは、俺がトイレや風呂に入るときは、

俺の見たものを見ていない。

意識を遮断してくれているのだ。


しかし、今回、研究に目覚めてしまったエレナ博士は

意識を遮断してくれていない。

なので、俺は大事な部分を見ないで体を

洗っている。


 「ユウスケも見せなさいよ。

  私は見ないから。」


エレナ博士は、意味の解らないことを言う。

絶対に嫌だ。

馬鹿にされるのがわかっている。

こういう時、本当に俺から出て行って欲しいと

心から思う。


エレナ博士がこれ以上、データ収集出来ないように

俺は、体を洗い終わると、周りを見ないように浴槽に向かった。


 「みんな良い人だったな。

  とりあえず今日は、イジメが無かった」


俺は、そんなことを思いながら肩まで湯船に浸かっていた。

すると、風呂場に入ってきたばかりの、囚人3人が俺の方に

やってくる。

そして、そのうちの1人が右手で俺の頭を風呂の中に

上から押し込んでくれた。


 ザブン

 ブクブクブク

 

なるほど、肩ではなく頭まで浸かれということですね。

親切な方だ。


外では笑い声が聞こえる。


俺はしばらく息を止めて水中に浸かっていた。

水中でも、体の中に空気を取り込む修行だ。

イメージが出来ると大体何でも出来るようになる。

これも、毎日の修行日課にしよう。


どのくらい時間がたったのだろうか?


 「おい、まさか、あれからずっと。息をしてねえぞ。」

 「お前がやったんだぞ。俺は関係ねえぞ。」

 「いや、だって、うそ、軽い気持ちで・・・」


外が騒がしい。

体を洗い終わった先ほどの囚人さん達だろう。

しかし、こちらは修行中なのだ。

邪魔しないで欲しい。


誰かが俺の両脇を抱えて俺の体を水中から出す。


 「どうしたんですか?」


俺は、両脇を抱えた囚人に聞いてみる。


 「大丈夫なの?」


囚人が、半べそで聞いてくる。

そっか、俺が溺れていると思って助けてくれたのか

泣くほど心配してくれるなんて、

なんて、優しい人なんだ。


 「大丈夫です。

  すみません、ご心配をかけさせてしまって。

  でも、頭まで浸かると、よく温まるんですよ。

  僕も、初めて知りましたけど。」


俺は、頭を下げて丁重にお礼をしながら浴槽から出た。

囚人さんは、うんうんと頷いてくれている。

本当に、頭まで浸かるとよく温まる。


 「そうなんですね。

  僕も初めて知りました。

  今度、僕もやってみます。」


囚人さんも、知らなかったようである。

そして、次の日から、

「いつまで湯船に潜っていられるか競争」

が俺達囚人のあいだで行われるようになった。

塀の中の、ささやかな遊びである。


俺は、風呂に入った後、

色々、整列など面倒くさいことも終えて部屋に戻った。


 「大丈夫だったか?

  イジメられなかったか?

  相手の番号がわかれば俺が言ってやるぞ」


ゴウゾウさんが優しい言葉をかけてくれる。


 「大丈夫でしたよ。みんな優しくしてくれました。

  色々教えてくれるし。」


俺は、素直に答えた。


レイマンさんやクオンさんも安心してくれている。

本当にみんな良い人たちである。

ずっと一人暮らしだったから、何か仲間というか、家族というか

新しい感情が芽生えそうである。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


なんだかんだで、4ヶ月が刑務所で経とうとしていた。

出所できるのは嬉しいが、

ゴウゾウさん達と別れるのは寂しい感じだ。


たかが4か月だが、部屋では色々と皆に教わった。


 「うん。大丈夫だ。免許皆伝

  俺の代わりに、外で、この極道流を広めてくれ。」


ゴウゾウさんが俺にそう言ってくれた。


毎日、ゴウゾウさんとは筋肉トレーニングをしていた。

そして、極道流という武道を毎日教えてくれたのである。

精神エネルギーを使えば、楽だったかもしれないけど

俺は、1回だけしか使わなかった。

 

1回だけ使ってしまったのは、ゴウゾウさんの武道に

「気」というものを使う技があったからなのだが、

ゴウゾウさんに軽く打ち込んだら、

壁まで吹っ飛んでしまったことがあった。

なので、それ以降は、精神エネルギーは

全く使わずにゴウゾウさんに武道を学ばせてもらった。


レイマンさんには科学を教えてもらった。


 「科学は事実だけを考慮します。

  そして、その事実の原理を解明することです。

  統計を利用した科学的根拠には騙されないようにして下さい。」


レイマンさんの眼鏡をクイッとさせたポーズの後の口癖だ。

科学や数学は面白い。

学校では面白くなかったのに・・・・・・

レイマンさんの話は面白かったのだ。

それに、論理的な考えが出来るようになった気がする。

 

そして、クオンさんにはこの社会の歴史や仕組みだ。


 「まあ、俺の話の全部を信じる必要はない。

  自分の目で見て、感じて、考えて判断するんだな」


クオンさんがよく言うセリフだ。

親からもそう言われて来たらしい。


もしかしたら、俺はクオンさんに洗脳されたのかもしれない。

今では、クオンさんの話を全て信じてしまっている。

まあ、論理的な思考が出来るようになったから信じることが

出来るようになったのだが・・・・


しかし、そんなことはどうでも良い

俺はクオンさんを信じている。

後は、俺の責任で考えれば良いだけのことだ。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 「あっ。可哀そうな大きさの人がこっちに来るよ。」


エレナ博士ほどになると、人を憐れみや大きさ、形などで呼ぶ。


 「ユウスケさん、俺、寂しいですよ。今日で最後ですか?

  ユウスケさんがきてから、

  めちゃくちゃ、ここの雰囲気が良くなったのに。」


就労仲間のシンイチだ。

ネットに色々書きこんで、政府転覆罪で

無期懲役になったらしい。

 

そう、俺と一緒に働く仲間は、みんな無期懲役だ。

仮釈放なんて、ほぼ無理なことを知っていても

みんな、真面目に頑張っている。

可能性は、ゼロではないからだ。


それに対して、

俺は、短い期間で外に出られるのに

僻むこともなく、みんな、優しくしてくれた。


 「ありがとう。シンイチ君、俺も寂しいけど仕方ないかな

  まあ、今日も、楽しくやってやろうぜ。」


俺は、そう言ってゴミの山を見つめる。

いつものとおり、監視カメラと刑務官や周りに注意しながら

車両や家電を片手でつかみ、空いているスペースにぶん投げる。

ぶん投げながらネジを回す。

車両や家電はスペースに落ちた瞬間に分解される。


 「ずいぶん、早くなったわね。

  これだけやっとけば、囚人仲間達も楽が出来るんじゃない。」


エレナが珍しく褒めてくれた。


そう、あれだけあった山は随分と小さくなった。

次のゴミが運ばれるまで、仲間達は楽が出来るだろう。

仲間達か・・・・

そして刑務所での最後の就労が終わってしまった。


就労が終わると、俺はいつものとおり整列した。

就労リーダーのトモヤさんと、刑務官が何かを話している。


 「G53前に出ろ」


刑務官が俺に前に出ろと命令してきた。

俺、何か失敗したかな?

もしかして、出所の延期?

不安になりながらも刑務官の前に立つ。


 「10秒だけ時間をやる」


刑務官がそう言って離れていった。

呼んどいて何なんだ?・・・


すると


 「ユウスケ、お疲れ様でした。お元気で」


就労リーダのトモヤさんが、いきなり大きい声で叫ぶと、


就労仲間達も声を揃えて

「お疲れ様でした。お元気で。」

と言ってくれた。


一言だけだが、みんなの気持ちが伝わった。

俺は、目頭が熱くなり、恥ずかしくも泣いてしまった。


 「あ、ありがとうございます。」


声にならない声でみんなにお礼を言った。


仕事をとおしての仲間意識は当然だが、冗談を言ったり、

いろいろ相談しあったり、色々と思い出す。

本当に別れるのが寂しい。


 「グスン、グスン、」


何故か、エレナも泣いているようである。


その夜


 「ユウスケ、明日でお別れだな」


ゴウゾウさんが寂しそうに俺に言ってくるが、

そんな顔をしないでくれ。


 「まあ、こんなところだから何もあげられませんけど。」


レイマンさんが申し訳なさそうだが、

俺はみんなから、たくさん色々もらっている。


 「もう、こんなところ来るなよ。」


クオンさんも優しい言葉をかけてくれる。

また、ここに来ても良いかなと思ってしまうほどだ。


 「僕にとっては、みんな家族みたいに思っています。

  色々とありがとうございます。皆さんも・・・・」


俺は、本音でみんなに話し、途中でやめた。

みんな、無期懲役で外には出られないのに俺の出所を祝福

してくれる。

チクショウ、何でこんな良い人たちが、刑務所に。


 「まあ、俺たちのことは心配するな。

  こんなところ、チョチョイのチョイで」


ゴウゾウさんが小さな声で俺に呟く。

チョチョイノチョイ?

何を言っているのか?


 「そうです。僕の知恵があれば。」


レイマンさんの知恵?


 「俺の人脈を舐めるなよ」


クオンさんの人脈?


どうやら脱走を試みているようである。

自分たちのやりたいことを諦めていない。

そういう人達なのだ。

俺にはわかる。

俺に止めさせることなどできない

だから・・・・


 「外で、また、みなさん会いましょう」


俺は、さよならは言わなかった。


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