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第六章 中央亜細亜-5-

移転暦二六年五月


 秋津島南秋津市、秋津島統合防衛軍司令部司令官公室、山本五十六海軍大将は防衛軍主席参謀である大井保海軍大佐から今次戦争の報告を口頭で受けていた。

「以上です。被害は多くはありませんが、将兵の疲労も限界に近いと思われましたので派遣部隊には秋津島への帰島準備を命じました。既に独立第三機動艦隊は出撃しており、同艦隊の遠地到着と同時に出立する予定です。なお、航空部隊および陸軍部隊も三ヶ月以内に帰島の予定です。駐留部隊は本土から配備されることになっておりますので年内には第三機動艦隊も戻ることになります」

「うむ、ごくろう。南雲たちの国葬も控えているし、本土からは陛下も出席されるという。統合防衛庁は別の意味で忙しさを増すだろう。また、インペルエンリア戦争も続いているし、主席参謀にはまだ忙しくなるだろう。一週間の休暇を与えるからゆっくり休んでいたまえ」

「はっ、ありがとうございます」


 五月末には航空部隊の一部を除き、派遣軍は秋津島に帰島していた。長期間にわたって派遣されていた第一独立艦隊および第二独立艦隊は船体のオーバーホールのため、ドック入りしていた。が、それは陸軍でも同じであったといわれる。特に戦車部隊は分解整備など徹底した整備を受けている。これまで設備の不十分な現場での整備しか行われていない航空部隊においても同様であった。


 近代戦というのは何よりも補給や整備が滞れば戦闘に参加できない、ということを改めて知らしめる戦争であったといえる。今次戦争で最も消耗した艦はと問われれば、輸送艦や補給艦であると答える軍人は多い。また、これまでの「ましゅう」型、「改おおすみ」型ではなく、さらに大型の輸送艦や補給艦の建造が計画されていた。


 結局のところ、対プロイデン戦争の主戦は秋津島統合防衛軍が勤めたものの後始末は本土の部隊で行うことになっていた。理由は簡単で、本土の方が現場に近い、ただそれだけであった。この後、本土から海軍は一個艦隊、陸軍は二個師団、空軍は二個航空団をプロイデンや西方四国に配備することとなり、規模を縮小しつつ五年の長きに渡って駐留することとなった。


 そして派遣される一個艦隊は再編なった第五艦隊であった。護衛空母『うんよう』、イージス護衛艦『すずや』『ふるたか』、汎用護衛艦『さわかぜ』『やまかぜ』『みねかぜ』『まつかぜ』であり、司令官は元第五艦隊副司令官であった南田源次郎少将(昇進)であった。これによって第三艦隊は呉に帰港、また、ロリアムンディには横須賀の第一艦隊および佐世保の第二艦隊が四ヶ月のローテーションで進出することとなった。


 本土部隊の進出により、八月には秋津島統合防衛軍所属部隊はすべて秋津島に帰島していた。最後に現場を離れたのは水上艦部隊ではなく、航空部隊であり、淵田大佐の乗機である早期警戒管制機であったとされる。


 六月から公布される秋津島統合防衛軍の新人事も決定されていた。

秋津島統合防衛軍司令長官 山本五十六海軍(主席)大将

秋津島統合防衛軍副司令長官 今村均陸軍大将

秋津島統合防衛軍主席参謀 大井保海軍大佐

秋津島統合防衛軍参謀 土田巌陸軍中佐

秋津島統合防衛軍参謀 今城健一空軍中佐

統合防衛軍海軍司令官 宇垣纏海軍中将

統合防衛軍陸軍司令官 土橋勇逸陸軍中将

海軍作戦本部長 田中頼三海軍中将

聯合艦隊司令長官 高須四郎海軍中将

航空集団司令官 塚原二四三海軍中将

第六艦隊司令官 小松輝久海軍中将

第一航空戦隊司令官 山口多門海軍中将

第二航空戦隊司令官 草鹿龍之介海軍中将

第三航空戦隊司令官 藤田類太郎海軍中将

第四航空戦隊司令官 木村進海軍中将

第48師団師団長 三好浩二陸軍中将(元日本陸軍少将)

第49師団師団長 斉藤辰夫陸軍中将(元日本陸軍少将)

第50師団師団長 岡崎清三郎陸軍中将

第51師団師団長 原田義和陸軍中将

というものであった。


 この新人事は近藤信竹中将、南雲忠一中将、阿部弘毅中将、栗田健男中将の戦死によるものであった。これでかなりすっきりとした人事になったといえる。逆にいえば、旧人事は将官にポストを用意した人事だといえた。


 ともあれ、長期間にわたる派遣を終え、派遣艦隊および部隊は秋津島において休息に入っていた。第三航空戦隊を基幹とする第三独立艦隊はウランバートに在り、第四航空戦隊を基幹とする第四独立艦隊はインペルのスクバフローに在って第六艦隊の潜水艦群はインデル海での哨戒任務に就き、艦艇すべてが揃っているわけではなかった。


 そんななか、秋津島統合防衛軍に新しい艦が配備されてきた。揚陸艦『朝日』である。揚陸艦『鳳翔』の代艦であった。『鳳翔』は西中海において特殊部隊の運用任務に就いていたが、艦自体の老朽化のため、任務に支障をきたすことが多くなっていた。そのため、代艦の建造を予定していたのであるが、秋津島重工より提案があったのである。紆余曲折の末、それは主席参謀大井大佐の目に留まることとなった。


 それは簡単にいえば、元第三艦隊所属艦である『いせ』の運用についてのもので、廃艦が濃厚であるが揚陸艦への改造はどうであろうか、というものであった。『鳳翔』の不調を耳にしていた大井は統合防衛軍司令部に図り、総司令官山本大将の許可を得ると、統合幕僚本部に上申、それが受け入れられたのである。前年二月のことであった。『いせ』は秋津島に回航され、改装作業に入ったのである。これによって『鳳翔』は解体処分されることになった。


 『朝日』の要目は以下のとおりである。

基準排水量 一万五〇〇〇t

満載排水量 二万t

全長 二〇〇m

全幅 四○m

吃水 七.五m

機関 AJPオールギヤードタービン

出力 一二万馬力、二軸推進

速力 三〇kt

航続距離 一六ktで六〇〇〇浬

乗員四〇○名

兵装 二〇mmCIWS 二基

   短魚雷三連装発射管 二基

   一二七mm単装速射砲 二基

   VLS 一六セル

   短SAM発射機 一基

   アスロック発射機 一基

搭載機 哨戒ヘリコプター 三機

    ホバークラフト型揚陸艇四隻

    固定翼機運用可能(艦固有の部隊はない)

機関を蒸気タービンにしたのは最上甲板の補強によるトップヘビーを解消するためであり、固定翼機運用のための蒸気式カタパルト設置のためであった。


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