Interlude ルームツアー3
「お風呂、こっち」
レオは当然みたいに唯衣の手を引き、 洗面所へ案内する。
もちろん、 エスコート付き。
広い洗面台。 ホテルみたいな照明。 並んだタオル。
そして奥には、 明らかに広めの浴室。
唯衣は目を丸くする。
「わぁ……広い……!」
するとレオ、 ごく自然な声で言った。
「基本、一緒に入る前提で広さ決めたから」
「えっ?」
「えっ??」
お互い、 同時に顔を見る。
そして同時に、 少し首を傾げた。
数秒後。
「……一緒に入るの?」
唯衣がおそるおそる聞くと、 レオは本気で不思議そうな顔をした。
「入るよ。なんで?」
「なんでって……!」
唯衣の顔、 一気に赤くなる。
「恥ずかしいよ!」
するとレオ、 即答。
「恥ずかしくない」
「いや恥ずかしいって!」
「唯衣と裸でくっつける時間なのに、独りとか無理」
真顔。
破壊力。
唯衣、 完全停止。
レオはさらに追撃する。
「冬は寒いし」
「くっついた方が効率いい」
「効率でお風呂入る人初めて見た!!」
唯衣が思わず叫ぶと、 レオは少しだけ目を細めた。
「……だって、一緒の方がいいだろ」
低い声。
近い距離。
その言い方がずるい。
唯衣は耐えきれず、 レオの胸を軽く叩く。
「レオが距離近いの!」
「同棲してるから問題ない」
「問題ある!」
でもレオ、 全然離れない。
むしろ嬉しそう。
たぶん今、 頭の中で
“一緒にお風呂” “毎日” “合法”
まで考えてる。
耳としっぽあったら、 絶対すごい勢いで揺れてる。
「唯衣。問題あるなら結婚する?」
レオは、あまりにも自然にそう言った。
まるで、
“じゃあ明日天気いい?” くらいの温度で。
唯衣の思考、 完全停止。
「……え」
「合法なら問題ない」
真顔。
たぶん本人、 今この瞬間、 “お風呂一緒に入りたい” しか考えてない。
でも言われた側はたまらない。
唯衣の顔が、 一気に真っ赤になる。
「っ……」
レオは首を傾げる。
「唯衣?」
すると唯衣は、 ぎゅっと服の裾を握った。
恥ずかしそうに視線を揺らして、 でもちゃんとレオを見る。
「……レオのお嫁さん、なりたい」
空気が止まる。
「……あの……」
唯衣はさらに小さな声で続けた。
「時が来たら、もらってください……」
ぼっ。
次の瞬間。
今度はレオが真っ赤になった。
「…………」
沈黙。
数秒前まで、 余裕そうだった男が、 完全停止している。
唯衣、 少し不安になる。
「レオ……?」
その瞬間、 レオは片手で顔を覆った。
やばい。
今さら気づいた。
勢いで“結婚”って言った。
しかも、 お風呂一緒に入る流れを合法化したくて。
目的が終わってる。
でも唯衣は、 ちゃんと受け取ってくれた。
しかも、 “なりたい”って言った。
脳内レオ、 たぶん今大爆発してる。
もちろん耳もしっぽもぴょんとなってる。
獣耳から 完全に煙出てる。
レオはしばらく黙ったあと、 ゆっくり唯衣を抱き寄せた。
強く。 でも壊れ物みたいに優しく。
そして肩口に顔を埋めたまま、 小さく呟く。
「……無理」
「えっ!?」
「好きすぎる……」
「あの、、、ちゃんと、えーと、きちんと、プロポーズをさせて頂きますので、予約させてください」
唯衣、 さらに真っ赤。
たぶん今、 2人ともお風呂どころじゃない。




