アフタープロジェクト
プロジェクトが終わって数日。
ようやく、 2人に普通の夜が戻ってきた。
残業もない。
緊急連絡もない。
レオも唯衣も、 久しぶりに“明日を気にせず”並んで歩いていた。
夜風が気持ちいい帰り道。
唯衣は隣のレオを見上げる。
「……なんか不思議だね」
「何が」
「ちゃんと一緒に帰れてるの」
レオは少しだけ目を細める。
たったそれだけのことなのに、 この1ヶ月の2人には贅沢だった。
信号待ち。
レオは静かに唯衣の手を握る。
強くもなく、 でも絶対離さない温度。
そのまま、 見慣れない道へ入っていく。
「レオ? こっち駅と逆じゃない?」
「ん」
「どこ行くの?」
「……来ればわかる」
唯衣、 ちょっと笑う。
「内緒ごと?」
「すぐわかる。」
「ふふふ。そうなんだ?」
そんなやり取りをしながら歩いていくと、 静かな住宅街が見えてくる。
街灯が暖かい。
夜なのに、 どこか安心する空気。
そしてレオは、 新しいマンションの前で止まった。
唯衣、 きょとん。
「……え?」
レオ、 ポケットから小さな箱を出す。
「これ」
渡されたのは、 シンプルなカードケース。
中には、 新品のカードキー。
唯衣、 数秒止まる。
「……鍵?」
「ん」
「誰の?」
レオ、 平然。
「俺たちの」
沈黙。
唯衣の脳、 たぶん追いついてない。
「……え?」
「買った」
「……何を?」
「家」
「え???」
レオ、 少し気まずそうに視線を逸らす。
でも声だけは真っ直ぐ。
「プロジェクト中に決めた」
「いや待って!? え!? いつ!?」
「会えなかった時」
その言葉で、 唯衣の胸がぎゅってなる。
レオは静かに続けた。
「……唯衣がいないの、 思ったより無理だった」
唯衣、 完全停止。
レオ、 もう諦めたみたいに本音を出す。
「だから、 帰ってくる場所作った」
「毎日ちゃんと帰ってきて」
「俺の隣にいて」
「……もう、 離れたくない」
夜風が静かに吹く。
唯衣、 涙ぐみながら笑う。
「……ずるい」
「何が」
「そんなの、 嬉しいに決まってる」
その瞬間。
レオ、 明らかに安心した顔する。
そして、 少し照れ隠しみたいに言う。
「……あと、 家具もう全部入ってる」
「早っ!?」
「生活用品も」
「早すぎるって!」
「ベッドもある」
「……レオ、、何サイズ?」
一瞬の沈黙。
レオ、 真顔。
「セミダブル」
唯衣、 吹き出す。
「近い近いよ!!」
「問題ない」
「いやある!」
でもレオ、 小さく笑って。
「……離れなくて済む」
その顔、 ずるいくらい幸せそうだった。




