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ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第7章 唯一神教本部にて
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エリート信徒の特権

 エリート信徒として、退屈ではないが、変化に乏しい日々が続いた。決まった時間に起き、食事、日々の学習等の日課をこなし、決まった時間に就寝という、まるで刑務所のような生活。そんな規則正しい生活は、夜更かしと朝寝坊が普段の生活リズムに組み込まれているわたしにとっては、苦行以外の何物でもない。さっさと唯一神教の違法行為の証拠をつかみ、こんなところから永久にサヨナラしたいものだ。

 わたしは、学習会の終了から夕食の間の時間や休憩時間等を利用して、その違法行為の証拠探しを始めることにした。何の手がかりも見当もないところでスタートだから、時間はかかりそうだけど、ここは地道にコツコツと進めるしかないだろう。


 それで、このところのパターンとしては……

 学習会が終わると、アメリアは、テキストや資料等を手早くカバンにしまい込み、

「カトリーナさん、さて、今日はどの部署の様子を見にいきますか?」

 と、お世話係(文字どおりの意味で「カバン持ち」でもある)のアメリアが、教団本部内の道案内役を務めることが多くなった。話によれば、エリート信徒の特権として、「本部及びあらゆる支部内における移動の自由(ただし、お世話係の同伴が条件)」が認められているとのこと。なので、教団本部内の見学を名目として、その「移動の自由」の特権を、お世話係の同伴という条件も含め(わたし一人で本部内をさまよっても迷子になるだけだから)、大いに活用することにしよう。

 ちなみに、エリート信徒の特権としては、もう一つ、「教祖様、事務局長及び事務局次長への『お目通り』の自由」、簡単に言えば、教祖様、事務局長、事務局次長に対し、会いたいときに会える権利が認められているという。ただし、教祖様に会う場合に限り、事務局次長の許可とか、申請書への記入とか、煩雑かつ面倒な手続きが定められているとのこと(しかも、面会には事務局次長も同伴)。ただ、これだけ大変な思いをしても、有益な情報を得られるかどうか分からないので、今のところは、スルーということにしておこう。


 わたしはアメリアを伴い、ある日は教団の文書セクション、次の日は会計セクションといった具合に、教団本部内で(違法行為に限らず)何らかの証拠を残しそうな部署を訪れては、教団信徒をつかまえ、世間話にかこつけて、それとなく様子を探ってみた。

 ところが(あるいは「やっぱり」と言うべきか)、信徒から返ってくる答えは平和そのもので、犯罪に関係しそうなものはなく、また、それなりに整理された教団内部文書や会計帳簿等々からは、怪しい又は危険な香りなど、まったく感じられなかった。

 一日のお務めが終わり、ベッドに入ると、わたしは思わずため息をつき、

「ふう、なんだか……、こう空振りばかり続くと、馬鹿馬鹿しくなってくるわね」

「あら? カトリーナさん、エリート信徒たる者、これではいけません。エリート信徒は常に、一般信徒の模範であるべく、え~っと、え~っと……」

 独り言のつもりが、アメリアにも聞こえていたようだ。エリート信徒にはそれなりに自覚や責任が要求されるとのこと(どうでもいい話だけど)。わたしはアメリアのお小言を聞きながら、徐々に眠りへと落ちていった。

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