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ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第6章 教団本部のエリート信徒
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武装盗賊団の言い分

 チャック支部長は、武装盗賊団の非道について力を込めて(つまり、唯一神教としてのものの見方・考え方を前面に押し出して)語り始めた。支部長の話によれば、しばらく前に、スラム街の広場(すなわち、先刻まで炊き出しを行っていた、この場所)で布教活動を行っていた時、突如として武装盗賊団が現れ、理由もなく(あくまでも教団の見方・考え方によれば「理由はない」との意味で)攻撃を仕掛けてきたとのこと。

 これに対し、武装盗賊団側の言い分としては、「武装盗賊団の創始者の生誕地で勝手なことは許さない」と、最初に攻撃を受けた際に、そのような口上が述べられたらしい。でも、それは、さっき襲いかかってきた連中が言ってたのと同じことだ。


 その時、プチドラは、わたしの肩に飛び乗り、

「マスター、見て、この石。マスターが腰掛けてた……」

 と、耳元でこっそりとささやいた。「石」とはすなわち、炊き出し終了後に「疲れた」と腰を下ろした直方体の石。その時は気付かなかったけれど、よく見ると、小さい字で何かが彫り込まれている。

「あらら、そういうことだったのね……」

 プチドラは、わたしの肩の上で「うんうん」と、しきりにうなずいている。プチドラの見立てによれば、その石は「武装盗賊団創始者誰々の生誕地にして云々……」との文字が彫り込まれた石碑あるいは墓石であり、そのことから考えれば、このスラム街の広場は、元々、武装盗賊団の言うとおり、彼らにとっての聖地であった可能性が高いとのこと。であれば、今はバラバラになって地面に散らばっているこの石も、本来は組み合わさって一つの形を成していた可能性が濃厚ではないか。

 その点をチャック支部長に尋ねてみると、支部長はチッと舌打ちして、

「ええ、確かに、ここには塔のようなものがありましたな。しかし、異教徒たちがそれに向かって礼拝しているような、意味のない構築物、つまりは偶像ですな」

 と、敵意むき出しの様相。唯一神教の考え方としては、信仰の対象は唯一神のみであり、それゆえに、異教徒が礼拝の対象としているような、文字の刻まれた(単なる)石塊は、破壊されて当然ということらしい。なんとも身勝手な理屈だけれど、そのことに疑いを抱いていない人たちに対しては、何を言っても耳に入らないだろう。


 ともあれ、炊き出しを終えて屋敷に戻ると、パターソンとアンジェラが今回も「おかえりなさい」と、応接室に紅茶とお菓子を用意して待っていた。

 わたしは「ふぅ~」と大きく息を吐き出し、「よいしょ」と応接室のソファに腰を下ろし、

「ただいま。今日は今までで一番疲れたわ」

 そして、とりあえずはお菓子と紅茶を口に運びながら、

「唯一神教の信者の考え方としては、先祖代々のお墓や、神様をかたどった祈念碑なんかは、タダの偶像だから、ぶっ壊しても構わないんだって。この理屈、分かる?」

「なんと罰当たりなことを。それは、まさに暴挙と言えるのではないでしょうか」

 パターソンは、何やら義憤のようなものに駆られている様子。アンジェラも、彼に同意するかのように、「うんうん」と何度かうなずいた。

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