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救出が終わったので殺す方に廻る!

 こいつは面白い・・・不謹慎なのは承知の上で思わずボクは思ってしまう、何せコッチの世界でも人型機動兵器など存在しなかったからだ。

 精々人より動物に近いシルエットをしてて、しかもAIによる自動制御・・・人の手による操縦ほどの練度は無く、それで互角に戦える敵が出て来たのだからボクが面白いと思ってしまうのも仕方が無いだろう。

 ボクが包囲される事を警戒し下がると彼等は陣形を警戒しながら包囲して来たが、それでも対面で囲う事が無い様に軸線を外して包囲して来る・・・同士討ちを避ける為だ。


「素人じゃ無いって事ね」


 交代しつつ銃を構えると相手が散開して回避行動に移り、その素早さからAIによる自律型兵器では無い事が確実に思えた。


「こいつ等4機毎に組んでるけどソレが一個小隊なのか・・・その小隊が4つで16機編成、機体の性能が負けてるとは考え難いけど、それでもアッチは本職の兵隊さんだ・・・・・」


 囲まれて十字砲火を受けるのは面白く無い・・・ボクはノーダーが抱えてる実態弾の銃、超電磁砲(レールガン)の一種であるリニアガンを速射モードに変える。


「じゃあ見せて貰おうかな、ファルデウス製のアサルトノーダーの実力ってのをさ!」


 敵が十分にバラけた事を確認しボクは行き成り後退から前進へ、敵のド真ん中に向かってバーニアを吹かし手当たり次第に発砲しながら飛び込んだ!

 敵も移動して軸線を逸らしながら発砲するが、それでも対面線付近の仲間が気に成って集中出来ないらしい!

 それでもエクセリオンよりは劣るけど然程(さほど)は動きが悪く無い・・・判断の速さと正確さはポッドの比では無く、シールドをガンガン削られて行きボクの方が追い詰められている様な状況だ。


「これは少々ファルデウスの技術力を甘く見てたかな?中々シャレに成らない性能じゃ無いか・・・・・」


 エクセリオンに及ば無い迄もカブリヌスはソコソコの性能を持っており、既に一般公開されてるので軍事メーカーが各々アサルトノーダーを独自に開発し始めていた。

 だが正直なところ性能の方は今一つ、ボク達とポップさんが開発したカブリヌスがファルデウス軍では主力の人型兵器に成っている。

 でも他国や正規軍以外の私軍には結構売れているらしい、売って来る砲弾の破壊力までは大差無いのでコレを同時に10機以上相手にするのは普通なら自殺行為だけど!


「なんかオマエ等ちょっと感じが違うんだよっ!」


 ボクは敵の機体を飛び越えて反対側に廻るとフルオートで一連射、外れ玉も多いけど数体の敵機を撃破する。

 さらに横へ移動しながら追撃をかけ、次々敵機を擱座(かくざ)させながら背後の小隊と重なった所で飛び上がった。

 思いっきり誘ったけど流石に同士討ちをするほど間抜けでは無かった・・・それでも射撃を躊躇ってる間にボクに撃ち抜かれ、そうこうしてる内に残機が4機に成った所で勝ち目が無いのに戦い続けてる。


「撤退しないの?まあ君達の場合そう何だろうけど・・・・・」


 もう一機ボクが撃破した所で明後日の方向から集中砲火、残りの3機はハチの巣にされて屑鉄と化して行く!


「パインさん所のカブリヌスか・・・応援は嬉しいんだけど収容所の方は・・・・・」


「キッチリ黙らせて来ましたよ♪第二次降下部隊と入れ代わって応援に・・・・・」


 ボクは敵のノーダーの胸部装甲を引っぺがしながら問うとパインさんの部下が頼もしく答える・・・ボク達が降下した後でチンピラさん達の船を反転させ2回目の降下をさせたのだが、思った以上にボクが暴れ過ぎ彼等は避難の誘導くらいしかする事が無かったらしい。


「流石に疲れたでしょう?」


「まあね・・・コロニーの制圧は?」


 すると報告用の画面が表示され、


「ほとんどのコロニーが戦わずして降伏してます・・・まあそりゃそうだ、彼等は命令守ったって確実に最後は取り残されて死ぬ事になる。余程のバカでもミーモットが自分拾ってってくれるとは思わないでしょう」


 そう彼は言ったけど、


「拾って貰えると思ってる馬鹿がボクを殺しに押し寄せて来たんじゃない・・・全く疲れた疲れた、それよりコレを如何思う?」


 ボク達は撃破した敵のノーダーを見て、


「正直驚いてますよ・・・戦えるレベルで動けるノーダーなんて有ると思わ無かった。でも我々より格段に動きが、と言うより思い切りが悪い気がします」


「その理由はコレさ・・・・・」


 敵ノーダーの胸部装甲を引っぺがすと中には機械がギッシリ詰まってる・・・高だか身長5メートル程度のノーダーにはコクピットを設置出来る部分は少ない、この体系で胸部にコクピットが無いと言う事は・・・・・


「人が乗って無い?遠隔操縦なのか・・・・・」


「だから動きに緊張感無かったんだ・・・・・」


 まぁ人死にが出無いって事は良い事だとは思うけどね。


「ファルデウス製かな?」


 思ってた疑問をぶつけて見ると、


「恐らくそうでしょうね・・・キッドさんが主人公の映画の中にはノーダーのパイロットとしてのストーリーの物も有ったし、ノーダーの存在はファルデウスでは一般にも広まってますから・・・・・」


「ヤダなぁ・・・映画封印出来無いかなぁ」


 正直こそばゆいからボクを主人公に映画作って欲しく無いんだけど、


「そんな事したらミーシャ・スプロケットが泣いちゃうじゃ無いですか!」


「そんな事したら私も許しませんよ!」


「ちょっと待て誰だよそれ!」


 行き成り知らん名前出て来たけど?


「良くキッドさん役をやってる女優です。キッドさんは女顔や体格から女性が演じる事が多いから・・・」


「泣くぞ本気で!」


 すかさず抗議?する。


「そんなキッドさん役で最も人気のある女優が何人か居て、その内の一人が彼女なんですよ・・・私もファンでして!」


「確かバーカンディ系列の映画製作会社の子だったよな・・・」


 そう言えばミューズが黙ってボクの映画作る許可出したの発覚した時に、マリアさんも「ボクの役をしてる女の子が可哀想だから封印は勘弁して」って言ってたな?


「別に作るのは勝手だけどボクの提供した技術使われて無いだろうな?」


「肘か膝の関節当たりの装甲を剥がして貰えますか?」


 器用さとパワーはエクセリオンが上だから頼まれた通りに解体すると・・・


「私は適性が有ったのでノーダー乗りに転向したのですが元々は整備の人間でして・・・パッと見エクセリオンやカブリヌスの内部機構より、既存の技術で纏められてる様に見得ますね?後で詳しく調査してレポート提出させて頂きます」


「お願いしますねw」


 そう言うとボクはエクセリオンを立ち上がらせ総督府の周辺を巡回する・・・総督府は炎を上げて燃え上がって居り消火活動中、敵に戦闘を継続する意思は見られない。


「んっ?アレいやアイツは・・・」


 パインさん達の部下に連行されてる集団の中に異様に大きなヘッドセットの一団が・・・ちょっとコッチの文明柄で考えても異様な格好で恐らく敵のノーダーを操縦してた連中じゃ無いかと想像出来た(後日と言っても翌日には想像が当たってる事が解る)

 その後ろから前を歩くソイツ等に怒鳴っている男に見覚えが、何とモブエネ君も一緒に捕縛されたらしい!


「ボクを味見するとか言った仕返ししたいんだけど・・・・・」


「止めて下さいよ、捕縛後の暴行はキッドさんでも犯罪・・・陛下だって手心加えてくれないですからね!」


 その点はボクの意見も一緒、ボクじゃ無くてミューズが相手だって筋の方を先に通す爺様だ!

 だが・・・


「おっと!」


 彼等の後ろで銃を突き付けてた兵士が転び、隣の同僚に捕まって仕舞い一緒に倒れる・・・大根役者だなあ!


「今だっ!」


「走れっ!」


 捕虜が一斉に走り出した。

 その先は総督府に付随した宇宙港で飛べるかも知れない停泊中の船が、それに向かって一斉に勿論モブエネ君も一緒に走り出すが鍛えて無いので最後尾で走ってる。


「そいつ等を止めろ~~~っ!」


 と転んだ兵士は言いながら彼はコッチに向かってサムズアップ・・・良く見るとパインさんの部下でヴァイラシアンからの移籍組の兵隊さん、ボクとパインさんの通信を聞いて気を利かせてくれたらしい!

 そう言えば彼が正式にファルデウス軍人に成ってサンティーウェンに配属された後、ボク達スターシップに同行する折りに自動調理器(オートクッカー)をスターシップと同等の物に交換して上げたので凄く感謝された。

 そのお礼だろうか?


「まぁドッチにしろ感謝だなっ!」


 ボクは右肩部後方に折り畳まれていた大口径レールガンを展開、二つ折りに成ってた砲身と機関部がオートで接続され一直線に・・・・・


「大口径ショルダーキャノンに超電磁砲(リニアランチャー)を選択して来て良かった、これが光学兵器なら掠めても全員黒焼きになっちゃうもん・・・なるべく長生きして長い間苦しんで貰わないと♪」


 ボクは電流圧をミニマムに設定・・・これでも亜音速は出るからアイツ等は文字通り吹き飛ぶ事に、まぁ殺す気は無いので少しだけ距離を大き目に取ってあげよう・・・優しい心のボクに感謝して死ぬが良い!


 ズバァァァ~~~~~~~~ンッ!


 彼等の頭上十数メートル上を亜音速まで落とされたリニアランチャーの弾が通過し、彼等が乗り込もうとしてた小型宇宙艇に直撃する。

 前以ってセンサーで調べてあったから乗員や整備員がいないことは確認済み、小型宇宙艇と言っても地球の旅客機ほどの長さと比べ物に成らない程の横幅が有るソレは、左側面中心にレールガン一発の弾を受けると・・・真っ二つに成りって転がりながら爆発四散する!


「えっ!?」


 流石に驚くボクだったけどスグに自分のミスに気が付いた。


「そうだよね掠めて吹っ飛ばすモブエネ君達に気を使い過ぎた・・・超音速や光速の弾なら敵艦を軽く貫通するだろうけど、弾速を亜音速にまで落としちゃったから反って着弾の破壊力が全部敵艦に・・・・・」


「いま何気に恐ろしい事を言いましたね?」


 現在エクセリオンはレプトン通信でスターシップと繋がっておりフルタイムでアリスのサポートを、そのアリスが通信に割り込んで来て・・・・・


「大気圏内で光速にまで達する弾頭射撃しないで下さいよ?射撃の余波で周囲に衝撃波や❝かまいたち❞で迷惑掛け捲るでしょうから・・・・・」


「気を付けとくけどボクがしそうだったら止めてね、皆に御願いしとくけど頭に血を登らせてる時は特に・・・・・」


「了解しました・・・・・」


 ところで幾ら銃弾より砲弾が大きくたって拳銃弾だって亜音速や音速の辺り(確か45ACPが亜音速で9㎜弾が音速かな?)は出てる、それが十数m離れてるなら頭の上を亜音速の弾が通り過ぎたって何て事は無かった筈だ。

 だけどモブエネ君たちもタダで済んでは無かった・・・レールガンの砲弾が頭上を掠めた時に耐えがたい耳鳴りに襲われただろうけど次の瞬間、目指してた小型宇宙性が一瞬で吹き飛んで爆殺四散したのだ。

 その余波に巻き込まれ奴等の身体が津波に巻き上げられたサーフボードの様に飛び上がり、そして地面に叩き付けられアイツ等は手脚が変な方向に曲がってピクピクしてたので笑って仕舞った!


「ここで笑うの人間的に如何かと思われるかな?」


「そんな事言ってる暇が有ったら衛生兵を呼べ!お前等キッドさんの悪い影響をモロ受け過ぎているぞっ!」


 失礼な!


「いや言われても仕方無いかと・・・・・」


「衛生兵じゃ手に負えん、救急搬送を手配するぞ!」


 なんか最後の声に聞き覚えが・・・


「一応聞いとくけど事故か?それともワザとなのか?」


 おっと鉱山惑星に一番乗りはウェルム少将だったみたいだ!


「タイムテーブルを寄越してくれ・・・こっちがソレに合わせる、鉱山惑星の崩壊は食い止められんのだろ?ならコロニーの住人を救出する事を最優先にする・・・」


 ウェルム少将が部下にテキパキと指示を飛ばす・・・・・


「今更マルドゥース子爵に義理立てしてる馬鹿は・・・」


「居無いと思うけど用心に越した事は・・・・・」


 衛星軌道上に巨大な戦艦が、そして搭載されている揚陸艇が降下して来た。


「お前らが粗方片付けたからワシ等の暴れる分が無い・・・・・」


「そんな事より救出が優先、不謹慎な事言って無いの!」


 お爺ちゃん達の尻を蹴飛ばし(ホントに蹴ってる訳じゃ無いよ)ボクはコロニー住民の避難を進めさせた。




 爺ちゃんが上機嫌だ・・・総督府も有った事だし鉱山衛星の小さな宇宙港が救出作戦本部に、当然だけど救出された拐かされてた人達もココで輸送艦に分譲するんだけど、ミーモット・マルドゥース子爵が欲望に任せて厳選してただけあり美人が揃ってる。

 そんな美人に感謝されてウェルム少将や次に来たビスタ艦長が鼻の下を伸ばしてる、そんな美人の中で目当ての女性を見付けると・・・・・


「フレッドは無事です・・・無傷とは言い難いけど命や後遺症の心配はいらない、多分キズも痕は残らないかと・・・・・」


 凄く若くて美人な母ちゃんと負けない位の美人のお姉ちゃんが2人、おいおいフレッドお前何気に恵まれ過ぎてるだろ!

 そう思っただけでミューズに心を読まれて叱られるのが普段だけど、今回ミューズはスターシップで❝お使い中❞・・・この星系の自然惑星である領都にミーモット・マルドゥース子爵の足止めに向かっている。

 そのスターシップにフレッドも乗ってる・・・下ろす暇も無いしスターシップの中の方が安全だから、だからフレッドと16人の仲間の家族には彼が無事だと伝えて置きたかった。

 まぁアッチは衛星軌道上から逃れ様とする敵艦撃ち落とし、いざ手に負え無かったら逃げれば良いだけだからね!


 さてと・・・この星の住人をウェルム少将率いるロイヤルフェンサー3が、フリーコロニー❝エンドラ❞との間を往復を繰り返して住民を避難させる事に成った。

 今は避難住民の名簿を作りながら船に乗船させてる、運が良い事にロイヤルフェンサー3は他のロイヤルフェンサーに比べエルミスⅡよりヴィダーシュペンスティガー級戦艦の比率が多い。

 エルミスⅡは大型の戦艦から小型の駆逐艦まで種類が揃ってるけど、戦艦タイプのエルミスⅡよりヴィダーシュペンスティガー級の戦艦の方が積載量に優れているのだ!


「ロイヤルフェンサー1より先に来てくれてよかったよ、ジュリアさんの所は殆ど全部エルミス級だからね」


「それでも他の船より積載量も優秀ですよ、その上エルミスは速いから脚で往復すれば輸送量を稼げるんじゃ・・・・・」


 トマスさんに言われボクもそうかなと思い始めたけど、確かに速度が倍なら積載量が半分でも2往復で運べる量は一緒、でも積み込みの手間を考えれば一度で運べる量が多いに越した事はない・・・それに燃料も2倍まぁ燃費も有るから一概には言えない今度シュミレーションしてみるかな?

 そんな余計な事を考えながらコロニー内を散策してると意外にも植物を持ち出そうとしてる奴等が、この非常時に可哀想だけど植物まで避難させる暇あるのかな?


「避難先がエンドラだからですよ・・・あそこは一旦廃棄されかけたコロニーだからロクな環境が整っていない、そこに300万が一時的と言え逃げ込んだら酸素や水の浄化が間に合いません」


 そうかな?

 かなり大きなコロニーだったけど?


「確かにエンドラは全長90㎞も有るし直径も20㎞だからコロニーの中でも大型の方ですよ、しかも完全密閉タイプのシリンダー型だから内面全てを陸地として使ってる。何も考えなければ数千万人詰め込めます、まぁ快適な環境には程遠いですけど・・・ちなみに世界最大のコロニーはファルデウスの全長300㎞直径60㎞の超巨大コロニーですが、ここまで大きくすると維持費が掛かり過ぎて反って非効率・・・如何やら色々と計算違いが有ったみたいですよ?」


 日本ではリアルロボットの先駆者で某人気アニメで描かれたスペースコロニーのステレオタイプ、あのオニール式シリンダーと違い完全密閉型のコロニーも多い。

 コロニー内の昼夜を造るのには一旦外のソーラパネルで太陽エネルギーを吸収し、その30%を使ってコロニー内のセンターピラーを発光させている。

 それだけで地球上に居るのと同程度の太陽光を享受する事が出来る、そんな手間をかけるのは内面を全て陸地に使う為と放射能とか有害な物を遮断し易いから、それに採光窓を造ってデブリや小さな隕石などで傷付けられ補修する手間を省く為だ。

 採光窓にシールド張るのはエネルギー代がバカに成らないらしい・・・成る程そう考えるとヤッパリ星の方が生活環境が安定してるし経済的なのかな?


「この星だって旦那も見た通りコロニーの外は水も植物も無い、コロニーの中で循環させるだけで精一杯だから、だから植物や環境保全プラントは出来る限り持ち込まないと・・・」


 指差された先では大きなサイロの様なモノが解体されてる、中には藻が詰ってて二酸化炭素を酸素に変換する生体プラントだそうだ。


「こう言う事が有るから難居住惑星だろうと大事何ですよ・・・うん万人の済める環境なんて流石にパッと出て来るモンじゃ無い、先ずは踏みしめる大地そして吸う事の出来る酸素それから水と食料・・・・・」


 そう考えると難居住惑星でも重要って事だね?


「それにココは難居住惑星と言ってもマスクもヘルメットも着用せずに外に出られる・・・こんな惑星を潰した何てミーモットって馬鹿以外の何物でもない!所で旦那・・・もうコロニーから出ちゃいますけどドコ行くの?」


「ミーモットとはマタ別のタイプの馬鹿退治さ!」


 パインさん達と例の4人を引き連れてコロニーの外へ、そこに用意されてた軍用車両に乗ると更にコロニーから離れる。

 向かった先に小さな居住カプセルが在り、そこには一人の老人が住んでいた・・・ひねくれ者でコロニーで皆と一緒に暮らすのを嫌がって一人で暮らしてて、そいつは避難を拒否してるらしい。

 到着すると既に軍用車両が来ておりウェルム少将の部下が2人、老人いやクソジジイを説得し様としてた・・・一応面倒ごとが無い様にボクもファルデウス軍の制服を借りて着てる。


 服と階級章が示す階級は大尉殿だ・・・前はファルデウス軍絡みの仕事をする時は少佐待遇だったけど、軍人に成って無くても功績に対し昇格が無いのは体裁が悪いらしい。

 それで階級自体は中佐待待遇で軍内には周知されてるけど、ボクほど若いのが中佐と言っても説得力が無いので大尉の服を・・・でも無駄な足掻きじゃネ?

 ボクが大尉だって説得力の無さは変わらないと思うんだけど・・・ちなみにファルデウス軍では支給される軍服は佐官・尉官・士官・官兵と言う感じで変わり、大中小は階級章で見分け、将官以上は階級章もそうだけど服自体が階級ごとに変わる。


「兎に角ワシは・・・」


 奴はボクを一瞥しボクは微笑んで返したけど無視された。

 如何やら「ここまで育てた土地に愛が・・・」的な事を話してるけど、その話の節々から「補償金をもっと寄越せ」と言う本音が聞こえて来た。

 コイツがゴネて部下が困ってるとウェルム少将が漏らしてたので、お節介で自発的に応援に来たのだ・・・ちなみにボクが来たら2人は敬礼を返してくれた。


 暫くは説得を続けてとジェスチャーで指示し話を聞いてたけど・・・こいつは金が欲しくてゴネてるだけ、こんな奴に時間をかける値打ちは無いと判断する。


「ちょっと良いかな?」


 ボクが声を掛けると2人は助かったと言う顔でボクに変わってくれたので、ボクは彼等に会釈してからクソジジイの前に立ちニッコリ微笑んでから・・・ケガしない程度に思いっ切り横っ面を殴り飛ばした!

 うん背後で2人とパインさん達が如何言う顔をしてるのか想像が付くよ・・・・・


「おいクソジジイ・・・オマエ今の状況が解ってるのか?この状況を舐めているのか?」


 思いっ切りドスを利かせた声で低く唸るけどボクがしても迫力が足りない、いつかウザ絡みして来たジュリアさんにしたんだけど逆にカワイイって喜ばれて抱き着かれたモンな・・・だから一緒に鉄拳で実力行使する!


「この星を潰したのはミーモット・マルドゥース子爵だ・・・そんなに文句があるならミーモットの奴に言え、それ以上ファルデウス政府が保証する謂れは無い!法律知らんのか?」


 これはチャンと調べてるから嘘は言って無い。


「オマエがマルドゥース子爵の募集に応じて入植したんだろ?そしてその環境を整えなかった責任はマルドゥースにある・・・それをファルデウス政府が一時的に保障してるに過ぎんだろうが!」


「しかし・・・」


 ボクは更に切れ続ける。


「黙って聞いてろクソジジイッ!貴様この状況が解っているのか、この星は後2週間もしない内に吹き飛ぶんだぞ?」


 胸倉を掴んで立たせ思いっ切り大声で怒鳴り付ける!


「コッチにゃテメェ見たいな馬鹿に時間かけてる暇は無ェんだ!そもそも星間開拓事業と言っても政府直営事業じゃない限りコッチに保障する義務すら無い、それでも駄々捏ねるなら自分で自分を助けるんだな!」


 そう言うと奴を突き放してウェルム少将さんの部下に向き直る。


「この者は我々による救出を拒否した・・・要救助者リストから削除しろ、救わなくては成らない人は幾らでも居るんだ!」


 流石に見捨てられると思わなかったのかクソジジイの顔から血の気が引く。


「最後の情けだ・・・総督府に有った宇宙港に5日以内に自力で来い、間に合わなければ置いて行く!お前等も行くぞ・・・・・」


 そう言ってウェルム少将の部下と一緒に出て来た。

 そして車を走らせ退去すると・・・まさか本当に帰ると思わなかったのか、クソジジイが外に飛び出して来て何か叫んでる。

 知った事かよ・・・暫く道路も無いし平地を並走しながら隣の車と会話する。


「流石キッドさん、名演技です」


「演技じゃ無かったんだけどね、ああ言うバカは放置で良いと思う♪]


 と皆で笑い合う。


「でも正直言って老人を殴るとは思わ無かった・・・あの時はフリーズしちゃったですよw」


「正直助かりましたアイツ執拗いし頑固で・・・・・」


 若い女の将校さん達、上官の方は中尉さんだった。


「これで5日以内に来たら拾ってやれば良いし、来なかったら消し炭に成っても文句は言えないでしょう。自分が頑固な責任は自分で取らないと・・・・・」


 だけどボクにはマダ言って無いトラップを仕掛けてる。


「あのクソジジイが来ても・・・残ってるのは脱出艇ぐらいでしょ、当然だけど家財は持って脱出出来無い・・・」


「「「「「あっ!」」」」」


 ウェルムさんの部下とパインさん達が間抜けな顔してる、そうボク達の忠告を聞いてたら家財の持ち出しも軍で手伝って上げたけど、あのクソジジイが来ても家財まで脱出艇に乗せられない可能性が高い。


「一応今日明日中に着けば荷物も載せられるか、でも明後日以降だと身体一つで脱出する事に・・・・・」


「キッドの旦那・・・アンタ鬼だ!」


 パインさんが思わず呟いた。


 一応後日談だけど明後日にはクソジジイが荷物纏めて来た・・・でもボクの言った通りに軍艦は離陸してて残ってたのは脱出艇のみ、それでクソジジイあの時のウェルム少将の部下を見付けた謝り倒したけど荷物は残して脱出する事に成った。

 何て事には成らず部下の2人が融通を利かせて上げたらしい、ボクに言わせれば甘過ぎると思うんだけど、それでも荷物を減らさねば成らずクソジジイは空港の端で泣きながら荷物を選別してたらしい!




 十分余裕をもって10日ほどジョシュアさんの予想から5日ほど余裕を持って全住民の避難が出来た・・・でも爺様が送って来た専門家に調べさせたところ、まだ惑星崩壊には半月ほどの余裕が十二分に有ったそうだ。

 それを聞き付けたクソジジイが文句を言って来たけどボクが一発のボディブローで黙らせる・・・ジョシュアさんが専門家じゃ無い事も予想には十二分以上の余裕も持たせてた事も周知の事実、抑々あのウェルム少将の部下の2人がクソジジイに説得に言った時も乗船時にも説明してたのだ。


「それでも惑星一つ・・・勿体無いなぁ」


 ボクが言うけど、


「そうしない為に私達が来たのよ♪目標暴走中の地熱プラント・・・熱核反応弾用意!」


 遅れて到着したジュリアさんとロイヤルフェンサー1が最後の見せ場とばかりに声を上げる。

 クリッパーを始めエルミスⅡが数隻が熱核反応弾を用意し暴走中の地熱プラントへ、いや1つか2つ暴走し無かったプラントも有ったけど念の為に全てに狙いを定め・・・・・


「照準・・・全艦合ってる?なら行くよ♪撃てぇ~~~~~ッ!」


 ジュリアさんの号令に数十隻のエルミスⅡが掃射、各艦が大型ミサイルを何発も吐き出して地表を攻撃すると・・・命中した所からマグマの海が広がり始める。


「こう言う技術に詳しく無いんだけど・・・この攻撃で何が如何変わるのでしょう?」


 単純に判らないので聞いて見た。


「惑星が火だるまに成るけど吹き飛ば無いで済む、まあテラフォーミングは最初からやり直し、何十年単位で余計な時間掛かるけど・・・それでも惑星一つ無くなるよりマシでしょ?気の長いリサイクルって事ね♪」


 にこやかに言った。


「さてと・・・ロイヤルフェンサー3と4には最後の避難民をエンドラに運んで貰って、ジェリス艦長かジュリアさんには周囲の平定、そしてドチラかはマルドゥース子爵領・領都にボクと来て貰うけど」


「陛下の勅命を受けたのはキッド君だから、その指示に全面的に従うよ・・・でも最近ジュリアばかり楽しく暴れてる気がするんだが?」


「その時の状況がそう成ってただけでしょ?私から出しゃばってた訳じゃ無いし、キッド君が選ぶべき事よ!」


 これこれ・・・そこの二人は戦う事を楽しんでるんじゃ無い?

 でも正直考えると・・・・・


「用意が整ったら出来る限り早くミューズを助けに、それならば足の速いフェンサー1の方が・・・・・」


 ジュリアさんが嬉しそうな貌をし、ジェリス艦長は落胆するが・・・・・


「でも今回は鎮圧後にマルドゥース子爵領を取り潰さなくては成らない、ボクに事務処理は出来無いし・・・・・」


「グヌヌ・・・」


 ジュリアさんが悔しそうに声を上げる。


「今回はジェリス艦長が適任、それにアナタは伯爵だから公的な手続きも・・・」


「任せたまえ、ガチガチの軍人では無いのだよ私は♪」


 と悔しそうにしてるジュリアさんの肩を、それはもう嬉しそうに叩くのだった。

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