緒戦と本戦の間に
「可哀想に・・・あんな挑発しなくても良かったんじゃ無いですか?」
ボクは同乗させて貰ってる彼の船のブリッジで聞くと、ジェリス艦長は楽しそうに・・・
「可愛い娘は揶揄いたくなるモノさ、君だって心当たりは有るだろう?」
「そりゃ、マァ・・・・・」
心当たりが有り捲るボクは言葉を濁した。
ところで・・・このロイヤルフェンサー2の旗艦ジュリア級戦艦ラグナレクはミューズの作品で、正式名称はヴィダーシュペンスティガー級その意味をハッキリ言えば❝じゃじゃ馬級❞だ!
その為一番艦を手に入れたジェリスさんが娘の名前でジュリア級と呼称、ジュリアさんは怒ってたけど定着して仕舞ったので今更変える事も出来無い、ただジェリス艦長も悪戯だけでジュリア級と名付けた訳じゃ無いだろう。
ジェリス艦長は愛着のあるラグナレクの名とは別に、愛娘の名前を自分の乗る艦に付けたかったのだろう・・・それで帝国内でもジュリア級は広まった、まあジュリアさんだって先の大戦の英雄で艦名や艦級名に名前が付いたって可笑しく無い筈だ。
「乗ったのは初めてだけど質実剛健って感じがする・・・ミューズの方が船をデザインするセンスが良いのかな?」
お兄ちゃんとしてチョッと悔しい!
「エルミスⅡは高速戦闘に特化し過ぎてる嫌いが有るからね・・・ああ言う船は若者向きだよ」
「と言って年寄り扱いすると凹むクセに・・・」
ボクが言うとブリッジに失笑が、ちなみに一番笑っているのは言われてる本人ジェリス艦長だ!
「それよりミューズ姫は大丈夫ナンだろうね?」
「危なく成ったら逃げる様に言ってますし、最近は言われ無くてもすべき事を心得てますよ・・・如何やらイリスが妹に成った事が良い方に影響してるらしく良い成長に、ただ少し悪い事を教えてる気が・・・・・」
イリスを戦闘に加えない事はボク達の共通決定事項だけど、銃の訓練や公的機関への対応など余計な事を教え込んでる気がするのだ!
「それほど悪い事では無いだろう?それよりミーモット捕縛と領星制圧について・・・・・」
3Dで表示された星系図と領都の立体地図、立体地図と言っても地球儀みたいのが空中に浮かんでると思ってね?
「ミューズの連絡では打ち上げ準備が始まる度に攻撃してる、それで封じられてるミーモットが最後に取る手は?」
「その内イチかバチかで全宇宙港からの一斉打ち上げだろうな?」
その他の手段は無いだろう。
「それくらいミューズも分かってるだろうけど、その手段に出られたらミューズに手の打ち様は無い・・・・・」
「その手に出られたら単機のミューズ様にゃ流石に分が悪いな・・・・・」
ジェリス艦長の部下クランキー大尉も呟く。
ここから領都星まではハイパーレイを出せれば十数分、でも星系内で光速なんて危なっかしくで出せやしない、その為に超々音速と言うのかは分からないけど換算すればマッハ3000位で飛んでる!
それでも首都星までは20時間弱掛かる・・・現時点でミューズが現地に到着してから3日間、勿論一人で不眠不休してる訳じゃ無いだろうけど流石に気力も体力も心配だ。
と言っても・・・
「ダーグ達も居るし何よりジェイナス婆ちゃんも居る、ミューズが馬鹿する前に彼女がミューズの尻を引っ叩いてくれるさ」
最も最近その点はあまり心配して無かった・・・今のミューズは操船やノーダーの操縦技術だけで無く精神的にも強く成った、お調子者の所は変わら無いけど芯が一本通った様に感じる。
そんな彼女が早々馬鹿な事をするとは思えない。
「大丈夫、今のミューズは聞き分けの良い子です。もし判断謝ったら・・・・・」
ボクは思いっ切りイヤらしい顔で、いや見た訳じゃ無いけど絶対イヤらしい顔をしてると思うよ?
ミューズにもイリスにも言われてるから!
「思いっ切り痛い思いするコト知ってるからね、お尻が♪」
「このスケベ・・・」
「エロガキが!」
クランキー大尉とラムレーズ少尉がボクの後ろ頭を左右から突いてブリッジに笑いが込み上げる。
さて遊んでるヒマは流石に無いな・・・ボク達は今度の行動を擦り合わせてから各々自分の仕事に向かう、ボクの仕事はエクセリオンの整備まあ整備兵は居るけど自分の手でチェックしときたい所もある。
何せ❝彼❞の技術に一番触れて来たのはボクで、この世界にボク以上に詳しい人間は存在しないのだから仕方の無い事である。
それに・・・
「早速ですが先生・・・」
そうボクは彼等に対する先古代文明技術の先生役にされている・・・と言っても彼等は実質スパイみたいなモノ、ボクから先古代文明の技術を吸い上げファルデウスに還元し様と・・・んっ?知らん人が混じってるな?
「ボクはジョンブルソンからの留学生で・・・・・」
「私は技術交流学生としてワメリケーノから来ました」
「一応ファルデウス宇宙軍に所属し技術士官の少尉ですが、出身国はノーマでして・・・」
「・・・・・・」
頭が痛く成って来た・・・ボクはポップさんの姿を探し、格納庫の奥に居る彼を見付けると背後からソッと近付いた。
そして思いっ切り大声で・・・
「ポップさんっ!」
彼が飛び上がる位の大声で叫んだ!
「うわっ!な・・・何ですかキッドさん!」
「何ですかじゃ無いですよ!アンタこんな所で一体何をしとる・・・」
ポップさんは耳を押さえながら・・・
「何をってキッドさんのエクセリオンを整備する為に一緒に来たんじゃないですか?ラグナレクにも整備班あるけど彼等はカブリヌス専用、エクセリオンを整備させるには心許無いとミューズ様に・・・・・」
「そう言う事言ってんじゃ無い!」
ボクは整備兵を指差し、
「いくら友好国ったって最先端の軍事機密を簡単にバラ捲いちゃって良いんですか?しかもボクはエクセリオンの中見せる許可は・・・・・」
「どうどうキッドさん冷静に、そもそも彼等にエクセリオンの中身を理解出来ると思います?」
そう言って人の事を馬の様に扱いやがるポップさんは言う。
「そりゃアンタ等はプロ何だから・・・」
「イヤ私にだってエクセリオンの中身は半分も理解出来て無いですよ?そりゃ全く参考に成ら無かった何て事は有りませんけど、企画やサイズを真似た程度で・・・前から思ってたんですけどキッドさん勘違いしてますよ!エクセリオンをダウングレードして量産化したのがカブリヌスじゃありません!!ボク達が全力で必死に成って真似して造ったけど、実は全く追いついて無かったのがカブリヌスなんです!!!」
かと言って、
「それでも中身を簡単に他国に公開しないのっ!こう言うのはチラチラ見せて、交渉の材料にし譲歩を・・・・・」
「いや皆の見てる前で言ったら意味が無いでしょうに・・・・・」
呆れたようにポップさん!
「とにかくエクセリオンの中身は公開禁止、ボクの許可無くファルデウス以外の技術者には見せない事・・・おいコラそこのオマエ何写真撮ろうとしてんだ!」
男のケツは蹴飛ばし女の尻な叩きながら追い払った!
「神経質に成らなくても大丈夫ですよ・・・我々が先古代文明の域に立つ迄は、キッドさんが全ての技術を吐き出したとしても恐らく後50年は掛かりますよ最低で」
「その過程で中途半端な技術で、取り返しのつかないヘマするんじゃ無いかって所を心配してるのさ」
それで地球は数多の自然を失った。
「さてと・・・自分でも最終チェックを、んっ?」
ボクが整備用の開口部を開けようとすると・・・
「だから閲覧禁止なんだってば・・・・・」
ファルデウスの整備兵以外の人も覗き込んでて・・・・・
「神経質に成り過ぎですよ、少なくとも彼等は現在ファルデウスの軍人です・・・ほらパイロットは休息してて・・・・・」
結局ポップさんに追いやられてしまった。
阻止て彼等は他国の出身者と一緒に各部ハッチを開けて結局中身を見せながら、一応整備は終わってるらしくポップさんが講義をし始めた。
「アイツ・・・そう言えばファルデウスのみならず同盟国も技術のランクアップとか爺ちゃんが言ってた、ボクが多少反対しても押し切る気だったなクソジジイ!」
「そう言ってやるな陛下も考え合っての事さ」
薬草茶のボトルを持ってジェリスさんが声を掛けて来る。
「先ほどの敵ノーダーを分解し解析中だ・・・ただ大体の見当は付いた、造ったのはファルデウスの地方企業だな」
分析された資料をタブレットに掲示しながら、
「キッド君の人気にあやかって人型機動兵器を真似して造った。でもエクセリオンはおろかカブリヌスにも及んでいないがね・・・・・」
「それでも数を揃えて一斉射撃されたら迷惑だよ」
人間は自重を超えた兵器を携帯出来無いし、自分の身長の倍だって満足に飛び上がれない、更に手足の一本を失えばThe ENDって事に成る。
ノーダーは速度に影響が出ない範囲で自重と同じ重さの兵器を搭載出来、バーニアスラスターを吹かせば軽く数十メートル・思いっ切り行けば2~300飛び上がれる!
その上コクピットさえ無事ならパイロットが帰投したら新たなノーダーで出撃可能、所詮ノーダーにとって腕脚の一本二本は消耗品で帰還したらスグ交換出来る。
そして何よりノーダーは限りなく人型に近い・・・地球の文明では人型の機動兵器など空想の産物、実現出来ても無駄この上無い軍人の玩具だろう。
でも先古代文明のレベルまで文明が発達したなら話は別、そもそも(補助的には使うけど)両手で操縦してる訳じゃ無く自分の身体の様に考えただけで動く・・・本当に自分の身体が大きく成っただけなのだ!
「もうちょっと文明が発達しちゃったらAIが自立捜査してパイロット要らずに、大きさも人位に成ってノーダーも過去の遺物に成ってくんだろうな・・・・・」
「いえ逆です・・・進化して人が操縦する様に成り、いったん巨大化してサイズダウンしてったそうです?」
講義を終えたポップさんが来て語る・・・半分の生徒はエクセリオンの整備に、もう半分の生徒はポップさんに付いて来る。
「生徒って・・・」
「さっき堂々と留学生名乗ってた奴が居ただろ!」
「私は学制任官した立派なファルデウス軍人ですよw」
若い女の子の整備兵が言った。
「思いっ切り終わったら母国に技術を持ってっちゃうと言ってる気がする」
「人聞きの悪い・・・ファルデウスが公認してる範囲内でですよ」
「その点は確り脅されてますから・・・許したもの以外、必要以上に持ち帰ろうとしたら一生ファルデウスから出られ無いぞって」
「あの時の陛下は怖かった(笑)」
ちょっと待て?
「留学生が陛下と直接?」
「入国時にお会いしましたよ?友好国と言えスパイ行為しても、キッドさん御手製の真偽解析装置にかけてから帰すから嘘は効かんぞと」
態々皇帝自ら脅しをかけるなよ!
それより・・・
「ポップさん、先っきの話ってダーグから聞いたの?」
「えぇ先古代文明は最初、人間と同じサイズのアンドロイド兵を造ったんだそうです。でも人工知能と折り合い悪くて望んだ判断してくれ無いし反応も遅い、そもそも兵器の積載量も機動力も不足してたらしくてノーダー(彼等はノーダーとは呼んで無かったけど)を開発・・・当時のノーダーは身長が20メートル前後有ったそうですが段々小型化して10m強に、そして❝彼❞の技術とキッドさんの手で半分に成って今のサイズのノーダーに・・・・・」
「本当にガ〇ダ〇と同サイズだったんだな・・・・・」
確か18mだっけ?
「その大きさが十分な兵器積載量と機動力を確保するのに必要だったそうですよ、それを実戦データや技術開発で・・・でも最終的には12メートル以下に出来無かったそうです」
滅んじゃったからね・・・いやダーグとサンティアラで生き残った子供たちがいる。
彼等は生き延びたんだ・・・・・
「ニュースに流れたエクセリオンを無理に複製し様としなければ良かったのに・・・そうすれば、もう少し大きくても満足な性能に・・・・・」
まあボクも戦って思ったけど、それに敵に対して言うのはナンだけど劣化コピーも良いトコロだと思う。
技術も無いのにエクセリオンと同等の人型戦闘機を造ったのだから仕方無いけど、もっと高性能な機体が造れなかったのだろうか?
ただソレでも搭載してる火砲は本物、撃たれて当たったらタダじゃ済まない!
「じゃあ交代して今度はオマエ等が見学を・・・」
「だから許可して無いんだけどな・・・」
思いっ切り不満そうに言ってやったんだけど、
「キッドさんが本気でイヤなら・・・当てない迄も自慢の炸薬式拳銃を、この場で一発ブッ放してる筈でしょ?」
うん間違いなく撃ってると思うw
「じゃ許可は貰えてると言う事で・・・チョッとキッドさん危ないから銃をコッチに向けないで!」
顔色を変えるポップさんに隣で笑いを我慢してるジェリス艦長、しかし今更禁じても意味は無く半分の整備兵は見ちゃってるので仕方なく黙認・・・
「後でジジイに文句言ってやる!」
「へそを曲げるから止めて欲しいのだが」
そう言うと休憩スペースから整備の様子を見ながら・・・・・
「さてと・・・アレが終わったら君も乗機のチェックをするんだろう?到着には余裕が有るから飯を食って少しでも寝て置くんだ」
「気分的にグッスリは無理だけど時間は十分ありますよ、まだ到着には19時間・・・」
するとジェリス艦長の眼が冷たく成った様に見得た。
「出来る限り急がせる・・・最低でも5時間は縮めて見せるさ」
「何が有ったんです?」
ジェリス艦長は溜息を吐きながら・・・
「正直ミーモットが相手ならキッド君の敵では無いと、まして鉱山惑星崩壊の救出に我々ロイヤルフェンサー全てが駆け付けたのだからと油断してたな・・・一応反逆した家の血族で首都星ミューズから最も遠い星系に領地替えしたのだから孤立すると考えてたのも悪かった」
「オイオイまさか・・・」
ジェリス艦長の言葉にボクは思いっ切りイヤな考えに思い当たり思わず呟いてしまう。
「多分キッド君の予想は当たりだ」
「嘘だろ・・・諸外国からの応援ですか?」
思わず天を仰ぐ・・・確かに落ち目のマルドゥースと甘く見てたし油断もしてた。
だが流石にボクも外から介入が有るとは思わ無かったし、ミーモット・マルドゥースを助ける見返りが有る様には思えない。
「吹き飛んだ後の鉱山惑星の採取権(吹き飛んだ後は採掘じゃ無いモンね)が狙いか?イヤそんなの態々他国に奪いに来無くても自国で開発するよね?友好国に乗り込んで来る馬鹿は居ないだろうし攻め込んで来たのは敵対国だろうけど、そこまでして迄ミーモットに助ける値打ちが有るのか?」
失礼だけど本気でそう思い、
「ジェリスさん、攻めて来たのがドコの国か何て・・・・・」
「方角的にはノーマだけど友好国の上に宗教国家、考えるのは難しいかな?」
現段階で絞るのは難しそうだね?
「まあ相手は間違いなく認める筈が無いけど戦闘後に捕虜や鹵獲艦から情報を得る事は出来るだろう・・・可能性が高いのはノスモーかヴィエンド、低いけどファルネドも有り得るし何ならヴァイラシアンの残党だって有り得るだろう」
「しかし吹き飛ばなかったけど鉱山惑星一つ分の資源に、国境を越えて来る迄の値打ちあるかな?」
「オレの元母国なら来かねないけどね・・・他国の物でもチャンスが有るなら、イヤ間違い無く奪いに来る自身が有る」
パインさんが言う、ほんとヴァイラシアンって碌な国じゃ無かったんだね?
「元々マルドゥースは正直に言ってファルデウスでも皇室に次ぐ力を持つ貴族だったけど、先の大戦で見る影も無いほど力を削がれ今や弱小貴族の一家に過ぎない・・・まぁ元公爵様ナンだから皇室に連なるモノだし」
「そんなマルドゥースを国境を越えてまで助けに来る国が有るか・・・ちょっと考え難いな」
ジェリスさんとパインさんが首を捻るが・・・
「国じゃ無い可能性は?貴族の独断とか財閥や企業とか・・・」
「国境から来てる艦隊は3万近い・・・貴族でも単体じゃ無理だろうし資本主義国の最大財閥や企業なら規模的になら可能だけど、そう言う国は大抵は民主国家で敵対国に軍を進める事は簡単には出来無い筈だ」
ココさんとクランキー大尉も話に加わった。
「なら何処なら可能性が?」
「簡単さ・・・逆に考えれば良いんだよ。助けに来なければ成らない程の弱みが有る、もしくは来ざるを得無かった状況にある人達を・・・あくまでボクの想像だけど一つ思い付いちゃったよ」
皆の眼がボクに集中し
「何か心当たりが有るの?」
とココさんに聞かれる。
「一つね・・・今思い付いたけど結構良い線行ってるんじゃ無いかな?」
そう言ってハーブティーを飲み干してエクセリオンに向かいながら、
「案外ミーモット救出じゃ無く証拠の隠滅に来てるのかも?来てる連中がフレッド達の母親姉妹を買おうとしてた馬鹿どもならばさ・・・しかも敵は単一じゃ無く買い手の連合なら3万用意する辻褄も合う」
この推理には自信が有る・・・それならば証拠隠滅ついでに、もしかしたら奴隷を攫いに来てるのかも知れない!
「チェックが終わったらボクは寝るね・・・接敵一時間以上前には起こしてて貰えると助かります」
この状況じゃ眠れないから眠剤を使う、自分で起きる事は出来無いから誰かに起こして貰わないと・・・・・
「いよいよと成ったらドーピング薬使うから配って置いて、それと軽食の用意もして貰えると・・・・・」
ミューズが言うとイリスが軍人っぽく敬礼しながら・・・・・
「最悪戦闘中にも食べられる様にサンドイッチが良いかな?それともお兄さま直伝のオニギリを・・・・」
「私はオニギリが良いな・・・・・」
ダーグが答えた。
さて・・・
「これが来ると解ってたからの籠城戦か・・・敵勢力は3万弱、スターシップの能力なら然程恐れる相手じゃ無いが・・・・・」
ミューズが首を横に振る。
「私・・・艦砲で敵を狙い撃って撃沈するだけなら自信が有るけど、操船しながら戦うだ何て流石に❝お兄さまの様❞には出来無い」
あのエロガキが此処に居たなら弱音を吐くなと言いながら嬉々としてミューズのお尻を叩きに来る、でもソレは巫山戯てるだけで本気で怒ってはいないジャレに来るだけだ。
実際には叩かずに撫でるだけに留めるだろうね・・・ミューズが吐いてるのは弱音じゃ無く事実なのだから、私の知る限りミューズの操船の腕前は一流それも頭に❝超❞の字を付けてやってもいい位だ。
だけどキッドの奴と比べたら幾ら何でも可哀想・・・あの子はチョッと測り切れぬハッキリ言えば異常な操船をするから、もう大分慣れたけどキッドの操船は同行するだけで死の覚悟がいた位だからね!
全く・・・いくら軍用で最低限の緩和能力しか無かったからと言たって、対G緩和システムが効かない操船って如何言うレベルだよ!
と言っても実際は効かなかった訳じゃ無く、効いても私達が死ぬ程のレベルで振り回されただけ体感出来るほどGを緩和し切れなかったのだけどね!
この船に乗る事を決めた時にワイズマンズライブラリーを覗き込んで、思いっ切りオーバースペック気味の奴を造ってコッソリ搭載した・・・まぁ後にイリスが乗る事に成ったんで積んで良かったと思ったけどね!
「あのねぇミューズや、この中じゃほゞ全員が操船出来るしダーグとアイギスそれに私は一流の腕を持ってる。それでもアンタに適う腕の持ち主は一人もいない、ミューズは間違い無くファルデウス軍を含めても超一流の操船技術を持ってるさ!でもキッドと比べたって無駄な話だ・・・あの子は異常なんだよ、比べる方が間違っている」
皆がクスクス笑っている。
「私を含めて4人がですか?」
軍人は訓練記録で比較出来るけどミューズは軍人じゃ無いし比べた事が無い、その所為か自分の評価が著しく低く成ってる・・・けど自分の事は自分が一番知ら無いとは良く言ったモノだ。
「キッドの居ないスターシップで比べるなら一番操船が上手いのは間違い無くミューズだ・・・ファルデウス全軍を一緒に比較しても間違い無く上位3%に入ってるさ!次いで私・・・その次がダーグだろうね」
ダーグの奴が不満そうな顔をするが、
「戦闘に成ったらオマエさんの方が上だろうが操船技術だけならマダマダ負けん、これでも伊達に造船作家だと名乗っていない・・・戦闘だって熟し十二分に体験し船を造ってるんだよ」
そう言われて言い返せなくなる。
「それにノーダー戦だって技術だけならミューズが上さ・・・でも実戦では当然ダーグの方が上、何せ年期って奴が違い過ぎる」
「それでも恐ろしい程の逸材ですよ、私もうかうかしてられん」
ミューズが少し得意そうに言った。
「一方ジョシュア達は一応基本は押さえてるけど戦闘機乗り、イーグルを操縦する事は一流でもスターシップなど艦の操船は2流に留まる。ファルデウスの軍人も同じで得意分野は肉弾戦だしイメンケやアノンは情報戦や破壊工作が専門だ・・・要は適材適所なんだよ」
私は言いながらキッドに貰った喫煙具❝煙管❞を劣り出すと、空気清浄機のドローンが頭の上に来て私の吐き出す紫煙を吸い取って行く。
「他の奴等に迷惑に成らない程度に、もっと空気の吸入を押さえられ無いかい?煙草は残った煙の香りも楽しむモノなのに・・・」
と言うとドローンの換気量が調整される。
「頭の良い子だねぇ」
「私も失礼しますね」
イメンケも紙巻きタバコを出した・・・こう言う喫煙具を使おうとするとキッドが驚く、未来的な世界では電子式の喫煙具が発達してると思ってたそうだ。
彼の世界では走りの物が出てたらしいし、コッチの世界でも過去そう言う物が出回ってたけど私に言わせれば風情が無い・・・こう言うのは道具や雰囲気すら味の一部だってのにね!
「さてと・・・話が脱線したけど、諸外国の馬鹿が来る迄には・・・・・」
「十数時間・・・それに合わせて奴等も打ち上げて来る」
「その前に地表からの攻撃も有るでしょうが、今一番懸念しなくては成らないのは敵増援と交戦中にミーモットの軍が領都の重力圏を突破し私達の背後を突く事だと思う」
私の言葉にダーグとミューズが続いた。
「かと言って一旦でも我々が撤退すれば、その隙にミーモット・マルドゥースは逃走を図るでしょう。そのまま逃げられては・・・」
「だからと言って負け戦やる訳には行かないだろう?お前が死んだら間違い無くキッドは暴走するよ、自分を傷付けながらね・・・・・」
正直そうなるか解らないけどミューズへの脅しとして、この位は言っておいた方が良いだろう。
「でも逃がしたく無いと言うミューズ様の気持ちも分かりますよ、逃げられたら逃げおおせる可能性も少なくありません」
「意外だね・・・オマエがキッドを怒らせかねない提案するだなんて?」
発言したのは殺し屋だ・・・コイツは何故かキッドを気に入って、まぁその点じゃ私もイメンケも同類だけど殺し屋はやたらとキットにヘコヘコしてる。
「そりゃミューズ様を危険な目に合わせたら殺される位ならまだしも、最悪スターシップから叩き下ろされます。でも戦闘をする以上は全くリスクが発生しない訳でも無いでしょう?」
コイツさり気無く死ぬより退船させられる方が最悪と言い切ったよ。
「ミューズ様は私の事を信じてくれますか?」
「お兄さまの命を狙った殺し屋さんだけど、お兄さまが許した以上は私に口出す気は有りません・・・お兄さまの命をマタ狙うと言うなら話は別ですけどね!それにお兄さまが船に乗せた以上は信用に関しても・・・・・」
ミューズも結構度胸は有るんだよね・・・・・
「今更キッドさんを再び狙うなんて事はしませんよ、これでも恩は忘れない主義で・・・それに正直今なら解るんですけど私ごときじゃキッドさんの相手に成らない、キッドさんは殺し屋として私の事を評価してくれてますが彼は自分の評価が低いですよ」
キッドは少なくとも、あの時点ではアノンの方が対人格闘戦は上だと公言してた。
「それより如何でしょう・・・一つ良い案が有るのですが、これは危険度は低いまでもキッドさんは間違い無く怒る案です!具体的に言えばミューズ様はオシリを真っ赤にして泣く事に成るし、私は少なくとも3日は動けなく成る位の関節技を食らってお仕置きされてしまうでしょう」
「それはチョッと、イヤかなり嫌な案ね」
ミューズにとってキッドのお尻ペンペンほど嫌なお仕置きは無いだろう。
それでも叩かれながらじゃれ合ってるんだけどね!
「その代わりに間違い無くミーモットを逃がさず、キッドさん達の前に引っ張り出す事が出来ますよ!しかも国外からの増援艦隊を一緒に・・・・・」
それは可成り魅力的な案、ミューズの奴も思いっ切り考え込んでる・・・今この船のトップは船長代理のミューズだから、私は助言しても最終的は決定権は彼女に有る。
「キッドさんより増援の方が、いや増援では無くミーモットの口を封じに来た可能性の方が高いでしょう・・・ここに来るのは奴等の方が早い、それをもっとキッドさん達の近くに誘き寄せる事が出来ます。それが利点、デメリットは成功してもキッドさんからタップリ叱られ・・・・・」
「アノンさんが言ってる様に私達の危険が低いなら・・・・・」
するとアノンは、
「この侭この場で戦うより確実に・・・いえ何なら増援が無くてミーモットとだけ戦うより危険は低い、それと叱られる時は私もお供して一緒にお仕置きされますから(笑)」
まあアノンのケツ叩きは無いだろうけどね!
「解りました。その策とやらを聞かせて下さい、それを聞いて決める事に・・・・・」
「それでは・・・・・」
アノンが長々と説明を始め・・・・・
「ねぇアノンさん・・・そんな作戦、本当に成功すると思ってる?」
「勿論ですよ私の前職は御存じの筈で・・・」
うん・・・お茶を入れて持って来たくれたイリスの耳をアイギスが即塞いで、この場に居るアノン以外が皆が放心しながら呆れ果てていた。
「前職にして無いでしょ!お兄さまに不足分はバイトでって・・・でも殺し屋さんが何で関係するの?」
「殺し屋の優秀か無能かを決めるのは情報収集能力と相手を見抜く目❝観察力❞です!それが有るからこそ目標の警備の裏をかき、裏切られて無いか見抜きターゲットに接近して逃亡出来る」
「そう言う事を自慢げに語るんじゃない!」
私がどやしつけた!
「まぁミーモットの奴は鉱山惑星の総督と同じ種類の人間、そして恐らく奴の味方する様な奴も同類でしょう・・・口を塞ぎに来る相手だったとしても、割と成功率は高いかと思いますよ!それにマダ周囲には忠臣と言える様な配下もいない筈、ついて来た腰巾着と搔き集めたチンピラしかいません」
まあ考える頭を持った奴なら余程の恩を感じて無い限り皇帝に睨まれた家に付いて来る筈も無く、抑々そんな恩を感じて貰える程の徳など持ち合わせて無いだろう。
「さぁ如何しますか?」
「う~~~ん」
ミューズは可愛らしく悩んでたけど、
「お尻叩きが怖くて、お兄さまの相棒が務まるかっ!良いでしょう私のお尻が真っ赤に成っても、ミーモットの奴を釣り上げて見せる!」
「その意気です!私もキッドさんの関節技で軟体動物の様に成ってお付き合いしますから・・・」
私も深々と溜息を吐きながら・・・
「いい加減におし・・・それしか良い手が無いんだからキッドだって叱りはしない!ミューズも安心をおしよ」
「ホント?本当にそう思います?」
ミューズが喰い付いて来たので、
「あぁ間違い無くキッドはオマエ達を罰する事は無い・・・罰する事は無いが・・・・・」
私は嘘は吐きたく無いから本当の事を言った。
「罰は無いけど意地悪はされる!それも結構ハードに根深く・・・これだけキッドにとって面白く無い事をされちゃあね!」
「それじゃ同じだよ~~~っ!」
ミューズは叫んだ。




