チャラ男の攻撃
「ん……」
目が覚めると、賀奈子さんの別荘の私の部屋にいて、疑問に思った。
(あら…私さっきまで……)
そこで私は固まった。そうだ、そうだった。私はさっきまで露天風呂にいて、悠仁に見つからないように息を潜めてたら、長湯でのぼせて……。
(……え?)
そこからの記憶がない!悠仁はあれからお風呂を上がったの?上がったのよね?バレてないわよね?
じゃあ、私を運んだのは誰よ。
そう考えると、私を見つけたのも、私を運んだのも、悠仁だとしか思えない。
いや、まだそうじゃない可能性もあるはずだ。賀奈子さんが覚醒して私を運んだのかもしれないし、悠仁が気づいてない可能性も…。
ちょっと待って。彼の特殊能力ってなんだったっけ?…………もしかして私が隠れていた時から彼にはバレてたのかもしれない。
あ、もう考えるの嫌になってきた。今何時?あ、もう夕飯は食べたんだっけ?……ダメだ、現実逃避はやめよう。
「あ、玲花チャン!起きたんだ。良かったぁ~……」
いきなり悠仁に抱きつかれた……。
(は?ちょっと、なにしてんのよ)
心ではそう叫びながらも、悠仁には言えずにただ黙って抱きつかれていた。こんなの、ダメなのに。悠仁なのに。私はこんなチャラ男に絆されてしまったのか?
悠仁のお風呂上がりのボディソープのような匂いが、彼の匂いと共に香ってきて、我に返りベリッとはがした。
「玲花チャンひどーい。もう、俺心配したんだからね」
そう笑顔で私に言ってくる彼に、もうどうしたらいいかなんて考えるのをやめていた。悠仁がいるだけで、笑顔になれるなんて、私はどうかしている。
……運命って怖い。
まだ決まった訳じゃないって、何回言ったら分かるのだろうか。私の晴樹の方が……って比べるものじゃないわ。
(…混乱してるのね)
私はため息をついた。私を悩ませる彼は、未だにへらへらと笑っているので、みぞおちに一発決め込んだ。
これくらい許して。
「もうー、俺が玲花チャンを助けたのに」
口を尖らせながら言う悠仁。それさえも様になっている彼が恨めしい。……これ、何回目だろう。もう、こいつは国宝級のようなイケメンなんだから、妬むのは諦めないと。
こんなことで苛ついてしまうのも、全部登場人物を美形にし過ぎた晴樹が悪いわ。私の悩みは二人の事ばかりだ……。
ストレスで血を吐いたらどうしてくれんのよ。……もうあんな苦しいのは嫌だ。
「……ありがとう。でも、私の…は…見たことだけは許さないわ」
「え、なんて?」
絶対分かってるくせに、ちょっとニヤニヤしながら聞いてくる悠仁は悪趣味だ。
「もういいわ!!」
「見ないように隠したし、エロいなとか思ってないから!!」
(ならなんで私の胸を見てるのかしら……!!)
両手に力を込めながらも、我慢した。くそう、この、栄養が胸に片寄ったチビめ…。
自分の体に悪態をつきながら、未だ必死に言い訳している悠仁を見ていた。
「いや、食べちゃおっかな?って一瞬思ったけど、俺には大事な人もいるし、玲花チャンに失礼だし、さすがにまだ中学生だしって押しどまったんだよ!」
うわ、引くわ。私は自然とそう思った。でも、一応そんなことを考えていたんだな。
どちらも転生者とは言え、忘れそうになるかも知れないけど、私達は中学生だ。12、13歳は、紛れもない子供なのだ。
私の意識がない内に襲うとか言うことをしないのがいいと思う。考えてることは最低だけど。
晴樹だったら絶対にそんなことはしないだろう。ええ、しないと言いきりたい。心では思ってたかもしれないけど、晴樹は紳士なのだ。
「あっそう、もういいわ。部屋から出ていってくれる?」
「はーい…すみませんでした……」
もうしませんと言わない辺りが悠仁だな、と感じてしまう。もう二度と露天風呂には入らないと誓った。
ピシャン!
いきなり襖が開いて、賀奈子さんと、碧に抱えられた美月さんがいた。
「良かったですわぁ……。意識が戻しましたのね。さぁ、エロ男はさっさと出ていってくださいな」
「そうですよ、玲花さんが困ってます」
私の唯一の女友達が悠仁に反論していた。家にいてもにぎやかで楽しいけれど、賀奈子さんの別荘も、悪くないなと思った。
「ちぇー…玲花チャン、お休み」
チュッ
(ーーーーーー!!!!!)
蕩けるような笑顔と共に、首筋にキスが施された。
「こ、こ、この!チャラ男が!!出ていってーー!」
私は凄まじい勢いで悠仁を追い出し、襖を閉めた。
こんなの、ずるいと思う。ドキッとしてしまったではないか。私は恋愛に詳しくないのだ。そう言うことをされるのは弱い……。悠仁は、本当に、私の心を揺るがすのが得意で。
別荘での彼は、いつもより大胆な気がするのは、間違いではないだろう。
気を引き締めなければ。
「はぁ……、大変だな。玲花も」
「頑張ってくださいませ、玲花さん」
「そうですよ、では、私達は部屋に戻りましょう」
賀奈子さん達はそう言って部屋を後にした。
私は三人が見えなくなるまで手を振ると、布団に潜り込んだ。
(もう……)
「あああぁーー!」
彼にキスされた首筋に、まだ熱を感じて、一人悶え苦しんだ。
お読みいただき、ありがとうございました。別荘編もう少し続きそうです。




