眼鏡は掛けていません
包帯も取れて松葉杖も要らなくなった今日は、賀奈子さんの別荘で遊ぶ日だ。つい最近私が倒れてから少し延長になってしまったんだけど…、今日がその延長の日で二泊三日で遊びまくるらしい。
詳しいことはまだ聞いていないけど、水着と浴衣があったら持ってきてと言われているので持っていく。一体何に使うのか分からないが。
スマホもないと大変だろうから持っていって、指輪もいつも通りチェーンで首からかけておこう。
パジャマと替えの服も持ったし、眼鏡はもしもの時のためにもう1つ持っていって、体育祭の時の事が今でも心にグサッと来るので生徒手帳も。
あとはお気に入りの本でも持っていこう。あ、お財布も一応持っておこう。お金は二十万くらいあったら大丈夫なはず。足りなくなったらカードを使おう。
これで何も困ることはないだろう。よし、あとは車を待つだけだ。それまではリビングに居よう。
いきなりだが、今私が来ている服は玲奈姉様が用意してくれた。膝丈よりも少し長いくらいの深緑色のワンピースで、したの方がフワッとしていて、花と蔦のような刺繍がされている。私はあまり派手なものや色は好きではないので、(この髪は仕方がないけど)玲奈姉様のチョイスにありがたく思う。
でも私が希望したところが全てこのワンピースに入っているからもしかしたらオーダーメイドなのかもしれない。生地が高そうだし。
しかも、今日は紙を三つ編みにして、横でながしている。
リビングにつくと言わずもがな、ワンピース姿の私に興奮した二人は写真撮影会を開始した。今日は気分がいいので、くるっと回って淑女の礼。あまり使うことがないので今使ってみた。
「可愛い」
「マジ天使だわ」
二人のテンションがもっと上がってしまったのでもうしない。
「眼鏡外した方が可愛いのに……」
「どちらも可愛いけど眼鏡がないのも見てみたいな」
二人が私をじっと見つめてきた。そんなに眼鏡が似合わないか?私似合っていると思うんだけど。このワンピースには若干あってない?でも、せっかくこんなワンピースを着ているんだったら似合わないと笑われたくない。
(でも眼鏡……)
こんなときになって黒色の似たような眼鏡しか集めてこなかったことに後悔した。
「玲花僕達に心配かけたんだし…いいのかなぁ、前回のこと、二人に報告してないのに」
うっ……お父様とお母様に知られるとどうなるか分からない。あの二人もちょっと過保護なところもあるし。もう、ここは折れるしかないな。替えの眼鏡も入っているし、眼鏡が恋しくなったら掛ければいい。
眼鏡離れをしなくては。
「はい、分かりました。取ります」
私が今つけている眼鏡を外すと、二人は
「久しぶりの眼鏡無し玲花!」
「神々しい!」
と発狂しながらこの世のスピードとは思えないほどの早さでカメラを連写していた。さらに日に日に早くなっていっているのが恐ろしい。いつかカメラが壊れると思う。
ピンポーン
玄関のベルがなった。賀奈子さんの車が着いたのだろうか。
「はーい」
ドアを開けると、案の定賀奈子さんがたっていた。
「玲花さん、いつもよりも大人っぽくてセクシーですわ」
「ありがとう」
賀奈子さんに誉められると本当のような気がして嬉しい。まあ乙女ゲームの悪役令嬢な訳だから綺麗じゃない筈がないんだけど。うぬぼれではない。
玲花は悪役令嬢なのにも関わらず綺麗な顔立ちに垂れ目の大きな瞳。長い睫毛。白い陶器のような肌。小さくても玲花はお色気系の悪役令嬢で男を虜にしていたのだから。
「さぁ、車に乗りませんと。私の車には美月さんも乗りますから迎えにいかないといけませんから」
「悠仁や碧は?」
「違う車ですわ」
まぁ、女子だけの方が安心ではある。密室で何をされるか分からないし(主に悠仁と言うか悠仁しかいない)……。
私達は車にのった。
お金持ちの車なだけあって、中はとても広かった。大画面のテレビもついていて、さすがだなぁと思った。
仲良く雑談していると、美月さんのいる病院についた。
「行きましょう」
病室のドアを開けると、準備満タンな美月さんがたっていた。
「おはようございます」
車椅子に乗っていたので、賀奈子さんがひいて、車にのった。
意外に賀奈子さんが力持ちで驚いた。私は使い物にならないから却下。
「眼鏡はどうしたんですか?」
「ちょっと、気分転換よ。視力、悪いわけでもないし」
「こっちの方がいいですわ!玲花さん眼鏡で近寄り難いオーラを醸し出していますし」
それは知らなかった。いっそのことこれからも眼鏡を無しにしてみようかな。…少しずつだけど。
「三つ編みもとても似合っていますよ」
美月さんのエンジェルスマイルは強い。今さらだけどあの車椅子折り畳みだったんだね。
「あと少ししたら、目的地に到着しますよ」
これから賀奈子さんの別荘で過ごす三日間が、楽しいものでありますように、何も起きませんように!
お読みいただきありがとうございました。




