調子に乗りました
終業式も終わり、今日は夏休み初日。私はせっかくの長期休みだから夏休みの宿題を終わらせている。
こう言うのって早く終われば終わるほど達成感があって、京子の時からの楽しみなのだ。
あの時は晴樹がいて、凄い早い時間から遅い時間まで勉強をやり倒そうとする私を止めてくれたけど、今は晴樹もいないし、せっかくだからと言って調子に乗っている。
だから昨日は午後10時に寝て、今日は午前1時に起きて、それからひたすら勉強をしている。…朝ごはん、食べたっけ?今は午後2時くらいだが少し頭がふらふらしてきたかもしれない。
京子もそうだったけど、玲花もそんなに体は丈夫ではないらしい。
でも、勉強が楽しすぎてやめられない。誰か分かるかな、この気持ち。
(まぁ、今日くらいいいわよね)
そう思っていたら、ドアがノックされた。
「どうぞ」
入ってきたのは軽食を持った玲奈姉様だった。
「玲花、……引きこもっちゃってどうしたの?」
心配されてしまっている。……大丈夫なんだけどな。心配されると、少しむずむずしてしまう。
「大丈夫ですよ、玲奈姉様」
「これ、私が作ったのよ。玲花はこの家のなかで一番貧弱なんだから、食べてちょうだいね。……今も倒れそうなくらい顔色悪いし」
(そんなに?)
気づかなかった。まぁ、軽食を食べたら元気が出るだろう。
「大丈夫ですって。軽食、食べますね」
「じゃあ……いくわね」
あんなに普通な玲奈姉様は久しぶりに見たかもしれない。常にハイテンションだから。でも、玲奈姉様をこんなにさせてしまったのは私?
……そんなわけないか。
私は軽食を食べつつ勉強を再開した。こんな時間にいきなり食べたものだから、少し気持ち悪かったけどあの時に比べたらどうってことない。
そんなこんなで勉強を進めて、あと少しで宿題が全部終わる。明日は復習をしようかな。……やっぱり勉強って楽しい。長期休み最高!!
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「終わった!!」
いきなり大きな声で立ち上がったせいか、眩暈がして危うく倒れるところだった。
(危なかったわ)
今は何時だろう。時計を見てみると、時刻は午後10時だった。もうこんな時間か。お風呂に入って寝よう。明日も早起きして勉強してもいいわよね。……明日でお仕舞いにするから。
(……何に話してるんだか)
まぁ、そうと決まれば早くお風呂に入ってしまおう。ドアを開けると廊下にまだ光が灯っていて安心した。
お風呂に入ると、また眩暈がしたけど寝れば治るからほっておく。でも、我が儘を言っていいなら、もう少し体の強い人に生まれ変わりたかったなんて思ってしまう。
「玲花、顔がいつにもまして真っ白だよ」
部屋に戻る前に、幸人兄様に言われた。
「大丈夫ですよ、幸人兄様」
「……僕は玲花が心配で仕方がないんだ。ただでさえ体が強い方じゃないのに」
幸人兄様までそれを言うのか。さすが兄妹。
「今から寝ますから、治ります」
「僕はそうは思えないんだけどな」
変なところで勘が鋭いな。
「勉強が、楽しいんです」
私がそう言うと、幸人兄様はため息をついて
「早く寝るんだぞ」
と言って頭を撫でて部屋に戻っていった。……やっぱり私には甘いな。私の、優しい兄様。私の、大切な家族。
京子の時に、失ってしまったもの。家族っていいなと実感する。私の事を大切に思ってくれる貴重な家族。……素敵だ。
(でも、ごめんなさい兄様。私は罰当たりです)
本当に、明日でお仕舞いにするから、許して下さい。
罪悪感で心がいっぱいになりながらも、私は眠りについた。目覚ましは1時に設定した。
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ピピピピ
(うるさいなぁ……)
重たいからだを動かして、目覚ましを止めた。時計を見ると、驚くことに午前5時。なんでこんなに遅いんだろう。まぁ、いい。
「さぁ、今日も勉強をしよう」
シャーペンを握ったとたん、酷い頭痛に襲われて、私は倒れた。
(……なんでこんなに体が弱いの……)
まだ意識は失っておらず、少し安静にしていれば収まるはず。
そんなときにスマホから電話がかかってきた。
(何…こんなときに)
床に落ちているスマホを手で引き寄せて、誰からの電話か見てみると、『チャラ男』と出ていた。
そう言えば悠仁に電話番号教えてもらって、リストにいれたんだったわ。その時に私も教えた気がする。
「……な、に」
『……やっぱりね。』
『お兄サンに聞いたけど、勉強をし続けたらしいね。今頃倒れてるんでしょ』
(悠仁はエスパーか)
「…ちが……」
『本当、お馬鹿さん。俺、今から玲花チャンのところにいくね。ほっといたらまたやらかしそうだし。俺一応婚約者だしね』
「こな……で」
『無理でーす。いくからね!』
ここで電話がぶちっと切れてしまった。はぁ、幸人兄様は過保護だった。好きだけどね。大好きだけどね。
「……はぁ…」
何でか知らないけど、ここで意識が途絶えてしまった。……持ちこたえてよ……。
お読みいただきありがとうございました。




