迷子じゃないんですけど
今私が向かっているのは、屋根がある日陰のテントだ。どうしてそんなところへ行くのかと言うと、幸人兄様と玲奈姉様が協力して作った弁当を食べに行くのだ。
お気づきかもしれないが、今はお昼休憩。しかも、今回は碧と美月さん、さらに賀奈子さんもいるからウキウキだ。でも、借り物競争の時に眼鏡を悠仁に取られたせいでなんだか落ち着かない。
それに、悠仁に「姫様抱き」をされたとき、悠仁から懐かしい匂いがした。一瞬悠仁が晴樹に見えて、ついに私は幻覚まで見えるようになってしまったんだと思うことにして逃げた。
悠仁は、もしかしたら…なんて都合のいいことを考えてはいけない。たまに、垣間見える晴樹のような仕草で、ドキッとしているのも……たまたまだ。そう、たまたまだ。
(大事なことは二回いっておけとか言うじゃない)
「それと…さっきから気になってるんだけど、どうして私についてきているのかしら?」
私は後ろにいるチャラ男に言った。
「あれ~?ばれちゃったか」
(何があれ~?よ!)
「私はどうしてついてきているのって聞いているのよ」
私がイライラしながら言うと、悠仁は口を尖らせながら、
「皆がお昼一緒に食べてるのに、俺だけ仲間はずれなんて悲しいじゃんか」
子供か!
まぁ、私達は中学生だし、まだまだ子供なところもあるか。悠仁にもそんなところがあったなんて、…意外だ。
(ちょっと待って)
悠仁は転生者だった。と言うことは精神年齢が三十路の男がだだをごねてるだけ?…うぇっ、気持ち悪い。
「ちょっと…半径五メートル以内に近づかないでくれないかしら」
「えっ!玲花チャンひどい!」
「じゃあ眼鏡返して」
「無理!」
…どうしろと。
もう、この人に何を言ってもダメだ。この時間も惜しいから、早くテントへ急ごう。私は人混みに若干もまれながら、テントに向かった。
「お嬢ちゃん迷子なのかな?お姉さんと一緒に本部テントに行こう?」
なに言ってるんだこの人。私が小さいのは分かるけど、ここまで来ると心がえぐれる。くそっ…栄養を上に持っていってくれよ。でも、こんなこともあろうかと…本当はあってほしくなかったけど、生徒手帳をポケットに忍ばせておいたのだ。
「私、この学園の中等部の生徒です」
そう言って生徒手帳をみせ……生徒手帳がない。
「もう、嘘はついてはダメよ。お姉さんと一緒に行きましょう。手を繋いであげるから、ね?」
何でこう言う時に生徒手帳がないんだ。嘘偽りない笑顔で、そんなこと言われると、余計に悲しくなってくる。生徒手帳は何処なの?
「あの、本部の方ですか?この子、迷子みたいで」
「そうですか。お嬢ちゃんお名前は…って琉川さんじゃないですか!」
やっと気づいてくれた。さすがにこれ以上は心臓が持たない。
「えっ!この子この学園の生徒だったんですか」
最後まで気づかなかったのか。…くそう。
「琉川さんの生徒手帳、落とし物で届いてますよ」
「ありがとうございます」
(よかったわ…)
私は生徒手帳をぎゅっと握りしめて歩いた。すると後ろから悠仁が、…と言うかいたなら助けてよ。
「ふははっ、玲花チャン面白すぎる!」
(殴っていいわよね?!)
「ぐほっ!腹パンはヤバイって、本当に!」
悶えている悠仁を置いて、ドスドスと音をたてながら一足先にテントについた。
もう…誰でもいいから癒しを頂戴…。
お読みいただきありがとうございました!




