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私はオートバイ  作者: 京丁椎
12/18

私はフレーム(倉庫に保管中)

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

私はホンダスーパーカブ。


走り続けて何年が経ったのだろう。雨の日も雪の日も走り続けた。

いつ頃からだろう?道路に大量の塩が撒かれ始めたのは。


塩は私のリヤフェンダー(からだ)をみるみるうちに蝕み、

穴を開けてもまだ浸食していった。


そしてとうとう破滅の日が来た。

「あれ?傾いとる。何でやいな?」


とうとうサスペンションの取付け部まで錆に蝕まれてしまった。

もう走れないだろう。他にも錆びて腐ってしまった所は沢山ある。


自分の車体(からだ)の事は自分が一番わかってるよ・・・。


「バネがもげてしもた」

御主人は私を必死になってバイク屋まで運んでくれた。

小さなお婆さんが泣きそうになって私を押す。


バイク屋は私を見た途端、ため息をついた。


「溶接で直せるレベルやないで。グスグスやで」

「なんとかならんか?こいつとは長い付き合いなんや」


バイク屋さんは首を横に振った。

「ここまで腐ると直しようがない。直せても強度を保証出来へん。」


「ここまでか。今までおおきに」御主人は(しわ)だらけの手で私を撫でた。


バイク屋は買い替えを勧めたが、御主人は私を最後のバイクと思っていたそうだ。


高齢になった御主人はこれを機会に免許を返納することになった。


車体が腐った私はバイク屋に引き取られてあの世行き(ぶひんどり)・・・。


ナンバーを外された私は部品が外されフレームだけになった。

タガネが打たれてフレームナンバーは消された。


そして私は溶鉱炉で解かされて再び鉄として再利用された。


誰が言ったのだろう。

「バイク乗りはスーパーカブに始まり、スーパーカブに終わる」

そんな私にも終わりの時が来た。


私はスーパーカブ。錆に侵されこの世を去る。

御主人様の思い出と共に・・・・・











・・・・あれ?


何故か意識がある。気が付くと、私は箱に納められていた。

トラックへ積まれて何処かに移動している・・・と思う。


何で?何が起こったの?お~い。どうなってるの~?


トラックが止まった。何やら話し声が聞こえる。


「お届け物で~す」

「はい、ハンコ。それと署名と代金ね」


私はトラックから降ろされた。


「今回は大荷物ですね~。バイクの部品ですか?」


「フレームや。ホンダ純正の新品のフレーム。」


「へ~買えるんですね。フレームって」


「ややこしい手続きが有るし、割に合わんけどな」


どうやら私の魂は新しいフレームに移ったらしい。

そして走り慣れた安曇河町へ戻って来たようだ。


「錆びてボロボロになるまで事故に会わんかったフレームナンバーや。

事故して廃車になったフレームと違って実に縁起が良い」らしい。


こうして私は生まれ変わって出番を待つことになった。


次はどんな人が乗ってくれるのかなぁ。

今度は高嶋市以外にもいろいろな道を走りたいなぁ。


私はスーパーカブ・・・のフレーム。

新しいご主人様と出会う事を夢見て、今日も眠り続ける。



後にこのフレームは大島の手で再生されて新しいオーナーの元へ行くのだが、

それはまた、別のお話。

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