表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

赤い少女

「いやぁ、助かったよ。どうもありがとう」


「いいわよ、べつに。アタシが勝手に助けただけだし」


現在、俺は馬車に乗せていただいている。いろいろあってかなり疲れていたので、彼女が通りかかって本当に良かった。

ちらりと横を見てみる。赤い髪を左のサイドテールにして、つり目がちな赤い瞳が活発そうな印象を与える美少女だ。胸や右肩に赤黒い小さめの鎧っぽい物を着けているから、何か戦う職業についているのだろうか。


「しかし、いいのか?女性が一人で、素性の知れない男を招き入れてしまって」


「問題無いわ。アンタが何者でも、何かされる前に馬車から蹴り落とすくらいの事は簡単だし」


お強いようである。

背後を確認すれば、そこには彼女の物らしきハルバードが置かれている。目の前の少女がこれを使っている姿は、あまり想像できないが。


「そういえば、名前教えてなかったわね。アタシはフラムっていうの。見たところ冒険者どうしだし、姓はいらないでしょ?」


どうやら、彼女は冒険者というやつのようだ。

うむ、実にテンプレである。


「俺は冒険者じゃないけど………流次だ」


「ふうん、リュウジっていうんだ………って、冒険者じゃないの?じゃあ、アンタ何者?」


「何者か、と言われると…………旅人?」


「なんで疑問形なのよ…………やっぱり怪しいわね。王都につく前に、ちゃんと説明してもらうわよ、アンタのこと」


ほう、この馬車は王都とやらに向かっているのか。今初めて知った。


「俺のこと、か…………」


正直、俺ことを話す事は簡単だ。しかし…………

ありのまま「別の世界から来ました~」なんて言って、狂人扱いされて馬車から落とされる……なんてことになったら困る。王都がどれだけ離れているかわからない以上、ここで移動手段を失うのは、よろしくない。


………………………………………。


………………………………………。


…………………ま、べつにいいか。

場所はわかっているんだ、歩いていればいずれ着くさ。


「俺、こことは別の世界から来たんだ」


「………へ?」


固まってしまった。


「大丈夫か?」


「ちょ……ちょっと待ってよ…………じゃあアンタ、『わた』なの……?」


わたりと?


「何だい、それは」


「渡り人も知らないの?じゃあ、やっぱり、そういう事なの………?」


どういう事なの。


「ああ、ごめんなさい………渡り人っていうのはね、別の世界から来た人間のことよ」


なるほど、異世界から渡って来た人、だから渡り人か。

気持ちがいいほど安直なネーミングだ。


「そういう言葉があるって事は、過去にも異世界人が来た事があるのか?」


「うん、そんなに頻繁には来ないけど………だいたい、100年に一人くらい?」


女神の言葉とも一致するな。


「そういう事なら、俺はその渡り人だよ。証明はできないけど。だから、信じられないなら、それでもいいけど」


「…………ううん、信じる。ただの勘だけど、アンタは普通とは違う感じがするし」


「勘か……」


「そういうのも鍛えないと、冒険者としてやって行けないのよ」


そんなもんか。


「ねえねえ、渡り人ならさ、アンタも何か凄い力があるの?!」


「は?」


「渡り人にはね、たまに凄い能力や知識を持った人がいるの!アンタは何かないの?!」


テンション高っ。


「残念だけど、俺がもらったのは、とりあえず戦えるだけの身体能力と、今身に付けている物だけだよ」


「そうなんだ…………ねえ、ちょっと見せてよ」


「ん、いいけど」


そう言うと、彼女は俺の荷物を漁り始めた。まあ、特に珍しい物は入ってないはずだけど…………馬車って、片手運転して大丈夫なのか?


「ねえ…………これも…………?」


「ん?…………あ」


ごめん、やっぱり珍しい物あった。

ドラゴンの角、入れておいたの忘れてた。


「いや、それは拾ったんだよ。さっきの森の中で」


一応、事実は伏せておく。言わないでって言われたし。


「………あの森で?」


「ああ」


「…………そう………」


どうかしたのだろうか。あの森には、本来ドラゴンはいなかった、とか?


「これは隠しておきなさい。アンタは知らないと思うけど、ドラゴンの角なんてのは、かなり強力な素材だから。無用心にしてると狙われるわよ」


そういうわけではないらしい。というか、心配された。まだ出会って数十分だが、このフラムという少女はお人好しのようだ。


「ありがとう」


「………べつに」


素直ではないようだが。


「さっきから言おうと思ってたけど………アンタ、その棒読みなんとかならないの?お礼言われた気がしないわ」


「………すまん」








■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■









「さ、着いたわよ」


雑談してたらいつの間にか着いた。意外に近かったな。


「一応、この国の国民として言っておくわね。………ようこそ、王都『エル・エカイユ』へ」

ドラゴンの角=屋敷一軒

くらいの価値があります。主人公はまったく知りませんが。


評価・感想等お待ちしております

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ