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奇妙なラブレター  作者: 山本正純
前編 Who is the sender of a love letter?
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「べ、別にあなたのためじゃないんだからね。グループのためだから」

やっとソロで登場。ツンデレ全開の須藤涼風回です。

 二時限目。春上たちは第一理科室で科学の実験をした。

 化学の教師は手を叩き生徒たちに指示する。

「いいか。今日は水素を発生させてもらう。各グループで実験の結果をレポートにまとめてもらうから、まじめに実験に取り組むように」


 化学教師の言葉を合図に生徒たちは実験の用具を準備する。月守学園の方針は学生の自主性に任せるというものだ。そのため、化学の実験も、実験には使わない用具が化学教師用の机の上に並べられている。どれを実験の用具として使うのかも生徒の自主性に任せられているのだ。ただし間違った用具を使って実験をしたら、減点される。実験の使用する用具を考える必要があるのだ。

 

 春上の班には須藤涼風がいる。成績優秀な彼女がいれば実験用具を間違えたことによる減点はない。班編成はくじ引きで決定するので、運が良かったと春上は思った。

 春上たちの班も実験用具の選別を開始する。

「実験に使うのは、水槽と塩酸と試験管だったよな」

 独り言のように春上が呟いていると、須藤涼風は亜鉛が入っているビーカーを手にした。

「亜鉛を忘れてるでしょ」

「そうだった。サポートしてくれてありがとな」

 須藤は顔を赤くする。

「べ、別にあなたのためじゃないんだからね。グループのためだから」

 

 実験用具の選別はスムーズに終わった。そして須藤の指導の下実験はスムーズに進展していった。

 ラブレター事件の容疑者として須藤涼風という名前が浮上してから春上は彼女を見る目が変わった。それまで春上は須藤が頼りがいのある人物だと思っていた。それが学級委員として推薦される要因だろう。たしかにそれは間違っていない。

 彼女は女の子だ。頼りがいのある男の子ではない。そのため女の子らしいかわいさも垣間見える。時々春上に見せるかわいらしい表所がその例だ。

ということを考えながら春上は実験の観察を続けていた。

すると須藤涼風は春上のプリントを覗き込むように見つめた。

「須藤さん。何ですか」

「レポートのまとめを任せようかなと思って」

 

 その発言に春上は驚いた。先ほどまで春上は須藤涼風が頼りがいのある女性だと思っていた。そんな彼女は人を頼ることはない。他人に仕事を押し付けるようなことをしない。

 にも関わらず須藤涼風はレポートのまとめという責任重大な仕事を春上に押し付けた。

 頼られているのか。それとも頼りがいがあるということが買いかぶりだったのか。春上には分からなかった。

「いいけど、何で俺に頼んだんだ。いつもなら須藤さんがレポートを書いていただろ。俺に頼んだってことはもしかして・・」

 春上が確信に迫ろうとした時須藤は慌ててはぐらかした。

「急に何言ってるのよ。ば、馬鹿じゃないの」

 述語を聞かずにはぐらかしたということは、須藤涼風は第一容疑者ではないのか。春上は疑惑を抱いた。

 実験は終了し、春上は強引に責任重大なレポートを書くことになった。


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