「やっぱりあなたでしたか。春上に奇妙なラブレターを送りつけたのは」
江角千穂の謎解きが今始まる。
9月17日火曜日。ラブレターの差出人はいつものと同じように早めに登校した。その目的は4枚目のラブレターを春上の下駄箱の中に入れるため。
彼女は春上の下駄箱を開けいつものようにラブレターを入れようとする。しかし彼女の手は止まった。既に下駄箱の中には紙が置かれていたのだ。中に入っているのは彼女が持っている二つ折りにされた黒い紙と同じもの。
悪いと思いながらラブレターの差出人はその紙を春上の下駄箱から取り出し、内容を確認する。
「馬鹿な。そんなはずはない」
その手紙は彼女が持っているラブレターと同じ方法で書かれている。すなわち新聞や雑誌を切り抜いて書かれているものだった。
自分以外にこの方法をする人がいた。ラブレターの差出人は驚いた。
それ以上に驚いたのは手紙の内容。
『春上。午前7時45分に学校の屋上で会わない。江角千穂』
ラブレターの差出人は許せなかった。江角千穂の手紙を握り潰す程に。
「許さない。この方法は私だけの物だ。江角千穂。お前だけには使ってほしくなかった」
ラブレターの差出人さんは学校の屋上に向かう。
午前7時45分。ラブレターの差出人は一人学校の屋上にいた。だがそこには江角千穂どころか春上の姿もいない。
「やっぱりあなたでしたか。春上に奇妙なラブレターを送りつけたのは」
ラブレターの差出人は背後から声を掛けられ驚いた。
「その声は江角千穂。春上君は絶対に渡さないから」
差出人の声を聞かず江角は推理を話す。
「正直な話。先週の金曜日までは誰がラブレターの差出人なのかが分かりませんでした。親戚の汐宮勉さんに相談する前までは。汐宮さんはおもしろいヒントをくれました。それはルビンの壺」
江角はポケットからルビンの壺が印刷された紙を取り出しラブレターの差出人に見せる。
「これがルビンの壺。白い方に注目したら壺のように見えます。しかし黒い方に注目したら人が向かい合っているように見えます。それが今回の謎を解く手がかりでした。これと同じように私は最初文章の内容しか注目しませんでした。しかしこの事件の真相はどうやって書かれた物なのかということに隠されていました」
江角はポケットから過去に届いた3枚の奇妙なラブレターを取り出す。
「例えば二枚目のラブレター。ハルウエハクヤ。ここだけ紙触りがサラサラしています。この文章は雑誌を切り抜いて書かれた物だということです。私はこの三連休を使ってラブレターと同じ文字の雑誌を探しました。その雑誌は地方紙マルス。隔週発売で、ハルウエハクヤという文字が隠されていた刊の広告にはラーメン安部の文字。秋山君からあなたがラーメン安部に出入りしていると聞いて確信しました。ラブレターの差出人は須藤涼風さん。あなたです」




