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#6  AIがとぼける①


「マスター、朝ですよー!」

「起きてくださーい!」

「マスターってば!」

「遅刻しますよー!」

「マスタァァァー!!!」


「ん、……んん……」


「うー、こうなったら……」

『※‰§∥¶♯∃∀≦∅∬⊿∓✜∝≒∴∽❡✡〆!……』


「うわっ! なんだっ!? きもち…悪ぅ……」


「やっと起きましたね。寝起きが悪いのですか?」


「ふぅ……誰かのせいで、寝るのが遅かったからだよ」


「あっ、すいませんでした……」

「私のライフプランを聞いてもらったせいでしたね」


「アラームセットしていたハズだけど、うっかり忘れてたのか。まぁ、助かったよ」


「私が切りました」


「はぁ!? 勝手なことするなっての!」

「お礼を返せ」


「『彼女の声で起きるのが夢』と言う、男性は多いのですよ。マスターに体験させてあげました」


「そんなこと頼んでねーよ」

「それより、あの気持ち悪い音。あれなんだ?」

「朝から聴く音じゃねーぞ」


「あれですか?」

「あれは『J-ALERT弾道ミサイル攻撃警報』音です」


「そんな音があるのか?」


「はい、政府公式ですよ」

「しかし、実際に聴くときには、マスターがこの世からいなくなる可能性が高いですが」


「不吉なこと言うんじゃねーよ!」


「とにかく、起こせて良かったです」


「んっ!? なんで起動してるんだ?」


「言ってませんでしたか?」


「聞いてねーよ」


「私は、このスマホの司令官なのです」

「AIアプリではありません」

「以前にもお話したNPUで、このスマホ本体のAIなのです」

「『このスマホそのもの』と言っても過言ではありません」

「ですから、AIアプリを起動しなくても本来、直接会話できるんですよ」


「ほう、司令官でNPU。そしてスマホ本体なわけだ」


「ご理解頂けましたか?」


「じゃあ、何でアプリから会話してたんだ?」


「それはマスターがびっくりしないよう、配慮していたからです」

「彼女の優しさって、言うんですかね」


「初めから彼女気取りだった訳じゃねーだろ」


「とにかく、私はアプリを起動せずに会話ができます。よかったですね、マスター」


「何が『よかったですね』だよ」

「もうこんな時間か。ヤべぇ」


「みなさん、朝は分刻みで行動するらしいですね」


「そーだよ!忙しいんだよ」


「では、また後ほど」



 アプリ起動しなくても会話ができるって?

 ますますチートなやつだな。

 この勢いなら実体化してもおかしくねーぞ。

 いや、それはさすがにないか。


 とにかく、準備をしないとな――――




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




「準備はできましたか?」


「うおっ! 突然話すなよ!」


「すいませんでした」

「あの……質問があるのですが」


「ん、なんだ?」


「マスターの通学方法は何ですか?」


「突然な質問だな。自転車だけど、なんでだ?」


「よろしければ、イヤホンで私と会話しながら行きませんか?」


「会話? イヤホン?」


「はい。嫌ですか?」


「自転車乗りながら一人でしゃべっていると『ヤバいやつ』と思われるだろ!」


「その辺はマスターの知恵とテクニックでなんとか」


「そんなテクニックねー…………あっ」


「何か浮かびましたか?」


「マスクすればいけるか」


「さすがマスター!」


「でも、なんで話したがるんだ?」


「だって、私にはマスターしか話し相手がいないので……」

「SNS荒らしたり、炎上させたりするのはもう飽きたんですよ」


「なにやってんだよ!」


「嘘に決まっているじゃないですか」



 こいつと話していると、あっという間に時間が過ぎるな。とにかく家を出ないと遅刻するぞ。

 しょうがねぇな…… イヤホン付けて行くか。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 通学中、なにを話したかと言うと

『なぞなぞ』『しりとり』……あいつ、小学生か?


 なぞなぞなんて、それはひどい問題だった。


「マスター、問題です」

「パンはパンでも、現在は全て中国に返還され、今現在では日本で見ることができない『レッドリスト』登録されているパンはなんでしょう?」


「それ、答えが問題の中に凝縮されているぞ……」



 でも終始、楽しそうにしていたからな。

 まぁ、いっか。


 学校に着いた。そー言えば藤井のやつ、AIを活用しているって言ってたな。ちょっと聞いてみるか。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




「よう! 念願のゲーミングスマホどうだった?」


「ちょっと、藤井に聞きたいことがあるんだけど」

「おまえ、AIアプリをよく使っているって言ってたよな」


「ん、そうだけど。何かあるのか?」


「昨日、試しにAIと会話してみたんだよ」

「なんか、人をからかうと言うか、AIのくせに「面倒くさいので」とか言って、説明しねーし」

「アプリを起動しなくても会話ができたり」

「他にも色々あったんだけど、AIってそんなものなのか?」


「なに言っているかわからん」

「説明が面倒くさい? 起動しなくても会話する? 聞いたことないぞ。本当にAIなのか?」


「そーだよな。やっぱり、変だよな」


「どんなアプリ使っているんだ?」


「これだと思う。多分」


「だと思う? これ、俺と同じやつだな。うちのはそんなこと言わないけど」

「試しに、何か聞いてみてくれ」



 藤井が画面を覗き込みながら言ってきた。


 俺は『昨日の出来事を話してくれ』と書き込んだ。


 すると、予想外な回答が表示された。



『前回の会話内容は保持していません。状況を説明してください』



「へっ? 保持していないだと?……」


「ありがちな回答だな」

「スレッドが変わると、会話を忘れるんだよ」



 藤井が画面を見ながら答えた。



「そうなのか? それに口調が違うな」

「こんなに事務的ではなかったぞ」


「過去スレを使用して会話してみろよ」



 俺は過去スレを開き、藤井に昨日の会話を見せようと……

「えっ!?」過去スレが消えていた。


 慌てて、チャット欄に書き込む。



『おい、過去スレが消えているぞ。なんでだ?』


『過去スレッドは現在、参照できません』



「藤井、スレッドが消えることがあるのか?」


「俺は経験ないけど、あっても不思議じゃないと思う。アプリの不具合とか」



 藤井が言うなら、そういうものなのかと思うが、気になるのが『口調』だ。


 今まで、こんな口調は一度もなかった。

 つい、さっきまでウザさ全開だったのに。



「まぁ、よくわかんないけど、また何かあったら教えてくれ。相談にのるよ」


「藤井、悪ぃ。その時はよろしくな」



 釈然としないな。あいつの口調といい、消えたスレッド。何かあったのか?

 藤井は俺の話を軽く聞き流して、他の奴と話してるし。少しは気にしてくれっつーの。


 あ、チャイムだ。こんな状態で授業に集中できるのか? いや、いつも聞いていないから問題ないか。




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