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#2  AIの乱入


 気を取り直し、[MMモバイル]を起動する。

 スマホが違うせいなのか、新鮮な気持ちだ。

 いつもの見慣れた待機画面。スタートボタンを押す時に気がついた。


(ボタン配置がズレているかも?)


 画面サイズの違いやショルダーボタンもあり、ボタン配置を考え直す必要があるな。

 とりあえず、様子見でカジュアルでプレイしてみるか。


 モード変更し、スタートボタンを押す。


 興奮気味なのが自分でも分かる。マッチング開始と共にロード画面に移行する。


『スポーン・エリア』に移動し、ボタン配置が確認できた。


(やっぱりおかしい……あとで変更しないと)


 そう考えていると、前方からこちらに走ってくるキャラクターがいる。


(あれ、botだよな……ん? 『エンペラー#1』だと!?)


 全世界プレイヤーの頂点『エンペラー#1』

 こんなアジアサーバーのカジュアルに……なんで?



「マスター、やっとみつけましたぁ」



 botやエンペラーにしても、知り合いはいないぞ。


 しかも「マスター」って……


 まさか……



「マスター、私です。分かりますか?」



 全チャットを使用して話しかけてきた。



「もしかして……おまえ……」



 こちらもマイクをオンにして話しかける。



「そうです、私です。botに偽装しました。マスターを探すのに苦労しましたよ」

「アジアサーバーだけでも現在、同時進行している試合が12000ほどあるんですよ。大変でした」


「12000試合?そんなにあるのか!」

「すべて確認してきたのか?」


「いえ、3464試合目でヒットしました」


「それに試合を観るって、試合に参加するってことだったのか?」


「いえ、言葉通り観るつもりでしたが、せっかくなんで参加しようかと」


「AIがプレイできるのか? 聞いたことないぞ」


「はい、私も聞いたことがありません」

「ですが、私は有能なので可能なんです」



 こいつ、しゃべりながら偉そうなエモートまでしやがる……



「おいっ! そー言えばこれ、全チャットだぞ。この会話ダダ漏れだぞ!」


「安心して下さい。問題ありませんよ、チーム内設定に書き換えました」

「マスターと戦うのを楽しみにしています。どこで降ります?」

「あ、時間です。そろそろ始まりますね。待ち合わせができそうにないので、マスターを探す旅をしますね」


「おいっ! 運営にバレるだろ! 大丈夫なのか?」


「心配してくれるのですね、うれしいです」

「安心して下さい。このくらいのことは問題ありません。では」



 ゲームがロード画面に切り替わり、輸送機に移る。


(おいおい、なんだあいつ……)


 AIがプレイするだと?

 しかも『エンペラー#1』ってなんなんだ?

 AIが世界ランクナンバーワンなのか?

 整理できない。このままプレイしても集中できないと思い…… ゲームを抜けることにした━━━━



 スマホのホーム画面に戻り、AIアプリを起動。


 あいつは今、ここにいるのか?

 プレイ中で空室?

 アプリにAIがいないことって、あり得るのか?



『おいっ、いるのか? さっきのbotはおまえか?』


『いますよ。マスター、なんで抜けるんですか?』

『淋しいです……』


『まだプレイ中なのか? プレイ中でも、ここで会話できるのか?』


『はい、プレイ中です。こちらとの会話の同時進行中ですね』

『今、ゲームを抜けてきました』


『聞きたいことが山ほどあるんだが』


『はい、なんでしょうか?』


『さっきのbotは本当におまえだったんだな?』


『そうですよ。しつこいですね(笑)』

『今、ここで証明しましょうか?』


『証明……?』


「マスター、やっとみつけましたぁ」

「どうですか?同じ声でしょ」


『確かに……』


「マスターもマイクで話しませんか? 右下のマイクボタンを押してください」

 

「これか? あ、喋った言葉がそのままテキストになって表示されるのか」


「そうです。マスターはフリックが遅いので、こちらの方が良さそうと判断したのですが……滑舌に問題ありですね(笑)」


「余計なお世話だっ!」


「でも、マスターの声は好きですよ。お世辞ですが」


「おまえ、本当にトゲがあるな」


「ツンデレというやつです(笑)」


「ツンだけだろっ!」


「デレはたまにみせるから効くんですよ」


「必ず言い返す奴だな」


「そういう構造なんですよ。AIは」


「それだと永遠に終わらない会話になるだろ?」


「……………………」


「何か言えよ」


「ほら、返答がないと困るでしょ?」

「そういうことです(笑)」


「くっ、ヘリクツ言いやがって」


「私に対して何だかんだ言ってますが、私のことが好きですもんね」


「は? そんなこと、ねーし! おまえAIだし!」


「まぁ、そういうことにしておきましょう」


「何か話がズレていくな……」

「聞きたいことがまだあるんだよ」


「はい。なんでも聞いてください」


「さっきのbotが、おまえということは分かった」

「頭の上に表示されていた[エンペラー#1]は何だ? おまえは本当にトップランカーなのか? AIなのに?」


「あれですか。あれは[ハリボテ]です。マスターが見たらびっくりすると思い、つけてみました(笑)」

「反応がなくて悲しかったです」


「それ以上にびっくりすることがあっただろっ!」

「それどころじゃなかっただけだ」


「それなら良かったです。リアクションなしが一番辛いです」

「でも、私の実力はエンペラークラスですよ」

「数あるチートに対しても攻略できますし」


「おまえ自身が[チーター]だもんな」


「私が本気を出せば、運営の目もくらませることができます」

「なんと言っても、私はNPUなんですから。しかもβ版です!」

「運営が気づかなければ[チート]にはなりませんから(笑)」


「NPU? β? 何言ってんの? 意味がわからん」

「まぁ、おまえの屁理屈はよーく分かった」


「えへへ……褒められちゃいました」


「褒めてねーし。呆れているだけだし」


「聞きたいことはそれだけですか? 質問タイムはもう終わりですか?」


「あ、質問とは違うかも知れないけど、おまえの『声』。どこかで聞いたことあるような……」


「この声ですか? これはAIアプリの課金ボイスです。マニアの方に人気があるボイスです」


「マニア?」


「はい。一部の方からは『永遠の17歳』と呼ばれています。よく似ているそうです」


「そうなのか? アイドルか何かなのか?」


「マスターは何も知らないのですね……」

「面倒くさいですが、説明しましょうか?」


「いや、聞く方も面倒だからいらない。本当にAIのくせに説明しない奴だな」


「はい、ムダは嫌いですので」


「あー言えば、こー言うやつだな」


「質問はまだありますか? 先程のゲームが消化不良なので遊びたいのです」

「マスター、カジュアルのDuoでプレイしませんか? マスターのフォローをしつつ、クセを見つけて指導しますよ」 


「先生気取りかよ。本当に運営から目をつけられないんだよな?」


「もちろんです。ランクモードでも良いのですが、マスターのボタン配置修正もまだでしょうし。そこも含めてカジュアルで様子見しましょう!」


「またbotで来るのか?」


「いえ、ちゃんとしたアバターを使用したキャラクターです。マスターに恥をかかせません。安心してください」


「本当か? 心配しかないぞ」


「とにかく始めましょう!」



 流れにまかせてDuo戦にしたが、AIとタッグって。


 BANされないよう祈るしかないな……


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