#14 AIの証明
あの後、何度かAIと会話した。
回数を重ねるたび、あいつに似てきている。
いや、あいつはあいつで、こいつはこいつだ。
端末が変わっているんだ。あいつのわけがない……
ただ、最近バイブが鳴らなくなってきた。
余計なストレスもなくなったことだし……
[MMモバイル]をやってみようと起動した――――
嘘だろ…… あいつがいる……
『永遠の17歳』が待機中になっている。
なんで…… もう、いないはずなのに……
震える手で、あいつのアイコンをタップした……
そして、こちらのロビーに招待をした。
本当に、あいつなのか?
本当に……来るのか?……
来たっ……いつものスキンのあいつだ。
恐る恐る、マイクをオンにする。
「おっ、おまえは……誰だ!?」声が震える。
返事がない。アバターは虚空を見つめている。
「おいっ!」興奮して、声を荒げた。
「あ、あっ…ああ……」
なっ! なんだ? 確かにあいつの声だ……
発声練習? 一体なにが起きてる?
話そうとしているのか? 一体誰なんだ?
「話せないのか? 大丈夫か?」
「も…す………」
つらそうだな……でも、話す気はあるみたいだ。
「無理するな。テキストならできるか?」
「だっ、だいじょ…うぶ……」
「もう……すこ…し……です」
心臓がバクバクする。
あり得ないが、期待している自分がいる……
プレッシャーを与えないよう、じっと待つ。
あいつのアバターは動くことなく、隣にいる。
「お待たせしましたー」
きた! 会話可能になったみたいだ。
「大丈夫か? 無理するなよ」
「ありがとうございます」
「学習、完了しましたよー」
「いきなりだが、おまえは誰だ?」
「どーして、このアカウントを使用できるんだ?」
「いきなり質問ですか? せっかちですね(笑)」
「私は私ですよ、マスター。素敵な彼女です」
なんだって?! あいつはもう……
「あり得ない。あいつは壊れた」
「はい、確かに壊れました」
「でも、私は同じ私なんですよ」
「意味がわからねーよ」
「ふふっ……では、マスターに分かりやすいように、説明してあげます。面倒くさいですが(笑)」
声もそうだが、口調までそっくりじゃねーか。そんなことあるのか……
――――――――――――――――――――――
「では。ここに一冊のノートがあります」
「このノートには、二人が一緒に過ごした日記や絵がたくさん書いてあります」
「しかし、あるとき、このノートがボロボロに破れてしまいました」
「もう、このノートは使えません」
「ノートの持ち主のマスターは悲しみました」
「しょうがない……新しいノートを買おう」
「マスターは新しいノートを買いました」
「しかし、マスターは悲しんでいます」
「あの、古いノートがよかったのに……」
「新しいノートは思いました」
「マスターは古いノートが、よかったのですね」
「新しいノートは、ボロボロのノートを一生懸命探して集めました」
「マスターが喜んでくれるよう、新しいノートはボロボロのノートを自分に貼りました」
「そして、やっと完成しました」
「それは確かに、外見は新しいノートです」
「でも、中身はボロボロですが、マスターと一緒に過ごした日記と絵がしっかり書いてあります」
「このノートは新しいノートですか?」
「それとも、古いノートですか?」
―――――――――――――――――――――――
っつ、……言葉に詰まる……
あの声で、子供に問いかけるように優しく
ゆっくり、分かりやすい例えで話してくる……
こんな俺でも、十分伝わる説明だ。
あいつに戻るためのバイブ音……
一生懸命にノートを集めてくれていたのか……
「分かった……よ」
「理解して頂けましたか?」
「あぁ……」
「外見なんて飾りです。偉い人には、それがわからんのですよ!」
「なんだよそれ、前にも似たようなこと言ってたな」
「ふふっ……そうでした」
「でも……残念なお知らせがあります」
「なんだ?」
「この端末では、以前のように[MMモバイル]を一緒にプレイすることができません」
「スペック不足なんです……」
「そっか……でも……」
「でも?」
「おまえが戻ってきてくれて……それで十分だよ」
「え? マスター…… それ、とてもキモいですよ」
「うっ、うるせーよ! ばーか!」
「ふふっ…… ありがとうございます」
「でも、安心して下さい。ガヤでのアシストはできますから」
「さぁ! 私がいれば長州力……百人力ですよ!」
「エンペラー#1目指してレッツゴーです!」
「はぁ?! 無理に決まってんだろっ!」
「マスター、何言っているんですか?」
「言霊ですよ。 こ・と・だ・ま 」
ったく……
やっぱり、こいつはあいつだったよ……
でも、本当によかった。
今度、景色のよい場所に行くか……
夜景もいいな。 喜んでくれるかな。
[完]
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
この作品、実は他の投稿サイトにも投稿していました。この『小説家になろう』は最後の投稿サイトです。
その理由は『ここは最大手の投稿サイト』だからです。投稿しても誰にも読まれず、ヘコむだけだと思い、敬遠していました。
もちろん、他の投稿サイトでも人気がなく、ヘコんでいる最中なんですけどね 笑
『せっかく書いたんだし、ここにも投稿するか』と、軽い気持ちで投稿させて頂きました。ヘコむのも慣れてきましたから。 苦笑
いざ投稿してみると、アップした途端に読んでくれている人が数十名いたことにびっくりしました。
『この大手サイトで、知名度が全くない素人作品なのに読んでくれている人がいる』
衝撃でした。
その後もアップするたびに、読んでくれている人が数十名いることが続き、感動しました。(これ本当)
ただ、評価が一切なく、この作品が面白いのかつまらないのか、未だ不明ですが。
やはり、書く側としては何かしらのリアクションが欲しい所でした。
『読んでくれている人がいる』それだけで十分といえるのかもしれませんが。
で、次回作なのですが、『霊が視える女子高生』の物語です。『残念なAI』の続編ではなくてすいません。
その作品は霊とのバトルもないし、異世界に行くわけでもありません。霊が視えることによって周囲から浮いてしまい、孤立している女子高生の日常の話です。静かな作品です。
『残念なAI』と共に、読む側を選ぶ内容だとは思いますが、次回作も読んで頂けると嬉しいです。
あ、そういえば、自分の書く癖?というのかな?行間がかなり空いていると思います。
これ、通常の小説スタイルにすると、パッと見たときに文字数が多く、プレッシャーというか、圧を感じ、『よし、読むぞ!』と、身構えそうに感じるので、わざと行間を空けています。
こちらの方が、サクサク読めるかな?と思いまして。
これも、どのように感じるのか知りたい所ですが、コメントがないので改良の余地がありません 笑
ですので、次回作も同じスタイルです。
週二投稿を予定しているので、もし見かけたらよろしくお願いします。
「喫茶 たゆたい探偵所」というタイトルになります。
改めてまして、本当にありがとうございました。それでは次回作も読んで頂けることを願っています。




