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#11 俺の―――――


「失礼します」



 担任がドアをノックし、後ろにつく形で校長室に入る。「遅くなりました」担任の声のあと、背中に手を充てられて前に出された。



「君か。ここに座りなさい」



 校長の前に家族連れが座っている。誰だ?

 この人たち知らねーぞ……


 夫婦二人が立ち上がり、俺に深々と頭を下げている。そして子供が二人。母親に抱かれている子と、幼児だった。



「とにかく、座って話しましょう」校長が話しだし、担任に校長のとなりに座るよう、うながされた。



「昨日は本当にありがとうございました」



 母親がまたも頭を下げ、俺に言ってきた。



「あっ!」やっと、気がついた。



「あの時は子供のことに気がいってしまい、すいませんでした」

「お礼を言おうと周りを見たら、すでにいなかったので」

「ドライバーの方に聞くと、あの人も警察に連絡していて、気がついたらいなくなっていたと言っていました」



「君はなぜ、その場を去ったのかね?」


 校長が聞いてきた。



「アップデー……いや、なんとなくと言うか、気がついたら家に帰っていました……」



「あなたのおかげで、こうして子供も無事です。なんとお礼をすれば良いのか……本当にありがとうございました」


 父親が深々と頭を下げている。



「いや……そんなこと……」


「身体は大丈夫ですか? かなり痛がっていましたが……」母親が心配そうに俺を見た。


「いえ……大丈夫……です」



 ん? 疑問を口にした。



「何で分かったんですか?」

 


「これが落ちていたので、ご連絡させて頂きました」



 母親が出したのは生徒手帳だった。



 まったく気にしていなかった。いつの間に。



「お礼を言おうと、こちらにご連絡したのですが……」

「個人情報は教えられないとのことでしたが、こちらに伺えばお会いできると言われましたので、今日こうして場を与えて頂きました」

 


「そして、これなんですが……」封筒を出してきた。



「ドライバーの方に伺ったら、スマホが壊れたと言っていましたので」

「なんだか、スマホに大声で話しかけていたらしく、かなり落胆されていたとお聞きしました」



 そーだった。 あいつに……



「特殊な形のスマホだとお聞きしました。お恥ずかしいのですが、よく分からないので不足でしたら御遠慮なくお知らせ下さい」



 スマホ代ってことか…… 



「……いいです」


「受け取って下さい。原因は私たちです」


「受け取りなさい」校長が言う。

「こちらのご夫婦のご厚意だ。君も困るだろ?」


「……では……使わせていただきます……」



 でも、あいつは……帰ってこない……



「不足でしたら、必ずご連絡下さいね」


「ほらっ、和希もお兄ちゃんにお礼を言いなさい」



 父親が子供に向かって、うながしている。



「ありがと……お兄ちゃん…」



 ちらちらと、視線を彷徨わせながら言っている。



「ふっ」と、笑みが出た。

「もう、道路に飛び出しちゃダメだぞ」


「うんっ!」目を見ながら言ってきた。



 ふっ、無邪気な顔しやがって……



       あ……



 

 そうだ…… 

 俺は、この子を助けたんだ。


 あいつはいなくなったけど、この子は無事だ。

 あの時、俺がもし動かなかったら、あいつは今まで以上に俺を非難しただろう。

『なんで、助けなかったのですかっ!』ってな。


 なあ、俺……間違ってなかったよな……


 これでよかったんだよな…… 

 



 それから少し、会話をしたところで校長室を出た。


 担任が意外そうな顔をしているのが気になるけど。





 あいつなら『マスターは正しい判断をしましたよ』


 そう、言ってくれただろうな……




 アニメの主人公って、子供助けるの好きだしな。





    ……そういうの、喜んでたよな。





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