第四章閑話:矛盾している
夢を見た。”誰かの視点”に憑依してブレイアに話しかけている夢。
─もし。……もしも、だ。俺が”これ”を預けた奴がいたらなら、ぜひともどんな奴か一目見てほしいんだ。
男は自分の心臓辺りをあたりを親指でトントンと押さえてそう言った。”それ”が心臓でないことはわかっている。心臓に一番近い、”それ”。
─絶対そいつはお人よしで、命知らずで、それでいて、絶対に──
「生きたいと願っているやつだから」
それにブレイアはあきれた様子で人間の言葉を使って誰かと会話をする。
「む、じゅん、しているという自覚が、あるか?」
「あぁ、あるよ」
「ならば、その言葉は、適切では、ない……」
「そうか?俺はそう思わない。むしろめちゃくちゃ適切だと思う。そんくらいの奴じゃないと──の後任は務まらないぜ」
夢だからだろうか。ノイズが入ったかのように聞こえない単語が混ざる。
「──は、もう生まれ、ないだろう。────はもういない」
「いや、生まれる。それから絶対あいつは出てくるはずだ。俺とおんなじであいつも生きたがりだからな」
「奴自身、には、その欲望はないと思う、が……」
「あぁ~そっか。あいつ自身が望んでるわけじゃないのか。まぁ、望んでないかって言われたらそうでもないけど」
「とも、かく……────はもう生き返らない。──はもう生まれない。私は、そう信じている」
「じゃあ賭けてみようぜ。俺は────が再び生き返り、──が再び生まれる。お前は────が生き返らず、──が生まれない」
「いいだろう」
「それと、もし、──が再び生まれたのなら、さっき言った通り、一目見てほしい。きっとすぐに──だってわかるはずだ」
「ふん……お前、以外に”それ”をどうにかできる者など、いるとは、思えん」
「いいや、絶対にいる。それに俺だって人間だ。お前がはなから考えていない”いつか”が来る」
「”それ”を持った、時点で、その”いつか”は来な──」
「いいや、来るね」
リスタが憑依している視点の”誰か”は自信満々にそう言った。表情はわからないが、きっとまぶしい笑みを浮かべているのだろう。
「まぁ、楽しみにしててくれ。お前の眼鏡にかなうような奴がお前の前に再び現れるんだ」
「……少し、な」
「それでいい」
「────────」
瞬間、あたりの音が無くなったかと思うと、リスタは浮遊感に包まれる。それが夢の覚める合図なのだとリスタは悟る。
* * *
「ん……」
「起きたか、リスタ」
リスタが目を開け、視界に入ってきたのは肉を焼いているヴェンだった。
「ヴェンさん……」
「”さん”なんてよそよそしいぞ。ヴェンでいい。ルティラのこともルティラって呼んでるだろ」
「わかり、ました……それより、今何時くらいですか?」
「ちょうど太陽が真上に昇ったころだ。疲れが溜まってたんだろ」
「ルティラ、は?」
「木の枝を集めてきてもらってる。……っと、ちょうど戻ってきたな」
「あ!リスタ、おそようですわね」
「おはようございます……まだちょっと眠くて……」
そう言ってリスタはぼーっとその場で焚火を見る。ヴェンの言う通り、色々あって疲れが溜まっていたのだろう。
「ヴェンは……」
「ん?」
「なんで私たちについてきたんですか?」
「ん~……そうだな、1番の理由は、昔ブレイアに『お前がもし、進めなくなっているときに、お前のことを助けようとしていて、それでいて「こいつは自分勝手な奴だ」と思えるような者を信じ、ついていけ』って言われたんだ」
「自分、勝手……」
「言ってただろ?もし友人が死んだなら、生きてほしいと思っていたと信じて、そいつらの想いを信じて、そいつらの分まで生きていこうと思ってるって。それで、俺は思ったんだよ。こいつは自分勝手な奴だって……それから、あとで色々考えて、ブレイアに昔言われたことを思い出したってわけ」
「ふふっ……ブレイアさん、変なことを言うんですね」
「だろ?だけど、そんなブレイアが言ったことも、リスタが言ったことも信じてみようと思う」
「そう、ですか……正直、うれしいです。……私たち、前線を張れる人がいないので……」
「リスタがやってるんじゃないのか?槍と鎌持ってるだろ?」
「あれは……物理的な攻撃ができないので。いくら叩いてもどうにもなりません」
そう言ってリスタはメアのほうに手を伸ばし、撫で始める。
「一緒に旅をするからには、色々話すこともあります。ゆっくり隣町に向かいましょう」
そうして新たに加わったヴェンに、リスタ自身やルティラのことを話していくのだった。




