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自由って素晴らしい!  作者: ミカンかぜ
第三章【私のために貴女に願う編】
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十四話:これは私のため(2)

 リスタがお城の中でロマを見つけるのは案外簡単だった。王宮の庭に喪服のような黒い服を着た人物に大事そうに抱えられていたからだ。ロマは気温が低いせいで動けないのだろう。抵抗などしていないし、リスタが呼びかけても反応がない。それよりも、だ。いや、ロマが低い気温のせいで動けないのは見過ごせないが、それと同様に、なぜこの人物がここにいるのかということ。先ほどこの人物はリスタが城外で見た人物と声も背丈も一致していたからだ。


「お待ちしておりました。またお会いしましたね」


「な、なんであなたがここに?」


「いえ、なんてことはありません。1つ、渡し忘れていたものがございまして……」


 そう言って謎の人物はリスタにまた水晶のような魔道具を渡す。


「これはあなたにあげた録画の魔道具。ですが、あなたが録画する必要はありません。すでに録画されている物です」


「なぜ、これを私に?」


「そんなに警戒した目で見ないでください。私はあなたを助けたいだけですよ」


「そんなことを言われても……いや、それより、早くロマを返してください」


「返さない。と言ったら?」


 謎の人物がそう言うと、リスタはぼそりと何かをつぶやいた。その瞬間、白い槍が謎の人物の首元に突き付けられる。


「早いですね。ただ、私は知っていますよ、それに物体を傷つける力はない。と……傷つけるのは心だけ。そうですよね?」


「心…そう、心なのですね……」


「ええ。もしや、あなたもあまり自分の力のことをわかっていない。と?」


「……」


「無言は肯定と受け取っても?」


 謎の人物がそう言うと、リスタは手の中の槍を消す。そうして謎の人物へと少し近づいた。


「ロマを返してください」


「いいですよ。その代わり、これ。もちろん受け取ってくれますよね?」


 そう言って謎の人物は録画の魔道具をリスタに見せる。それを見て1つため息をつき、リスタは受け取った。


「それではこの白蛇も。あ、あと、これは私がこの録画の魔道具を渡し忘れていたお詫びです」


 そう言って赤い宝石を取り出す。


「それは保温の魔道具。魔道具の中に刻み込まれた温度まで温かくなる魔道具です。大体27度ほどに温まるので、寒い時にはあなたのその…白蛇や黒猫に使ってあげてください」


「嘘……じゃないですよね?」


「もちろん。いずれあなたには協力してもらうときがあるのですから。その時のために、信用を勝ち取っておくのはものすごく大事です」


「……なるほど……まぁ、ひとまずありがたく受け取っておきます。それより、この録画の魔道具をなぜ私に?」


「なぜ……なぜ、ですか……そうですね、あなたの今の願いを叶えるため。です」


「私の、願い?」


「はい。いつぞやに思ったことはありませんか?”回復魔法を使える旅の仲間が欲しい”と……」


「ありますけど……」


「その願いを叶えるために必要なものです。絶対落とさないでくださいね。では」


「だから急に……ちょっと待っ…!」


 そう言って謎の人物は去っていく。それを追いかけようとしたリスタだが、またあの時と同じように足が全く動かない。そうしてその人物が見えなくなった時、再びリスタの足は動くようになったのだった。


「はぁ……何なのですかあの人……とりあえずロマを取り返せましたし、メア、帰りましょう」


 リスタがそう言うと、メアはリスタが持っている保温の魔道具を奪い取り、ロマに押さえつけるような動作をとる。


「あぁ、そうですね。寒そうですし、温めながら帰りましょう」


「ニャ~!」


 リスタがそう言うと、メアは今度は服の裾を引っ張り、リスタのことを引き留める。


「なんですか?早く出ないと警備をしている騎士に……」


「誰かいるのか?」


 そうこうしているうちに、近くまで警備をしている騎士が来ていた。その声を聞いてリスタはメアとロマを連れて急いで隠れる。


「気のせいか……」


 しばらく経って騎士がどこかに行くと、リスタはメアに話しかける。


「早く出ましょう。じゃないと……」


「ニャッ!」


「……何か言いたいことがあるんですか?」


 リスタがそう言うと、メアはコクリとうなずいた。そうして今度は地面を爪でなぞるようにして空中に文字を書いていく。


[まずロマちゃんを起こして]


 リスタはメアにそう言われ、保温の魔道具を起動する。そうして持ってきていたブランケットでロマと一緒にその魔道具をくるんだ。そうしてしばらくしていると、ロマが体の調子を取り戻してきたのか、しっぽをピコピコと動かして見せる。そうしているうちに、そのしっぽの動きはやがて文字を書く動きに変わっていく。


[アタシの我儘に付き合ってくれるカシラ?ゴシュジン]


「……わかりました。何をすればいいんですか?」


[ついてきてほしい]


 そうしてロマはブランケットの中を抜け出す。少し寒そうにしているが、声をかけてもブランケットに戻ろうとはしない。


[ゴシュジンは顔がわからないようにフードをかぶってて]


 ロマにそう言われ、リスタはその通りにすると、メアがその肩に飛び乗り、メアもローブの中に入った。そのままロマが向く方向へとリスタは向かっていく。途中騎士たちがいる場所は、メアが気を引き付けたすきに入ったり、ロマが別のルートを教えたりしてくれたので何とか潜り抜けることができた。そうして到着したのは今夜行われるフロンツ王国第一王子の成人パーティー会場の近く。

 そこでロマやメアが録画の魔道具をリスタに見せつける。今この魔道具に録画されたものを見ろとでも言うのだろうか。そう思っている間に、その魔道具にロマとメアが魔力を分け合って注ぐ。すると、今日リスタが録画された方が先に流れ始めた。

 部屋の中には防音の魔法が仕掛けられており、音声は録音できていないが、しっかりと映像は録画できている。


 そこには、王冠をかぶった、この国の国王と思える30代後半の男性が高貴そうな服をまとった人間に殴られ、気絶させられている場面があった。それを見終わった後、もう1つの録画の魔道具も起動する。今回はどうやら音声付きのようだった。


「……」


 それをリスタは黙って聞く。魔道具に映っているのは先ほどの国王を殴った高貴そうな服をまとった人間と、10代半ばほどの少女だった。内容は、現在のフロンツ王国第一王子のクローツ・アルフ・フロンツの婚約者を失脚させ、婚約を破棄させた後に水晶に映っている少女が婚約者となる方法を話し合っているところであった。

 [むかむかしたから]。メアがそう言ったことがある。その言葉の意味がよくわかった。そうして魔道具を見続けていると、1つ、聞きなれた言葉があった。


「それでは、また成人パーティーの日に。今後とも”戴冠の檻”を御贔屓に」


「!!」


 それを聞いた瞬間、リスタは立ち上がっていた。そうして考えるまでもなく、リスタの足はパーティー会場へと向かう。


「ロマ、メア。あなたたちのやりたいことはよ~くわかりました」


 メラメラと心の中の炎が燃え上がるような感じがする。どこかで感じたことのある、懐かしさすら感じる苛立ち。


(……まだ、軌道を直せるはず)


 そう。第一王子がまだ少しでも婚約者を愛しているのなら。この証拠を見せることができればまだ立て直せる。


「誰だお前は!」


 パーティー会場の入り口。わざわざここから入らなくても侵入口はいくらでもあった。だが、それではだめだ。パーティー会場の中には貴族たちが大勢、そして何より王族がいる。そう言う人間たちには自分たちよりも明らかに強い威圧感がないと話を聞かせられないこともある。


「聞いているのか?おい!」


「フェレンダリオスの白槍(はくそう)


「お、おい、止まれ!おい!ぐあっ!」


 入り口にいた騎士にためらいなく白槍を突き刺す。外傷はないがその痛みによって騎士の気が逸れ、その隙にリスタは騎士を気絶させた。


「……お邪魔しますね」


 そして、リスタは小さく呟き、パーティー会場の扉を開けた。

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