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自由って素晴らしい!  作者: ミカンかぜ
第三章【私のために貴女に願う編】
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一話:今日はおそらく

 ジェーンの家で夕食を取り、お風呂に入ってからレピファと話していると、いつの間にか就寝の時間となっていた。今夜、リスタはロマとメアを連れてこの屋敷を出て行く。強くなるために旅に出る。魔王がもし復活したとき、1人で魔王といい戦いができるくらいには強くなっておきたい。


「……出て行く前に、プレゼントを渡されるなんて……」


 夕食が終わり、リスタはレピファからプレゼントをもらった。これから冬が来る。それに備えて暖かい上着をくれたのだ。そして、この上着の嬉しいところは上着の内側に大きなポケットが付いており、ロマやメアが入ることができる。どこでこんな服を見つけて来たのだろうと気になるところだが、そんな暇は今はない。


「ロマ、メア。皆さんには何も言ってないですよね?」


 リスタがそう言うと、2匹は頷く。そうしてリスタはレピファからのプレゼントと、自分の今ある荷物を全て持ち、そして、今までお世話になったことへの感謝を綴った手紙を部屋の中に残し、部屋の窓からベランダに出た。


「シャ~……」


 秋風がリスタの頬を撫でる。リスタにとっては少し冷たいが心地いいくらいの風だったが、ロマにとっては嫌な冷たさだったらしい。


「さっき貰ったプレゼントは私が暑いですし……一旦バッグの中に入っておいてください。ついでにメアも」


「シャー……」

「ニャ~」


 そうして2匹はリスタのカバンの中に入る。それを確認した後、リスタは夜風を感じるかのように目を閉じ、そして、言葉を紡ぐ。


「シェリルオーラの黒鎌」


 闇夜よりも黒い大鎌がリスタの手元に現れる。


(こうして心器を顕現せずとも魔力を循環させる方法も、できるならこの旅で見つけたいですね……)


 そうしてリスタはベランダから飛び降りた。心器を顕現しているリスタの身のこなしは軽く、地面に着地しても全く音がせず、それどころか着地したと同時に目にもとまらぬ速さで走り出す。家々の屋根を飛び越え、帝都の出入り口へとリスタは向かっていく。リスタの視界に写るすべての建物はすぐに移り変わり、新たな景色が見えたかと思うと、また過ぎ去っていく。そうして数十分走り続けると、帝都の出入り口が見えてきた。


「……またいつか、ですね」


* * *


「リスタさんリスタさん!テューネさんがですね……」


 レピファがそう言ってリスタの部屋に入る。しかし、中にはリスタはいない。どこかに行ったのだろうかと思い、レピファが部屋の扉を閉じようとすると、机の上に何枚もの手紙が置いてあるのを見つけた。その中の1つに[レピファさんへ]と書かれている。


「なんでしょう?これ……」


 よく見て見ると、他にもジェーンやテューネ。この屋敷の使用人たちに宛てた手紙がいくつもある。レピファはその中の、自分宛の手紙の封を切る。


「……えっ?!」


 レピファは手紙の中を見て驚き、机の上にある手紙を全て持ってテューネの元へと走っていった。


* * *


 帝都を出たリスタは、帝国に一番近い別の国。フロンツ王国へと向かうことにした。心器を顕現している今のリスタなら、5日もあればフロンツ王国へ着くことができるだろう。


(多分、今の私って馬が走るくらいと同じくらいの速度で走ってますよね……記憶を失う前の私っていったい……)


 記憶を失う前の自分がいったい何をしていたのかわからないのが今一番怖い。戦闘もそれなりに手慣れており、心器を顕現している間は一般人は出せないような速度を出せる。もしやどこかの国の騎士団の団長でもしていたのではないだろうかとリスタは考えた。が、もう1つ可能性がリスタの頭の中に浮かんだ。


(私、元々罪人用の…しかも死罪になった人の服を着てましたよね……もしかしたら本当はヤバイ犯罪者だったっていう可能性も……)


 旅をするにつれて自分が罪を犯した場所をめぐる危険性も出てくる。


「失念してましたね……」


 リスタがボソリとそう言ったとき、自分の口の中が乾いていることに気が付き、道の真ん中で止まる。そうして水筒を取り出そうと自分のカバンを開けた。すると、そこからメアがロマをくわえてよろよろと出てくる。


「ウニャ~……」


「あっ!ごめんなさい!カバンの揺れを気にしてませんでした……ちょっと休みましょうか」


「ニャ……」


 そうして道の端の方で水を飲みながらロマとメアを休ませる。帝都から1時間ほど走っただろうか。その分カバンの中で揺られていたはずなので、その分の休憩をはさむ。


(夜風、気持ちいいですね)


 リスタがのんびりと夜風に吹かれていると、メアはカバンの中から2つ干し肉を取り出し、1つをロマに差し出し、もう1つを自分で食べる。リスタはそんな2匹を見て、ついでに水筒の中の水も2匹に分ける。ただ、カバンが揺れたことでまだまだ目が回っているのか、あまり食べようとしない。


「ロマ、ごめんなさい。少し休みますから。ゆっくり食べてくださいね。メアは……」


「ミャウ?」


 と、リスタはメアに聞くが、メアはもぐもぐと干し肉を何事もなく食べている。


「どうやら大丈夫そうですね。まぁ、ロマの体調が戻るまで休憩しましょうか。そのあとは少し歩きましょう」


「シュルル……」


「すみません。今度から気を付けますので」


 そうして何分か経ち、ロマはもぐもぐと干し肉を食べ始める。そんなロマの面倒をメアに見てもらいながら、リスタは顕現していた心器を戻し、少しあたりを走る。


 それから10秒ほど経ち……


「ぜぇ、ぜぇ…はぁ……はぁ……つ、疲れる……」


 おかしい。頭がおかしくなりそうだ。心器を出している間に、馬が走るほどの速度で1時間走ってきたのに、心器を戻した瞬間に異常な速度でバテるのだ。普通に生きていれば経験しないような出来事だろう。


「…軽かった体が一気に重たくなるので……かなり不便な体ですね……」


 異常に高い身体能力を経験した後に体感する異常に低い身体能力というものはかなりの疲労を感じる。体でも感じるが、主に心で疲労を感じる。たとえるならば、ついさっきまで空高く、気持ちよく飛んでいたのに急に撃ち落されたかのようだ。

 そうしてリスタはようやく落ち着いてきた呼吸を取り戻し、そのまま大きく息を吐きだしてそのまま地面に手足を広げてその場に仰向けで倒れこんだ。芝生が柔らかく、こうして夜空のもとに倒れこむのは気持ちがいい。


「……メア、できればロマもこっち来てください」


「ニャ?」

「シャー?」


 そうして2匹は干し肉を加えたままリスタに近づいていく。そうしてリスタは近づいた2匹を捕まえ、思いっきり抱きしめる。ロマのぷにぷにとした弾力と少しひんやりとした感覚。メアのふわふわとした手触りと温かい感覚が伝わってくる。


「は~……ロマもメアもかわいいです…今度から寝るときはこうしていいですか?」


「ニャ~」

「シャ~」


 おそらく同意の鳴き声を出す2匹。そんな2匹を見てさらにリスタは抱きしめる。夜空がこちらを見守っている。今日はおそらく、一番気持ちいい旅立ちの日だ。

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