第二章閑話:寒さに弱い
十話~十一話の間でレピファが依頼を受けに行った時の話です
『アンタ、どうして爪を切るの?』
メアはレピファにそう聞いた。猫としてのメアの気持ちとしては、爪という武器を無くすのは惜しいことだ。実際、猫の獣人も爪を武器として使うこともある。
「う~ん……なんででしょう?」
『なんでアタシが聞いてんのにアンタが聞き返すのよ!』
「わぁっ!ご、ごめんなさい!…でも、ほんとに覚えてないんですもん!」
『覚えてない?』
「多分…爪が折れた時に出血したのが嫌だったのかもしれませんけど……それも確証はないですし……気がついたら爪を切るようになってたって感じですね……」
『ふ~ん……せっかくいい爪とぎスポット見つけたのに……』
「え?紹介してくれるんですか?」
『そんなわけないでしょ!見せるだけよ!見せるだけ!!』
「そ、そうですか……」
そう言ってレピファが悲しそうな顔を見せると、メアは焦って付け加える。
『ま、まぁ、どうしてもって言うのなら使わせてあげてもいいけど……』
「本当ですか?!じゃあ、また爪伸ばしてみますね!」
『ふんっ!仕方ないわね!』
そうしてメアはレピファにいい爪とぎスポットを教える。場所はどうやらジェーンの家の裏に生えている木だった。人の家、さらに言えば憧れの人の家だということで、そこで爪とぎをすることをレピファはきちんと断る。
『も~、そんなの気にしないといけないのなんて…ばれなきゃいいのよ、ばれなきゃ』
「いやいや、リスタさんもダメって言いますよ!」
『む……そうね』
そうしてメアと話していると、いつの間にかレピファは冒険者ギルドまでついていた。そうしていつもしていたように依頼を受ける。今回はEランクの依頼だ。最近レピファはDランク冒険者になったので、このランクの依頼をこなし続けても自身のランクは上がらないが、少し腕ならしにはちょうどいい。
「ま、今日はやらないんですけどね……それじゃあメアさん。一緒にお散歩でもします?」
『ん~?いや、アタシはアンタの肩に乗ってるだけでいいわ。それかロマちゃんみたいに首に巻き付いてもいいけど?』
「いや、メアさん、そんなに体伸びないでしょ」
『はぁ?本物の猫なめんじゃニャいわよ!』
フシャーとレピファの肩に乗りながら器用に背中の毛を逆立てる。
「じゃあやってみてくださいよ!」
『いいわよ、ほら、フニャ~』
猫は液体と言われるように、メアはそのままレピファの首からダラーンと垂れていく。背の高いテューネや、人間の平均身長くらいのリスタは無理そうだが、小柄なレピファくらいならマフラーとして使えそうなくらいには伸びている。
『どうよ、この体』
「ほぁ~……マフラーにできそうです!」
『そうでしょう?ロマちゃんよりもあったかいから冬には便利だわ!主様も喜んでくれるはず!今夜にでもそう伝えて頂戴!』
「で、でも、リスタさんって心器を出してない時はあんまり力強くないって……」
『それが何?』
「だから、普段なら重たいんじゃないかなぁと思いまして……」
『む、それもそうね……重さで言えばロマちゃんの方が軽いし……』
「それに、リスタさんは別にメアさんにもロマさんにも何かしてほしいわけじゃないと思いますから」
『そういわれたらそうだけど……アンタもあるんじゃない?主様とか、他にも誰かに何かをしたいって思うこと』
「そ、そういわれると……」
『でしょ?』
「う~ん……じゃあ、一緒に何かリスタさんにお礼の品を渡しましょう」
『それいいわね』
「じゃあ、何買いますか?リスタさんの好きなもの知ってます?」
『う~ん……わかんにゃい』
「じゃあ日常で使いやすいものにしましょう。そうですね……そろそろ冬ですし、さっきの話にも出たマフラーにしますか?」
『マフラー……冬……アタシ、寒いのは嫌にゃ~……』
「猫ですからね。私も寒いのは苦手です」
『あのトカゲメイドが言ってたんだけど、ロマちゃんも苦手みたい。というか寒すぎると死んじゃうらしいの』
「じゃあ、リスタさんが使えて、さらにメアさんとロマさんも使える防寒具でも買いますか?」
『そうしてちょうだい。アタシたち、いつでも主様のそばにいたいからね』
「そういう割には私たちやテューネさんについてる時もありますよね?」
『それはそれ、これはこれ。主様が「家にいて」だったり、「レピファさんと一緒にいて」って命令するからよ!』
「ふふっ…」
『笑うにゃ!!!』
「ご、ごめんなさい」
そんな会話をしながらレピファとメアはリスタとメアとロマが一緒に使えるような防寒具を買いに行くことになったのであった。
メアはレピファとの買い物の途中、リスタの心の揺れを感じとり、レピファにその場を任せて先にジェーンの家に帰りました。




