因縁と因縁
準々決勝が始まる。例によって第一試合はこの俺だ。相手はもうすでに判明している。ここまで雑魚としか対戦しておらず、万全の状態のエリファス・レヴィ・ドニゴール。今世における俺の父親であり帝国の牙として自他共に認める最強の騎士だ。
エリファスの秘魔術は【爆炎】これはこの国にいれば誰でも容易に知ることができる情報だ。大人から子供まで。なぜなら、エリファスが帝国の牙と呼ばれるようになるまでの軌跡は英雄譚として親しまれているから。
その英雄が万全の状態で、全力で俺を殺しにきている。あぁ、なんて素晴らしい日だ。前世ではもうすでに俺に本気で挑もうなんて連中は久しくいなかった。あのSランク冒険者もルーソンも悪くなかったがまだまだ若い。奪ってきた命の数が足りない。死線を超えてきた経験が足りない。
他の命を奪い続けて生き延びた奴だけが身に纏う隠しきれない血の匂い。その匂いが濃ければ濃いほどこちらの血も滾ってくる。
考えるまでもないがエリファスにとって俺はこれ以上ないほど殺したい相手だろう。自分の血筋から生まれた劣等種。貴族にあるまじき僅か5歳での辺境への追放。放った刺客。俺が表舞台に出てくる前でもこれだけある。
簡単に言えば俺の存在が表に出るだけでエリファスにとっては対外的ではあるが弱みとなるのだ。だからこそ俺を秘密裏に処理しようとした。そしてそれが全て失敗に終わっている。刺客の死体の半分が送り返されるというおまけ付で。
開会式ではあっさりと返り討ちにされた。そして優秀な侯爵家のことだ。ここまで勝ち上がってきた奴らのほとんどがハイロイド出身。つまり俺になんらかの関係があることぐらいは掴んでいるはずだ。
そうなれば俺は帝国の威信をこれ以上ないまでに叩き潰した張本人にして首謀者。俺から言わせてみれば負ける方が悪いのだが、権力者にあるように自分の思い通りにならないことは全て相手が悪いという理論だろう。
失われた帝国の誇りを取り戻し、後ろ暗い過去を全て払拭するにはこの俺を殺すしかない。
さぁ、エリファスよ。存分に死逢おうか。
係員に呼ばれた。闘技場へ会場入りする。俺が姿を見せるとそれまでざわついていた闘技場が一瞬で静かになった。罵声も歓声も聞こえてこない。静かすぎるような気もするがこれから行われるのはこれまでの甘っちょろい試合ではなく正真正銘の殺し合い。別に観客が騒ごうが関係ないがこれぐらい静かな方がいい。
シェラートの気に当てられ、闘技場全体が重苦しい空気に包まれた。
カツーン、カツーン、カツーン。シェラートが入ってきたのとは別の通路から聞こえてきた足音。その足音が徐々に大きくなるにつれ重苦しい空気が徐々に軽くなるような気がした。
観客は皆知っている。この試合の組み合わせを。そしてシェラートという恐怖の象徴に飲み込まれ、忘れていたことを思い出し始めてた。
そう、この試合はあの英雄が登場する試合だ。鳴り響く足音は観客の期待を否が応でも高める。静まりかえっていた闘技場は足音に呼応するように熱を取り戻し始め、ついにエリファスがその姿を表した時、その熱は最高潮へと到達した。
待ち望んだ英雄様のご入場だ。おぉ、見るがいい。あのエリファスの正装を。まさに英雄譚の衣装そのまんまではないか。これまでの戦いの場に赴くには舐めたようなローブではなく、ヘッドギアに竜鱗から作られたとされる軽鎧、両足には足を守るための頑丈に見えるブーツ。極め付けは両腕に装着された秘魔術の威力を存分に発揮するためだけに作られた特注の魔道具。
そう、エリファスはこの俺を殺すためだけに本気も本気、自身の持てる最高の装備でおめかしして来てくれたのだ。これに滾らないわけがない。
さぁ、殺し合いの時間だ。
【テ=テオ・ウ=ウー・ル=ルシフェル・ジ=ジンテーゼ】
テ「凄まじい闘気ですね、シェラートさん。一瞬で闘技場を飲み込んだ」
ウ「これだけ離れているのに肌を刺すような闘気がビンビン伝わってくるわい」
ここはイリスが用意した専用の天覧席だ。ここにはハイロイド組しか知覚できないように人よけの魔術が施されている。
ウ「お、英雄さんの登場かいな。こりゃどえレェ人気だな。シェラートの気を弾きよるか」
ル「あの人の剣圧はこんなもんじゃない。あれはまだ殺す気じゃない。楽しんでる」
出会った頃、一瞬だけシェラートの本気の殺気を浴びたことのあるマフィアのボスは回顧する。ほんの一瞬だけだったがそれでも肝が冷えた。あれほど恐怖を覚えた経験は後にも先にもその1回きりだったと言う。
ちなみにジンテーゼもこの場にいるが何かを食っているため話には参加しないようだ。
テ「あの装備は英雄譚で書かれたそれだ。これでまさに正義と悪のぶつかり合いになりましたね」
ウ「ははは、何を今更言うておる。こんな大会は元々皇帝が帝国に武を示したいがためのもの。それなのに推薦者を次々と打ち破ってる時点でそもそも悪になってんだよ。ましてやシェラートは1人殺ってる。試合の最中だから咎められちゃいないが目をつけられるにゃあ十分すぎる」
テ「はは、それもそうですね」
談笑しながら試合を眺める超雄たち。果たして彼らの目に試合という枷を外したシェラートはどのように映るのだろうか。
「随分と粧し込んでるじゃないか英雄サマ。」
「・・・」
「口を聞く気もないか。せっかくの親子の感動の再会だというのに。まぁ、いい。その貼り付けたような無表情の仮面の下から伝わってくるこの身を焦がすような激しい憎悪。その目の奥に隠しきれない冷たい殺意。せいぜい俺を楽しませてくれ」
「・・・」
エリファスが奥歯を噛み締めるギリッという音が聞こえた気がした。背後を向く際にチラリと見えたその表情は一瞬だが憤怒に染まっていた。
「試合、開始!」
合図と共にシェラートが鞘から剣を引き抜き、流水のように滑らかに剣が動き、中段で止まった。その瞬間、闘技場が水を打ったかのように静まりかえった。
「な、なんなのだ、、、貴様は、、、」
魔術が台頭しそれ以外の武術が衰退し過去のものとなって長き時が流れた。ここまで剣で快進撃を続けているシェラートだがそれでも闘技場に人々には時代遅れの産物としか映っていなかった。
しかし、その幻想はシェラートによっていとも簡単に打ち砕かれた。
剣を構える。たったそれだけの動作であるにも関わらず人々は剣の極致をはっきりと垣間見ることができた。剣を構えたシェラートから発せられる剣気は呼吸を忘れ、地面に体を叩きつけられたと錯覚するほど濃密で重く禍々しかった。
会場の人間が突きつけられた禍々しい剣気は目の前のたった1人に向けて放たれた剣気の余波に過ぎなかった。
エリファスも観客を遥かに上回るプレッシャーになんとか堪えていた。それは帝国の牙として、英雄としての矜持がなんとかエリファスの体を跪かせることなく両足で立たせていた。
それでも今は立つのが精一杯。背中を幾度となく冷たい汗が流れ落ちる。危機察知の本能は煩すぎるほど警鐘を鳴らしている。もはやエリファスにはシェラートの姿が霞んで消え、大鎌を持った死神に見えてならなかった。明確に死を突きつけられたのは何年ぶりだろうか。
先ほどの言葉は掠れ震えた声で無意識に漏れ出たに過ぎない。その声はシェラートには届いていなかった。
ジャリ・・・
それまでシェラートの剣気に飲み込まれてたエリファスだったが、シェラートが一歩踏み出し足音で我に返った。
「うおおおおおおおお!」
シェラートの剣気を振り払うが如く雄叫びをあげ、自らを鼓舞するように地面を爆破した。そしてようやくエリファスの目に闘志が戻った。
一瞬の間を置いて、これまで動きを見せていなかった両者が一気に飛び出した。
歩法:瞬迅
瞬時の脱力で体が崩れ落ちるエネルギーを足を踏み出すという方向を与えてやることで爆発的な加速を可能とする歩法。たった数歩で最高速への到達を可能とする基本の歩法。
歩法で加速する俺に対してエリファスは移動すら魔術で行うような。エリファスはその両足から爆炎を吹き上げ、文字通り爆発的な加速で前進してくる。
あっという間に間合いは詰まる。
「徹甲弾」
間合いが広いのはエリファスの方。ある程度近づき俺の剣が届かない絶妙な距離で魔術を使った。
目の前に灼熱色をした弾丸が無数に現れる。名前からして触れたら爆発する類の技だろう。この速度で前進しておりこの距離なら躱せないと思っているのだろう。舐められたものだ。
戦場氣法ー潜瞬 歩法:水転
瞬時に意識を潜らせる。1回戦で見せた五感を選択的に遮断することで脳の処理能力を格段に向上させる技。そして流れる水のように回転を加えて回避を重ねることで遠心力を得て
それを推進力へ転換させることでさらに速度をあげる歩法。
この2つで俺は銃弾の飛び交う戦場を生き抜いてきた。この技術がこの世界もで通用することは先の戦いで証明済。だがこの百戦錬磨のこいつが1回戦とはいえ俺の動きを見ていないとは思えない。裏があるはずだ。
奴が何を考えていようと攻撃を躱しながらも距離は詰まっていた。奴はまだ剣の間合いではないと思っているだろうがすでに10メートルを切っている。十分に剣の間合いになっている。
俺は剣を上段へ振りかぶった。胴がガラ空きになるがその代わりに絶大な威力を生み出すことができる火の構え。
全神経をただ目の前の敵を斬ることだけに集中させる一意の剣。地面が砕けるほど強く踏み込み、上段に構えていた刀を振り下ろした。
すでにこの時間合いは4メートルほどにまで縮まっていた。しかし、従来使っていた剣ではまだ届かない間合い。だからこそエリファスは油断していたのだろう。
だが、ルーソンとの戦いを経て俺にも1つ変化があった。それは剣だ。これまではひたすらに頑丈な刃渡り1メートルほどの標準的な両刃の片手剣だった。だが、今は思った形に変えることができる。
さすがは異世界産の武器だ。俺の意思を汲み取り形を変えるとは。今俺の手の中にあるのは斬ることに特化した日本刀の中でもその破壊力は他の追従を許さない大太刀。中には全長4メートルを越すものもある化け物級の太刀だ。
だがその威力は絶大。間合いを見誤ったエリファスは避けられないと悟ると右腕を突き出した。右腕と引き換えに斬撃を逸らす気か?そんなことはさせぬと渾身の力を込めて振り下ろすが、これまでの爆発とは比較にならないほど凄まじい爆発が起こり、剣もろとも弾き飛ばされた。
流石に剣を手放すことはしなかったがそれでも腕が痺れるほどの衝撃を受け、吹き飛ばされて宙を舞っている。
なるほど、あれが英雄譚の中で描かれていた専用魔道具の力か。俺を吹き飛ばしたのはエリファスの両腕に装着されている魔道具のせいだろう。
英雄譚によればその魔道具はエリファスの放つ爆炎を空間魔術で固定し複数閉じ込めておくことができるそうだ。その魔道具のおかげでエリファスは魔力を使わずに大火力の魔術を放てるというわけだ。
自身の魔力は移動と牽制、そして軽めの攻撃だけに振り分けることで長時間の戦闘を可能にしている。
大火力と継戦能力の双方に長けた爆炎使いの魔術師か。そりゃ敵からしてみれば悪夢で味方からすれば大英雄だろう。
「|連鎖する爆発<チェイン・エクスプロージョン>」
吹き飛ばされる俺を囲むように無数の火球が出現。エリファスの合図で連鎖的に爆発を起こした。爆風によってさらに上空へと飛ばされる。爆発のダメージはゼロではないが最大火力とはほど遠く微々たるもの。それより厄介なのは音と爆炎で視界と聴覚を封じられること。
それによってどうしても次の一手が遅くなる。そしてその一手はこの戦いに於いては致命的だろう。
剣を振るい爆炎を斬り飛ばす。炎系の魔術は軽い。一振りで爆炎を吹き飛ばし視界が回復すると同時に気配を探る。
上か。俺が爆炎に飲まれている間に頭上を確保したのか。
「塵すら残さぬ爆炎に飲まれて消えろ。|爆炎死<エンド・エクスプロード>」
エリファスの両腕に付けられた魔道具が光を放つ。手と手を握り合わせた先端に火球が出現。その熱量はさながら小さな太陽のようだ。握り合わされた両手の向く先はもちろんシェラート。
放たれるのは英雄譚の第1章で描かれたダンジョンより暴走して飛び出してくる無数の魔物をたった一撃で葬り去った英雄の代名詞ともされる技。観客はシェラートの死を予感するよりも英雄の一撃を間近で見れることに興奮していた。
小さな太陽はすぐに臨界点を迎え、全てを消し去る熱量を伴った爆炎が未だ宙を舞うシェラート目掛けて上から下へ放たれた。
シェラートの姿が一瞬で爆炎の中に飲み込まれた。それを見ていたほとんど全ての人々はエリファスの勝利を確信したことだろう。シェラートの本気を知る者以外は。
「温い、温いぞ!エリファスううう!!!」
闘技場が凍てついた。跡形もなく燃え尽きているはずのシェラートの声が聞こえ、一瞬何かが煌めいたかと思うと爆炎が跡形もなく消え去った。
爆炎が降り注いでいた地面の中央に確かにシェラートは立っていた。不発かと一瞬疑った人間もいたが、彼の周囲の地面が溶解しガラス質になっていることをみれば凄まじい熱量が降り注いだことは間違いない。
しかしシェラートは服を焦がしただけで無傷だ。それどころか数千の魔物を消しとばしても有り余るほどの熱量を持った魔術を剣で切り裂いてみせたのだ。
「エリファス、貴様の本気はこんなものではないだろう?一体、いつまで俺を待たせる気だ?」
「・・・」
空中にホバーしたままシェラートを見下ろすエリファス。その表情には変化は見られない。
「ダンマリかよ。いいだろう。貴様が本気を出すのを渋るようであれば、嫌でも出さざるを得ない状況に変えてやろう。」
そういうとシェラートは剣を仕舞った。そして、グッと足に力を込めたかと思うと次の瞬間には宙に浮くエリファスの頭上に現れた。
「いつまで俺を見下ろしているつもりだ?まずは地に堕ちろ」
シェラートの重すぎる一撃がエリファスに襲いかかった。剣をメインにしているシェラートだが体術も同等かそれ以上に強い。剣を使っているのは単に殺すのに適しているからにすぎない。
シェラートの本質は類稀なる肉体とその肉体から生み出される圧倒的なパワーなのだ。エリファスは咄嗟に爆炎を放って身を守ろうとするがその程度の小さな爆炎では攻撃を止めるどころかシェラートの肉体にかすり傷すらつけることは出来ない。最高の騎士と言っても近接格闘を忘れて久しい魔術師だ。咄嗟に魔術を放ったことは褒めてもいいかもしれないが防御がまるでなってない。
シェラートの拳が直撃。エリファスは受け身を取る間もなく一瞬で地面に叩きつけられた。
エリファスからしてみれば久しぶりに受けた物理ダメージがシェラートの一撃。身構えていたとはいえそれはあまりにも強烈だった。打たれる覚悟が一瞬で打ち砕かれ、無様に地面を転がるしか出来なかった。
地面に降り立ったシェラートは容赦無く追撃を開始する。転がるエリファスをボールでも蹴るかのように執拗に蹴り飛ばす。その一撃一撃は岩をも容易に砕く威力が込められている。いかに英雄といえども生身の人間。魔術はある程度集中しなければ放てず回復もままならないままシェラートの前になすすべもない。
シェラートの蹴りが鳩尾にクリーンヒットし胃の中のものをぶちまけるエリファス。
「この俺を相手に手を抜いていた報いを受けるがいい。」
これだけ英雄を一方的に嬲っておいてもなおシェラートの顔に浮かぶのは憤怒。剣を握っていた時のシェラートとはまた別の顔をみせている。
「まずは1つ」
これまでダメージの大きい顔面や腹部を狙っていた蹴りの矛先が急に変わった。グシャッと金属がひしゃげる音が響き渡った。
続けて金属の崩壊する音が響き渡る。
バキン
ついに致命的な音が響いた。音の発生源はエリファスの左腕。観客たちは声にならない悲鳴を上げた。英雄の象徴、エリファス専用の魔道具が見事に破壊されていた。
「2つ」
同じようにシェラートの蹴りが残った右腕の魔道具も破壊した。
「3つ」
腹部を蹴り上げられ宙に浮いたエリファスの胸に拳が叩き込まれる。なんの魔術も気すらも使っていない純粋な暴力。たったそれだけで竜鱗で作られたはずの鎧が砕け散った。
「4つ」
エリファスのブーツ、英雄譚では語られていなかったが見る人がみればその価値は十分に理解できる。エリファスの爆炎に耐え、空中を飛び回るエリファスの機動力を支える重要なブーツ。これ無しでは英雄譚は完成し得なかったとされる宝具。目にも止まらぬ斬撃で2つ同時に一刀両断された。
「そして5つ」
驚くべきことにシェラートは息も絶え絶えで半死半生状態のエリファスを顔面を掴みながら片手で吊し上げた。そしてそのまま掴んだ手に力を込めた。
たったそれだけでエリファスの頭を守る最高硬度の金属、オリハルコンで作られたヘッドギアが完全に砕かれた。
「ふん」
全身の装備を砕かれ、生身となったエリファスをつまらなそうに投げ捨てたシェラート。エリファスがどしゃりと地面に落ちたままピクリとも動かない。
その様子を見たシェラートが大きくため息を吐き、ゆっくりと背を向けて場外へ歩き始める。それを見た審判が慌ててエリファスの元へ駆け寄った。
「そ、そこまで!勝者、シェ・・・」
審判がシェラートの勝利を告げようとしたその瞬間、瀕死のはずのエリファスの肉体が爆炎に包まれた。それはとてもではないが英雄と呼べるような代物ではなく、暗く禍々しい地獄のような灼熱を帯びた爆炎だった。
その爆炎から感じ取れるプレッシャーは奇しくもシェラートが纏う殺気にどこか似たような点が存在していた。
人々はエリファスの体から湧き上がる黒炎に完全に支配されていた。
闘技場全体が何事かと成り行きを見守る。すると爆炎の中にゆらりと立ち上がる人影。人々がそれを認識した瞬間、爆炎ごと姿は掻き消え一瞬でシェラートの前に出現。それまでシェラートの顔があったところを何かが撃ち抜いた。
首だけ傾けて攻撃を躱したシェラート。しかし、余波で頬が切れ出血している。そして背後の壁は爆発の衝撃で大きく崩壊している。
明らかに尋常ではない様子のエリファスの姿がそこにはあった。
「第二ラウンド開始ってところかぁ?」
空気が変わった英雄を目にして声を発することができない観客たち。しかしシェラートだけは凄惨な笑みを浮かべているのだった。




