99話 タッグバトル⑨ ※祐乃視点
「そんな眼でボクを見るなああああああああああああああああああああああ―――――――ッ!!」
喉が張り裂けるような声量。
自分でも驚くような大声がグラウンド中に響き渡る。
観客の視線がボクに集まる。
そしてボクの視線は観客席に座る母親に向いている。
「ずっとボクを否定ばかりッ!何をやってもダメッ!これをやってもダメッ!もうお前には、うんざりなんだよッ!」
人と喧嘩することが怖く、暴言を吐くことを避けていた。
もし逆らえば、お母さんは怒る。
だからボクはずっと耐えていた。
怖くて、怖くて、怖くて――――
「ちょっとミスしたら怒鳴りつけるッ!わからないこと聞いたら、そんなこともわからないのかと怒鳴りつけるッ!99点だったら怒鳴りつけるッ!100点以外認めないお前なんてもう嫌だッ!」
コーチは認めてくれた――「負けてもいい」って。
弱いボクを認めてくれた。
『俺が強くしてやるよ』
嬉しかった。
コーチは一緒にいると温かくて――常にボクのことを想ってくれてる。
けどこいつはなんだ!?
ただ怒鳴るだけで、それ以上のことは何もしてくれない!
コーチと愛那ちゃんはボクを大事にしてくれる。
けど、お母さんはボクを大事にしてくれない。
なら、ボクはボクを大事にしてくれる人を選びたい―――ッ!
観客席で、ぼかんとしているアイツにむかって、ボクは今まで貯めていた感情を吐き出す。
「おまえはずっとイライラしてるッ!ずっと八つ当たりしてくるッ!仕事を頑張ってるのは知ってるッ!お父さんいないし、妹の世話が大変だし、ボクの生活にお金がかかってるのも知ってるッ!だから我慢しないと、って思ってたッ!お母さんのおかげで生活できてるのもわかってるッ!けどもう限界だよッ!」
ボクの言動に、何事かと観客達の視線がお母さんに集まる。
一斉に集められた視線。
注目の的となったお母さんは困惑していた。
新聞記者達はボクの豹変に驚きつつも、カメラのシャッターを押し続ける。
「ボクはおまえの機嫌を取る人形じゃないッ!おまえに毎日毎日毎日!怒鳴られて傷付いてる普通の人間なんだよおおおぉぉおお―――――――ッ!」
観客達がわざつく。
お母さんは祐樹を連れて、場を離れようとするが混んでいるせいで、うまく歩けないようだった。
そのせいで余計に注目を集める。
カメラマンのシャッターもお母さんに向いていた。
「うえ…うわ…うあああああ…」
感情が高まり過ぎた反動で涙が零れ落ちる。
ここ数日で何回泣いただろうか。
腕で目元を拭うが止まらない。
ダメだよ。まだ試合中なのに…
カレンちゃんとハヤトくんは、攻撃せず様子を見守ってくれていた。
いつまでも待たせていられない。
はやく涙を止めないと…
けれど、涙はとめどなく溢れ出る。
「祐乃。大丈夫か…?」
ぽんと肩を叩く、優しく温かい声。
涙でぐしゃぐしゃな顔を見られたくなくて、服にしがみつき腹部に顔を押し付ける。
「…ごめんね…コーチ…また泣いちゃった…」
「おまえは頑張り過ぎたんだよ。気にすんな」
背中をぽんぽんと優しく叩いてくれる。
温かい…
この人と…歩んでいきたいな…
「…"答え"は見つかったか?」
「うん」
「それならよかったぜ!」
コーチはニカッと笑ってくれた。
…嬉しい。
ボクを笑顔で応援してくれる…
こんなにボクのことを考えてくれる大人に出会えて幸せだよ。
涙が止まり、腹部から顔を離した。
「試合は再開できそうか?」
「うん!」
コーチに負けない思いっきりの笑顔。
頑張ってみた!
多分最高の笑顔だったと思う!
「よし!いい顔だ!やってこい!」
「うん。頑張ってみるね!」
真っ赤に腫れた目をこすり、カレンちゃんとハヤトくんに向き合った。
まずは謝らないと!
「待たせちゃってごめんね」
「…別にいいよ。さっきのアンタ、輝いてた。面白かったよ…」
「え、えへへ…?思い返すとちょっと恥ずかしいかも…」
ボクは顔を赤らめて、ポリポリと頬を掻いた。
あそこまで激高したのは人生で初めてだ。
あんな姿を大勢に見られたと思うと――顔から火が出そうだ。
「…けど、あんたの事情とこの戦いは別」
「うん。巻き込んじゃってごめんね」
「…謝んなくていいっての」
もう怖がらない。
ボクが大好きな『爆魔法』を―――心から信じるッ‼
「今のボクにできる全力を出してみる!」




