リベリアと悪魔
どさっ、とベッドの上に崩れ落ちるようにして倒れた。メリアは気を使ったようで、部屋には紅茶だけを置いていなくなっていた。
「アルト・・・・・・」
「無事だよ、お前の弟はな」
重たい頭を上げると、一人の少年が脇に立っている。白い髪に猛禽類を思わせる鋭く透き通ったような紅い瞳。身に纏っている服は、どこかの王族のような高貴な身分が着るものだったが、少年はそれを豪快に着崩している。
「リベリア・クラウソリスであってるな?」
「そういう貴方は?」
私と同じぐらいの少年は、礼節に沿った品のある一礼をした。
「俺の名は、リオン・マーキス。どうぞ、リオンと」
その礼に、私は慌てて姿勢を正しベッドから立ち上がると、ドレスを摘まんで優雅に。
公爵令嬢なんだから、少しぐらい威厳を・・・・・・
「お初にお目にかかります。私は、リベリア・クラウソリスと申します。以後、お見知りおきを」
その返しが可笑しかったのか、リオンと名乗った少年はぱちぱちと瞬きをした。
「驚いた。俺らを呼んだやつは大抵踏ん反り返るか、泣き叫ぶのどちらかなんだが。例外、っていったところだな。契約者としては及第点をくれてやる」
「どうも。そこの椅子、座っていいわ」
対面した二つの高級そうな(父が買ってきたから値段は知らない)椅子を進めると、リオンは腰を下ろした。対面する形になった二人だが緊張してないのはリオンだけで、リベリアは不安と緊張と警戒で臨戦態勢に移行できる状態だった。
「じゃあ、ひとまず説明してやる。何から聞きたい?」
「全て。私は、何も知らないもの」
リオンが先程の声と同一人物なのは予想がついていた。少年でありながら、声は大人びていて感情を伺うことが出来ない。張りがあるその声は、上手く使えば女性の一人や二人を落とすことは可能だろう。
「ンだよ、めんどくせぇな。俺の正体に心当たりは?」
「さっきの声の人」
「それ以外で」
僅かに考えると該当するのは、不審者、念力使える人(頭の中に話しかけられるとか、それ以外ない)、同世代の少年、ぐらいしか思いつかない。
「マジかよ、全然分かってねぇな。
呼び出しに応じた側としては薄々気付いてほしい所であったんだがな」
リオンは椅子に踏ん反り返ったまま、足を組む。
「俺は悪魔だ。それも結構強い」
にやり、と口を吊り上げて、リオンは話し始めた。




