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リンside 金と銀の姉 盗賊side 盗賊たちの幸運だった日

※遅くなり申し訳ありません。

まだ時間が掛かりそうなのでしばらくは不定期になりますが、書きあがり次第投稿しようと思います。


※今回の視点はリン視点と盗賊視点になります。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ リンside


私には何が起きたのかは分かりませんでした。


少し距離のあるところで首筋に薬品を打ち込まれ、私が必死に呼びかけていてもゆっくり目を閉じようとしていたお姉ちゃん。

そんな絶望的な場面で、突然爆発したような音が鳴り響き、私は驚いて目を閉じ耳を押さえ、身を丸めてしまったからです。



どれぐらい時間が経ったかは分かりません。

瞑っている目には涙がたまってしまい、必死でいつ終わるか分からない暗闇の中に意識を落とし身体を震わせていると、不意に頭に手を置かれました。


体がびくりと飛び上がり、これから何をされるのか…、私は悪いほうに悪いほうに考えてしまいました。


そうして身を縮こませて耐えていると、頭に置かれた手はゆっくりと優しく髪を撫でてくれました。

最初は何をされているのか分かりませんでしたが、その撫でる手つきはとても優しくて、私を怖がらせないようにしているようでした。


しばらく撫でられていると身体から徐々に力が抜けていって、ゆっくり目を開けることができました。


そこで初めて誰が撫でてくれているのか確認できました。

見上げたその人は金色の髪と金色の瞳をもち、こちらを慈しむ様に見つめ優しくこちらを撫でてくれながらも、その体の半分ほどを赤黒い鮮血に染めた、とてもアンバランスで綺麗な女の人でした。


しかしその姿はとても神々しくて、恐怖に身が竦むよりも呆然と見惚れてしまう方に傾いてしまい、見上げたまま固まってしまいました。


その人はこちらを優しく見つめ、頭を撫でてくれながら



「もう大丈夫だよ。あいつらは見えないように消したからね。」



鈴を鳴らしたような声でそう私に声を掛けてくれました。

そこでようやくこの女の人が何者かわかりました。



「……お姉ちゃん?」



髪や瞳の色は違うけど、その雰囲気や格好などはこの牢屋で出会ったお姉ちゃんの姿そのものでした。

私がそう声を掛けると、お姉ちゃんは花が咲いたような笑顔になり



「半分は正解ね、ふふ。」



と私に笑い掛けてくれて、頭をぽんぽんと優しく叩いてくれた。

お姉ちゃんは目線を合わせるために屈んでいた身体をすっくと立ち上げ、こちらを優しく見つめたまま手を差し出してくれた。


その手を取り、私も身体を立たせてもらいました。

しばらく私は呆然とお姉ちゃんを見つめていましたが、こちらの視線を気にせずお姉ちゃんは扉のほうに歩いていきました。

扉の前まで歩みを進めた後、お姉ちゃんはこちらに視線を向け、私に手招きするように手を動かし、そこでやっと自分が棒立ちしていたことに気づきました。


私は慌てて、お姉ちゃんの傍まで走っていくと、こちらの頭をまた優しくぽんぽんと叩いてくれてその後声を掛けてくれました。



「色々聞きたいこともあるとは思うけど、今は時間がないからとりあえずここを出ましょうか。」



そうこちらに声を掛けた後、お姉ちゃんは扉の方に向き直り、右手を扉にかざしたと思ったらものすごい爆音が部屋に響きました。

驚きで身体を震わせ、ひぅっと変な声が自分から出て耳を押さえ、目を閉じてしまいました。


身を縮こませていると、また優しく頭に手を置かれぽんぽんと叩かれました。

そこでゆっくり目を開けると、扉が物凄い形にひしゃげて吹き飛び、通路奥に転がっているのが見えました。


呆然とその光景を見ていると、隣にいたお姉ちゃんは独り言を呟くように



「まだ力加減が分からないわね。まぁ牢屋から出れたしオーケーオーケー。」



とケラケラと笑いながらそう呟いていました。

お姉ちゃんの方に視線を向けていると、こちらの視線に気づいたのか、私と視線を合わせるとにんまりと笑い先程と同じように頭をぽんぽんと優しく撫でてくれました。



「さ、どうせ時間の問題だったでしょうし、これで相手の方からも寄ってくるでしょ。」



そうあっさりと私に声を掛けてくれた。

私はそんなお姉ちゃんを呆然と見ていることしかできませんでした。

先程までお姉ちゃんがとても危険な状態だったのに、そんなことは何も無かったかのような振る舞いにどうすれば良いのか分かりませんでした。


見た目も変わり、首輪も付いているはずなのに盗賊を殺したり…、分からないことだらけ。



「お、お姉ちゃん…。なんで…んっ」



私が色々と聞こうとつい口を開いたら、お姉ちゃんが人差し指でこちらの口を塞いだ。



「さっきも言ったけど、あんまり時間が無いの。とりあえずゴミ掃除が終わったら色々答えてあげるから、今は私の後に付いて来てね。」



そう言ってこちらをにっこりと見つめた後、人差し指を離してくれた。

納得などはできませんでしたが、とりあえずこくりと頷くと、お姉ちゃんは通路の奥に視線を移しました。



「さて、とりあえず二人…」



そう呟くと、一瞬のうちに目の前からお姉ちゃんの姿が消えました。


その光景にびっくりし、あちこちに視線を移していると通路の奥にお姉ちゃんの姿を見つけました。

金の髪を靡かせて、右手を頭上より上に掲げていて、その手には何かを挟んで持っていました。

その何かを確認する前にお姉ちゃんが手を握ると、その何かは赤い液体を撒き散らしながらぐちゃりと潰れました。


私からは距離がかなり離れていましたが、むせ返るような血の臭いが鼻につきました。

私は咄嗟に口全体を覆い、臭いと吐き気を必死に我慢しました。


通路の壁に背を預け、目に涙がたまってきますが必死に悲鳴を抑え、呼吸を整えて吐き気を押さえ込んでいきました。

視線を地面付近に下げていたのもあり、地面に影が差したのに気づいて顔を上げると、新たに身体に赤い液体を浴びたお姉ちゃんの姿がありました。


さきほどとあまり変わらない姿ではありましたが、血を浴びる瞬間を見てしまったせいか今度は恐怖が勝ってしまい、私はお姉ちゃんの姿を直視できなくてつい視線を逸らしてしまいました。



「あはは…、さすがにバイオレンスなんだけどね……。まぁ今は我慢してもらうしかないかな…。リン。私が怖いなら離れていてもいいから、とりあえず私が見える位置にだけはいてね。」



そう言葉を掛けられてお姉ちゃんの顔を見ると、悲しそうな顔をしながら苦笑していて、私も何か言葉を掛けようと思いましたが、結局何も答えられずにお姉ちゃんを見つめるだけしかできませんでした…。

お姉ちゃんはそれだけを伝えるとまた歩みを進めて通路の奥に歩いて行こうとしたので、私も遅れないように付いていくだけしかできませんでした。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 盗賊 親分side


俺は索敵を使い、アジトを荒らしまわっているやつの位置へと急ぐ。

俺らがアジトとして使っている洞窟は入り口や出口は無数にあり、内部も迷路のように入り組むように作ったのだが、内部にいる侵入者もこちらのいる位置が分かるのか

正確に部下たちの元に向かって行っていた。



「……くそっ、また一人殺されたか…」



そんな独り言を呟きながら俺は侵入者の元へ急ぐ。

部下のやつらは烏合の衆ではあるが、実力自体はそこそこあり油断さえしていなければそこいらの冒険者にも引けを取らないはずであった。

それなのに…



「何だこの殲滅の速さは…、本当にこれは人間なのか…?」



スキル索敵の効果で大まかにではあるが、大きさや重さなどが分かり、それらの情報では成人男性より低い身長で重さもあまりなく、人間だとわかるものであった。

このアジト周辺は人型の魔物は出ないはずであり、仮にいたとしてもここまでの速さで殲滅できる強さの魔物など、どこにも情報があがらないのもおかしい話である。

それだと冒険者かと思ったのだが、それも可能性としては低いだろう。

このアジトを拠点にしだしたのは一週間ほど前であり、冒険者どもに情報が漏れるのが早すぎるし、もう一つ疑問点がありそれがずっと引っかかっている。



「…二人の侵入者に、30人以上の部下がやられるものなのか…」



さきほどから何度も索敵を使っているのだが、その度に動く侵入者の数は二。

しかも直接戦っているのは一人だけのようだった。そしてその一人に近づかれると突然部下の反応が消える。

たとえこちらが二、三でぶつかっても一瞬で全員の反応が消えている。

冒険者ならば二人などと少ない数で行動を起こすはずが無いし、化け物なのか、それともそれに近い人物なのか…。



「……これは、嫌な予感がするな…。」



そして突然俺の目の前に一人の少女が現れた。

金色の髪を靡かせて、髪の色と同じ金の瞳でこちらを見つめ、全身を返り血で真っ赤に染めた少女。

そきほどから俺が追っていた侵入者であろう。

いつの間に近づいてきたのか、さっぱり分からない。



<あなたで最後かしら?、と・う・ぞ・く・さん♪>



少女の動きを窺っていると、突如頭に声が響いた。

それに驚き、それを起こしたであろう少女を見ていると、少女はにんまりと笑みを深めてこちらに笑いかけた。



<あはは。やっと言葉が通じるわ。やはり会話って大事ね>



「……お前は何者だ」



<あれ?……ああ、そっか。こちらで会うのは初めてかしらね。初めまして、私を倒した盗賊さん。>



「…お前のような化け物と戦って勝った覚えはないぞ」



<化け物とはひどいわね。まぁそれはいいわ。それより私に勝ったのに忘れているのは許せないわね。ほら、私の耳でも見れば思い出すんじゃない?>



そう頭に声が響き、少女は耳に掛かっている金色の髪を手でどかし、こちらに耳が見えるようにした。

その耳は先端が少しとがっていた。



「…お前は、あのときのエルフなのか…?」



<うんうん。正解。耳で分かられるのもアレだけど…、私は寛大だからね。許してあげるわ。>



少女はケラケラと笑い、俺との距離をゆっくりとつめてくる。

俺はそれに気づき、冷や汗を垂らしながら少しずつ後退し会話を続ける。



「それは助かるな。それなら寛大ついでに俺を逃がしてくれないか?溜め込んだ金などはくれてやるからさ…」



<うふふ。それは無理ね。私って結構執念深いから、勝ち逃げは許さないの。>



口元に笑みを残し、徐々に歩みを速める少女。

少女の姿はとても美しいはずなのに、その笑みと体中に付いた鮮血がそれを否定するように輝いている。


俺は来た道を戻るように全速力で駆け出した。

こいつはやばい、今まで培った盗賊としての経験が脳内に警報として鳴り響く。小細工も仕掛けている暇がないであろうことがわかる。

あの時のエルフがなぜこのような姿になったのか、なぜこんな強さを隠していたのか、そのような疑問も頭を掠めるがそれすらも凌駕して恐怖で埋め尽くされる。

本能の赴くまま逃げを選択したのだが、その選択は悪手だった。逃走劇は始まる前からすでに終わっており、俺は何かに躓いたような形で転び、うつ伏せに倒れてしまった。



<あはは。だから勝ち逃げは許さないって言ってるのに。あなたには私が受けた苦痛を何倍にもして返さなくちゃいけないんだから…>



徐々にこちらに近づいてくる足音と共に頭に声が響く。

俺は立ち上がるため手をつこうとするが、意思に反して一向に立ち上がれなかった。

疑問に思い腕を見てみると、両腕とも二の腕から先がなかった。

それに気づいたときに痛みが遅れて走り、俺の口から絶叫とも付かない声が漏れる。

腕からだけでなく、足にも痛みが走っている事から足も同様に無くなっているのであろう…。


体を達磨にされ、しばらく痛みでのた打ち回り、必死で足掻こうとしていると足音が頭の付近まで近づいているのが分かった。



「ぁぁぁぁあ…、た……たの…む、…たすけ…」



<ええ、助けてあげる。その痛みからね…>



最後に俺が見た光景は、美しい少女が笑っており、俺の頭に優しく手を置いた瞬間までだった。



こうして36人の盗賊団は、一人の少女に一時間と掛からず全て滅ぼされたのだった。



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