13~黒髪の人物
本日は二話投稿です。
尿意は治まり壷の上に跨った状態ではあるがとても動ける状態ではない。
すんすんと鼻を鳴らし、小さく嗚咽を漏らしながらただいま絶賛男泣き中でる。
あ、今は女だった。
さすがに人に見られながらとか恥ずかしさが爆発し、今のような状態になっても仕方ないだろう。
何であんな恥辱プレイをしなければならないのか…。
しかし、男の時はこんなに涙もろくなかったのだが、今の体はどういうわけか涙腺がゆるいようである。
すでに黒髪の人物から視線は外し、顔は俯けながら両手で顔を隠して、落ち着くまで待っていると、唐突に声をかけられてしまった。
「あの…、…すいませんでした。」
一瞬誰の声なのか分からなかったが、自分以外黒髪の人物しかいないのだからこの者の声なのだろう。
おとなしい感じの声で声色は高く、まだ幼さを感じる声であった。
とりあえず、このまま無視をしたりして無言になるのも空気が悪くなりそうなので、心の中で深呼吸しながら落ち着いて返事を返すことにしよう。
「いえ…、こちらこそ、お見苦しい物をお見せしました…。」
幾分声を詰まらせながらも何とか返事を返せた。
「そんなことは……、…その…」
そこで間をしばらくおかれ、どうしたんだろうと顔を上げて黒髪の人物を見てみると、体育座りを続けたまま、顔はこちらを向いているが視線だけはそっぽを向き、頬を赤く染めながらポツリと呟いてくれた。
「…神秘的で…。綺麗だったのでつい見続けてしまいました…。」
「しん……ぴ、てき……?」
ついそう呟くと、視線をこちらに合わしてくれて濁った碧眼でこちらを見ながら小さくこくりと頭を下げてくれた。
「お姉ちゃんの雰囲気が幻想的で、…とても綺麗でした。」
矢継ぎ早にそう言われ、どう返せばいいのか呆然としていると、じっとこちらを見つめながら首だけをこてんと傾けて「…どうかしましたか?」と声をかけてきた。
「いや…、えっと……、…何でもないです。」
そう返すのが精一杯だった。
視線を逸らし、先ほどの言葉を噛み砕いて考えてみる。
神秘的で、綺麗……。
とてもトイレ中の姿に言うような言葉ではないのだが、黒髪の子の雰囲気や表情などから本心で言ってるのはひしひしと伝わってきて、困惑してしまったのである。
何なのだろうか、この子の中ではトイレ中の姿が素敵に見えたりするのだろうか…。
それともこの子なりにこちらを励ましてくれているのだろうか…。
うむ……、わからん…。
とにかく、とりあえず初めて会話ができる子に会えたのだ。このまま色々話したいと思ったところで頭の中に電流が走った。
そう、会話ができたのである。
ハッっと目を見開いて、黒髪の子に視線を合わせると、膝に顎を乗せ半目に開いたジト目の視線を地面に向けていた。
しばらくこちらが見つめていると、視線に気づいたのか地面に向けていた視線をこちらにゆっくり向け、先ほどと同じように首をこてんと傾けた。
心臓が早鐘のようになっていくが、ごくりと一度生唾を飲み込んだあと、気持ちを落ち着けながらゆっくりと聞いてみた。
「君は……、日本語を話せるのか…?」と。
黒髪の子をじっとこちら見つめながら、傾けていた首を元の位置まで戻し、そして先ほどと反対方向に首をこてんと傾け
「ニホンゴ……、とは何ですか…?」
頭に?マークが出ているような顔をして、こちらをジト目で見つめながらそう答えてくれた。
「いや…、今、会話ができているよね……?、その言葉は日本語ではないのか…?」
そういうと、首の位置をゆっくりと元に戻した後、しばらく間をおいて
「…私が使っているのはラタトゥス語ですけど、……えっと、一般的に使われる人族の言語でお姉ちゃんに合わせて言葉を使っていたんですけど、もしかしてお姉ちゃんは人族ではないのですか?」
と答えてくれながら、壷の上に跨っているこちらの姿を下から上へとゆっくりと見ていき、耳に視線がいった所でジト目で半分しか広がっていなかった目を大きく見開き、「エル…フ……?」と呟いていた。
その後、どちらとも言葉を紡げずに、しばらく部屋は静寂に包まれてしまった。
視線だけは合わせながら、どうしようかなと色々考えてふと名前を聞いていないのに気づいた。
「そういえば…、君の名前は?」
「…、リン・トゥル……、いえ、リンといいます。」
……何か言いかけたのは気になるが、あんまり突っ込むより会話を成立させたほうがいいだろう。
「それじゃあ…、リンちゃんと呼んでいいですか?」
そう聞いてみると、首を小さくこくんと下に動かしてくれた。
さて、ここで黒髪の子あらため、リンちゃんについて追記事項が二つほど増えた。
一つは俯いていたのでよく分からなかったのだが、どうやら彼女もエルフのようであった。自分の耳よりも多分長く、下に少し傾いているが綺麗な三角耳である。
そしてもう一つが上記にも書いたが、『彼女』であった。
体育座りの体勢から変わってはいないのだが、背筋を伸ばしてくれたため上半身を見ることができたのである。
小ぶりながらもしっかりと夢が詰まっているのを確認できた。
顔立ちを見ても幼く見え、中性的で正直性別がどちらか分からなかったのだが、リンくんと早とちりとかで呼ぶ前に気づけてよかった。
「それじゃあリンちゃん、色々と聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
真面目な顔をし、リンちゃんを見つめながら答えると、最初見たときよりも幾分生気を取り戻したジト目の碧眼でこちらを見つめながら、小さくこくんと首を下げてくれた。
「じゃあ…、まず最初に聞きたいんだけど……。」
少しためをつけたあと、今一番困っていることについて聞いてみることにした。
「トイレの後の処理が分からないんだっ……。」
声が若干震え、顔は真っ赤になっているだろうが、とりあえず壷から降りたいため一番の難題から解決することにした。
一応ヒロイン予定の子になります。
話の流れはできているのですがまだ書き出していない為
幾分ゆっくりですが、もうしばらくお付き合い頂けると幸いです
読んでいただきありがとうございます。




