12~恥辱
お、落ち着け……
まだ慌てるような時間じゃない…
心臓はドクドクとスピードを上げているが気分だけでも落ち着けて、黒髪の人物の様子を窺う。
髪は肩ぐらいまで流し、服装はこちらと同じ裸。
肌は白く全体的に細い線から女の子だとは思うが、まだよくは分からない。
背中がゆっくりと動いていることから呼吸はしているらしく、死んではいないようである。しかし、顔が膝で隠されており、膝を抱えて丸まっているのでそれ以上詳しくは分からない。
「…すぅ、…ふぅ。」
相手の様子を確認しつつ、小さく深呼吸し呼吸を整えていく。
相手は動いたり話しかけたりはしてこないようだが、まだ油断はできない。
服装が裸とかの点から盗賊っぽいやつの仲間ではないかもしれないが、こちらに友好的だとは限らないしね。
とりあえず、いつでも動けるよう気づかれないように軽く体を動かしていく。
そこでふと思い出したのだが、盗賊との戦闘で折れたはずの腕が治っていた。
強く触るとまだ少し痛みが走り、完璧に治ったりではないが戦闘の時のような痛みは無く、これなら動かしたりしても大丈夫であろう。
なぜ治っているのかは疑問ではあるが、今考えても仕方が無いことだしそれよりは状況判断に勤めるとしよう。
順に体の部位なども触り、状態を見るが首輪以外は特に問題ないようである。
そう、さらっと最初は流したが首輪が付いているのである。
苦しかったり、首が動かせないなんてことはないが
現状、盗賊っぽいやつの趣味でつけられているのか、はたまた小説などである
奴隷などがつける何かしら効果が付いている首輪なのか、今現在は確認のしようが無いため、これも放置することにする。
そこまで自分の体を再確認し、相手の様子を再度窺うがやはり動いたりはしていないようで、先ほどの場所から変わらず、格好もそのままである。
ふむ
……もしかすると寝ているのか?
しばらくさらに見ていたが、規則正しく背中が動くだけで他はピクリともしない。
………
とりあえず警戒はしておこう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
さて、部屋などをさらに確認しようとしたところで、少し困ったことが起きた。
考えてみれば森で目覚めてから一度もきていないのだから当然ともいえる。
そう
花を摘みに行きたい。
一先ず、すぐに決壊する事はないだろうがお便所様を探すのが一番の最優先事項であろう。
再度辺りを確認する。
物として見えるのは、隅のほうにある壷っぽいもの3つ、黒い髪の人物、黒髪の人物との反対の隅にある謎の物体。その近くに申し訳程度の襤褸切れ、それぐらいである。
謎の物体自体は小さく、調べて見ないと何なのか全く分からないが、今は関係ないだろう。布も放置。人も関係ない。
いや、トイレがなかった場合聞くのもありだが、危険度が高いし最終手段にしたい。
残るは壷三つ…。
あ、そうだ。一応扉の確認もしておこう。
黒髪の人物の様子を見つつ、扉のほうに足音を立てないように移動する。
こちらは裸足(全裸)だし、足元も固い土で足音を響かせないように歩くのは簡単ではあった。
すこし早歩きにはなったが…。
扉を確認してみる。
音などを鳴らさないようにまずは表面を触ってみるが、扉は冷たく鉄か何かの金属でできているようである。少しざらついたりはしたが、触った感じ脆くなっている所はなく、蹴破ったりは多分できないであろう。
さらに扉をくまなく見てみると、取っ手が付いていたので細心の注意を払いつつ、軽く押したり引いたりしてみる。
うん…、分かっていたことではあるがどちらにもびくともしない。
鍵穴などはなさそうなので、もしかしたら特殊な開き方をしないといけないのかもしれない。
と、色々と考察するのはいいが、徐々に余裕がなくなってくる。
結構波が早く、なんか我慢がしづらい。
どこに力を加えればいいのかよく分からないのである。
下手をすると出そうでまじで怖い。
こうなると、残る候補は壷っぽいものである。
初めから若干これではないかなとは薄々感じてはいたのだが、現代日本で生活してきたので躊躇してしまっても仕方ないことであろう。
そう思いたい。
二度ほど黒髪の人物の様子を見てみたが、先ほどと変わらないようなので扉に行くよりもさらに早歩きで壷っぽいものに向かう。
目の前に行く前に、すでに匂いで大体当たってそうではあるが一応三つ確認してみる。
やはり壷であっているようで、二つは蓋がされており、一つは水がためてある壷のようである。
蓋付きの一つと、水がめは自分のお腹より少し下の高さで、口は小さいが両手で持つようにしても指が付かないぐらいの外口径がある。
もう一つの蓋付きの小さい方は、口は同じぐらいで高さと外口径はそこまでなく、今の自分でも十分運べるであろう大きさである。
…ちなみに、小さいほうの壷の方が異臭度合いがひどい。
トイレはやはりこの蓋付き壷なのだろう。
そろそろ膀胱が危険なのですぐにでもしたいのだが…
ちらっと、黒髪の人物を見る。
やはり先ほどと変わらず、膝を抱えて丸まっている体勢で顔などは見えない。
………
少し考えてみてもらいたい。
トイレとはね、誰にも邪魔されず、自由で なんというか救われてなきゃあダメなんだ。
独りで静かで、豊かで…
あ、だめだわ。
限界だわ。
周りを気にする猶予すらなさそうである。
大きい方の壷の蓋を取り、こけたりしない様にうまく壷の上に跨る。
そこでまたもや新たな問題発生。
マイ・サンの行方不明である。
え!?、これどうやってするの!?状態である。
跨った時点でもう限界は突破していたので、若干惨事は起きたが初めてにしてはうまくいったほうであろう。
そう思わないと涙が出そうである。
両手でうまくバランスを取りつつ、体を傾けたりして頑張る。
行為中、部屋の空間は無音であったので音がよく響く。
自分では確認できないが、他の人が顔を見れば恥辱で顔が真っ赤であろうことがよくわかる。明かりなどがなくて本当によかった。
我慢していたせいか終わる気配が全くなく、若干震えながら恥辱に耐えていると
ふと何かの視線を感じた。
額から汗が出そうになるのを抑え、下腹部に向けていた視線を部屋の隅にいる唯一気配を出しそうなものに合わせると、その 人物 と目が合った。
半分ほどしか開かれていない目は生気を感じられず、濁ったような碧眼でこちらを見ている。
それを確認できた後、自分は頭の中が真っ白になった。
音だけが響く中、お互いに視線を逸らしたり瞬きなどすることもなく、じっと見つめあう。
片や目を見開いているであろう自分、片やジトッとした生気のない目で見つめてくる黒髪の人物。
先にこの奇妙な空間を我慢できなくなったのは自分であった。
「……ふぇ、…うぅ…ぅ…」
嗚咽が我慢できず小さく体を震わせ、視界が徐々に歪んでいく。
目からは溢れ出した塩水がとめどなく出てくる。
顔を隠したり塩水を拭いたいがまだ行為中であり、バランスを取るために両手を使っているため、拭うことも隠すこともできない。
視線だけはお互いに見つめ合いながら、尿意が治まるまで部屋の中は水が跳ねる音と嗚咽の音だけが鳴り響いていた。




