武具ギルドの黒字は、戦場の赤字でできている
公開監査は、魔王城の中庭で行われた。
人間の監査官。
魔王軍の幹部。
勇者パーティ。
黒狼部隊。
これほど顔ぶれの悪い会計説明会は、王国史にも魔王領史にもないだろう。
僕は黒板に二本の線を引いた。
「こちらが王国軍の支出。こちらが魔王城の修繕費。そして、真ん中が武具ギルドの利益です」
二本の赤い線の間に、一本だけ黒い線が伸びている。
リゼリアが低く言った。
「我らが赤字になるほど、奴らは黒字になる」
「はい」
勇者が拳を握る。
「俺たちは、誰のために戦っていた」
誰も答えなかった。
グレンが王印つきの監査記録を掲げる。
「武具ギルドへの臨時監査を申請する。勇者パーティの請求書、魔王城側の取引記録、双方の照合をもって証拠とする」
中庭がざわめいた。
黒狼部隊の一匹が、そっと僕に尋ねる。
「これで城は黒字になるのか」
「まだです」
「まだか」
「でも、赤字の穴は見えました」
リゼリアが前へ出る。
「ならば埋める。魔王城は、もう誰かの黒字のために燃えない」
その言葉に、魔物たちが拳を上げた。
勇者も、少し遅れて剣を掲げる。
剣と爪と帳簿が、同じ方向を向いた。
僕は次のページを開く。
戦争を止めるだけでは足りない。
戦争で儲かる仕組みを止めなければ、また誰かが火をつける。
魔王城再建の本当の敵は、ようやく帳簿の上に姿を現した。
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