【第四章 - 8】可愛い制服
ーー2週間後。
そう、アドゥリン孤児院の交流祭日だった。
アドゥリン孤児院、そのアドゥリンは『高貴な』という意味を持ち合わせる言葉。その名の通り、孤児院周辺は高級住宅街ばかりで、ルミナスタウンの貴族が沢山住む場所であった。
それなのに、何故こんな所に孤児がいるのだろうかーーなんて、思ったが、それは隣町に原因があるらしく……。
アドゥリン孤児院周辺の物価が高いお陰で隣町の物価も高騰、隣町は一般市民が住む街なので、それはもう貧困に悩まされているらしい。
それには、貴族達も頭を悩ませているそうで……そもそも土地的に物価が高いのである。
それは、ルミナスタウンへと一直線で繋がる道がない上、迂回しても崖や危険な魔物の多い道を通らなければならないから。
そんな、場所に存するアドゥリン孤児院。そこは、今までの孤児院とは比べものにならないほど良い環境だった。
「こんにちは、『虹色の剣士様』」
アドゥリン孤児院に足を踏み入れた途端、一人の少女が敬礼してきた。少女が着ていた服はお嬢様感と、清潔さを兼ね備えた制服のようなもので、紺色と白色で統一されていた。
すると、少女はれいりに微笑みかけて言った。
「この度は、『虹色の剣士』様の案内役を仰せつかり光栄に思います。それでは、制服に着替えて頂きましょうか」
「え、着て良いの?」
れいりがそう尋ねると、少女は頷いた。
「もちろんでございます。『虹色の剣士』様のローブをデザインされた『アウ・ローラ』さんに特別に仕立てて貰った一品物ですよ」
何で、そんな所に気合いを入れているのか、れいりには不思議で仕方なかったが、その服を見た瞬間ーーれいりはその意味を理解した。
「何これ!持ち帰って良い?」
「左様でございます」
そのデザインを見て、れいりは目を見開く。服の高級感のある生地には魔法陣が書かれていて、宝石が幾つか散らばっている。
それよりも、いつも通りフリルが可愛くて仕方なかった。
その上、機能性も抜群。この、高級感のある生地はどうやら戦闘用の物が使われているらしく、伸縮性、頑丈さが共に高い。
と、しばらく服を眺めていると、後ろに立っていた甘猫が言う。
「何故かわからないんですけど。私の分もあるんですよね……。そういえば、さっきの方が、別に着なくても良いと言っていましたよ」
「いや、着るでしょ」
* * *
そして、着替えた甘猫とれいり。甘猫の物は誰がデザインしたのか分からなかったが、とても良く似合っていた。
でも、メイドというよりただの高校生のような……。そして、もっと似合うからと甘猫に言われて、甘猫にお団子ツインテにしてもらった。
そして、部屋の外に出ると、例の少女が待っていたようで……彼女はれいりと甘猫に「とても似合っていますよ」と微笑んで言った。
「それでは、会場にご案内致しますね」
そのまま、少女に付いていくと辿り着いたのはアドゥリン孤児院のお庭だった。そこにはパーティー用の色々な物が置かれていて、甘猫はどさくさに紛れて置いてあったケーキを一つ完食、その後、れいりの元へ戻ってきた。
「それで、今回私達は何をすれば良いの?」
「そうでした!それをお伝えしなくては……」
そう言って、少女はポケットから一枚の紙を取り出した。
「まずは、戦闘技術の講習、パーティーの司会。それから、演出とかですね」
「ちょっと待って、戦闘技術の講習って何?」
戦闘が苦手なれいりに教えられることなど全然無いーーというか、負けてしまいそうだったので、これは避けたかった。だから、れいりは尋ねた。
「この辺は、ルミナスタウンからの救援が送れない。その割に、強い魔物が多い地帯なので私たちが討伐して治安を守っているんです。ですから、三大賢者から戦闘講習を受けられるほど良いことはありませんよ」
笑顔でいう少女。貴族達がここに孤児院を置かせた理由もより鮮明に分かってきたが。絶体絶命のれいり。
だから、甘猫に目配せをした。
すると、甘猫は笑顔で言う。
「すいません。私達、何の準備もしていなくて……」
「えぇ、知っております。ですから、簡単なものを」
すると、甘猫が目の色を変えて言う。
「無理です。三大賢者が自分の都合に付き合ってくれるとお思いで?どちらの立場が上なのかもう一度よく考えてみては如何でしょうか」
「簡単なものですから、お願いします!」
動じない少女。それに追い討ちをかけるように甘猫は言った。
「せっかく丁重に断りましたのに……」
そのまま、甘猫はれいりの腕を引っ張ってその場を後にした。




