【第四章 - 7】カーロによるルミナスタウンツアー
その後、連行された少年が連れて行かれたのは王宮内にある留置所。あまり良い思い出とは言えないが、れいりもかつて訪れた場所だった。
「何事だ」
顔を顰めて留置所内に入ってきたエリーナはカーロに尋ねる。
「この方、急に私に抱きつこうとしてきたんですの。ですから、一発お見舞いして差し上げましたわ」
「それ、挨拶だろ」
エリーナが縮こまっている少年に尋ねると、少年は頷いた。
「彼が、例の客。ガイアから来た者だ。早く、釈放してやれ」
しょうもないとでも言いたげにエリーナはその部屋から出て行った。それから、警備員達は彼を無事解放。
そして、カーロは少年にめちゃくちゃ謝罪をした。
「ごめんなさいですわ。もし、良かったら……お詫びに可能な限り何でもして差し上げます」
「本当に良いの!?じゃあ、ルミナスタウンを案内して欲しい」
それを聞いたカーロは目を見開く。
「本当にそれだけで良いんですの?」
そう尋ねると、笑顔で少年は頷いた。
ーーそんなことがあって、まずは宮殿を案内することに。それに、ルミナスタウンの案内にはれいり達も同行することになった。
「甘猫って、まだルミナスタウン全部を回ったことないよね」
「まぁ、私がこっちに出てきたのは最近ですからね……大体、市場にしか行きません。偶に、れいり様の同行で他の場所に行くくらいですよ」
つまりこれは、甘猫も案内される側としての立ち位置と言っても過言ではなかろうか。
「こちらは、私のお姉様。エリーナのお部屋ですわ」
と、元気良く紹介するカーロ。しかし、何故よりにもよってエリーナの部屋なのか。
「お邪魔しますわね!お姉様」
と、勝手に部屋にはいるカーロ。そのまま、エリーナの居る例の部屋の扉を開けた。てっきり、エリーナは怒るのかと思っていたが、その考えとは裏腹に意外と快く出迎えてくれた。
「この子は、私のお姉様!次期、女帝候補なの」
自信満々に紹介するカーロ。紹介されたエリーナといえば、少年に笑顔で挨拶をした。
「あ、さっきの人じゃないですか」
と、少年は反応した。
そして、次に案内されたのは、王宮の外、ルミナスタウンにある商店街の一つだった。
「甘猫、ここは初めてでしょ」
そう聞くと、甘猫は頷く。
「他にも、色々商店街がありますが、ここは中でも落ち着いた雰囲気がありますね」
すると、カーロが甘猫の方を向いて言う。
「お目が高いですわね!そう、甘猫の言う通りここは、高級商店街通りなのですわ」
「ということは、カーロ様もよくご利用で?」
甘猫がそう尋ねると、カーロは首を振る。
「私がいくら皇族とはいえ、街の物が安くなったり、無料で貰えるだなんてそんなことは有り得ませんのよ。それに、どちらかといえば庶民の物が好きなのですこと。ですから、いつもここの商店街でお試しだけして帰っているのですわ」
「それ、一番迷惑な客じゃないですか……」
「まぁまぁ。そんなことより、試していきません?」
そのまま、カーロはある洋服屋さんに入って行く。
あまり乗り気にはなれなかったが、れいりと甘猫、そして少年もカーロに付いて行った。
「あ、お久しぶりですカーロ様。お陰で、日々の売り上げが順調に増えておりますよ」
「あらそう。良かったわ」
「甘猫、どういうこと?」
その会話を理解できなかったれいりは尋ねた。
「じゃあ、れいり様の好きな娯楽小説で例えてみましょう。もし、れいり様の好きな娯楽小説の登場人物が来ていた服が実在したらどうしますか?」
「そりゃー、間違いなく買いに行くよ」
自慢げに、れいりは言う。
「そういうことです」
「今回も、エリーナの名前で宣伝しておいてくれない?」
と、カーロは店員さんに向けてウィンクをした。
「分かりました」
それから、店員は店長の元へ行き、それを伝えて戻ってくる。
「それから、今日も試着お願いね」
「かしこまりました」
そのやり取りを聞いて、れいりと甘猫は心の中でこう思った。最近ルミナスタウンでエリーナ御用達をよく聞くのはこのせいなのでは……と。
ーーそれから、ルミナスタウン案内なのかよく分からない。カーロのお買い物に付き添っていると、いつの間にか日が暮れ始めていた。
そして、少年は言う。
「今日は、楽しかったです。でも、僕はイベントの為に、もう街をでなくちゃいけなくて……」
「私も楽しかったですわ。ガイアの人に会うのが夢でしたの」
と、カーロは笑顔で言う。
「ねぇ、甘猫。もう出なくちゃだっけ」
そこで、れいりは一つ気になったことを小さな声で甘猫に聞いた。
「いいえ。私達は箒を使うので大丈夫ですよ。ここからアドゥリンまでは箒で3日程です。ただ、大きな山を越えなければならないので、馬車だと遠回りになってしまい、2週間はかかってしまうのです」
「じゃあ、僕はここで……」
そう言って、少年はカーロにハグをした後、そのままルミナスタウンの出口へと歩いて行った。
そして、少年を見送ったカーロはそう呟く。
「なんだか、寂しいですわね」




