【第三章 - 3】セレディア候補の妹ちゃん?
「おはようございます」
一夜開けて、れいりと甘猫は昨日の孤児院に来ていた。
出迎えてくれたのは、一人の女性。孤児院の職員だろうか。
「お待ちしておりました、今日案内させて頂きますアンサスと申します」
女性はお辞儀をし、孤児院の方を指し示す。
「こちらです」
造りは、前に門。その奥に、昨日の職員用の建物。それを覆う様に孤児院が幾つか建っていた。
一つ目、二つ目の孤児院にまず行ったが。エリーナから聞いたそれっぽい特徴の子は居ないし、何か事情があったわけでも無かったので、ここら辺の話は飛ばそう。
それから三つ目の場所はかなり綺麗で…サンクティアの孤児院に似ている。
出迎えてくれたのは、甘猫と同い年くらいの子達。それに、もう少し小さい子。
一斉に抱きつかれた甘猫はびっくりして周りを見渡していた。
それから、前に出てきたショートヘアの少女はれいりに向かってせ最敬礼をした。
「はじめまして、れいり様。私は、ナディアって言います」
それを見て、れいりもお辞儀をする。
「はじめまして…えっと、じゃあお話でも…」
「その…私が、例のセレディア候補なのではなくって…」
少女が視線を向けたのは、後からこっちを見ていた少し身長の低い少女だった。
「は、はじめまして…」
れいりは、少女を見て微笑みかけながらその子の頭を撫でる。
「こんにちは」
それから、ナディアはその子を見て言った。
「普段は、元気な子なんですけどね…。今日は、どうしちゃったのでしょうか」
それに反論するように少女は言う。
「だだだだって、三大賢者だよ?うぅ…お腹痛くなってきた」
「そんなに気にしなくても大丈夫です。きっと、れいり様だって先ほど緊張しすぎてトイレに駆け込んでいましたから」
甘猫は、それから微笑する。
「そ、それは言わなくても良いじゃん!」
しかし、少女は緊張がほぐれたのか、ナディアの後ろに隠れるのを止めて、前に出てきた。
「えーっと…。私の名前って何でしたっけ…あ、そうだ!アフダルです。最近、新しく名前を付けられたので忘れちゃってました」
少女は恥ずかしそうに言う。
きっと、宗教に入った時に付けられる名前。ということは、入ってきたのは割と最近の話なのだろうか。
「それでは、別室へ…」
アンサスは、れいりにそう言った。
* * *
案内されたのは、いわゆるお茶会の部屋。
ここに居るのは、甘猫、れいり、そしてアフダルだけだった。
どうやら、セイシスト教会は話に首を突っ込む気はなく、外で待っていてくれるそうで…。
甘猫は、蒸らした紅茶をティーカップに注ぐ。
れいりと、アフダルは隣同士の席に座り、サンドイッチを食べていた。
「れいり様、防音結界及び、リフレクト結界を張りましょうか?」
「リフレクト結界は大丈夫。防音結界だけお願い」
「かしこまりました」
これは、念の為。もし、外部から盗聴されていた場合、少女が何かうまく話せない可能性がある。
もちろん、防御結界には内部からの防御結界も仕組まれており、これは魔道具だけに作用するものである。
甘猫が向かいの席に着席すると、アフダルはサンドイッチを食べる手を止めて、れいり達の方を見た。
それから、甘猫が質問を投げかける。
「あなたが、セレディア候補ということは…星にはお詳しいのですか?」
「うぅん」少女は首を横に振った。
「では何故…」
「私の故郷は、ここら辺なんだけど…。しばらく引っ越してきてたんだよね。マジカルタウンっていうんだけど知ってる?」
ーーマジカルタウン
可愛らしい名前をしている通り、夢の様に可愛い街だ。
街の殆どが、魔法と魔道具で構成されており、大魔法都市の一つである。
「もちろん、存じ上げております」
「そこで、お母さんとお父さんがセイシスト教会の人に連行されちゃって……。そこからはよく覚えていないんだけど……」
少女は少し俯いた。
「それで、結果的に私はここに送られて…ただ、ここら辺出身、それも部族だったので星は勉強しなくても、勝手に知識は身についているのです。だから、私が選ばれたんだと思います」
少女は平然と言っているが、事件性のある話だ。
「兄弟はいらっしゃるのですか?」
「双子のお姉ちゃんが……でも、何処にいるのか分からなくって……。でも、お姉ちゃんの方が私よりも星の知識が凄いんだよ。私はてっきり、お姉ちゃんがセレディアに選ばれたのかと思ってたんだけど……」
エリーナから言われた予言された子の特徴はーー
・孤児もしくは、孤児院に居る子
・星に対して深い関心、知識を兼ね備えている子
・髪が紫色で、ロングヘア。そして、前髪に特徴的なマークがある
それに対して、アフダルの髪色は黒に近い緑で、目は緑色。それにウルフっぽい髪型。全体的にその要素が無い。
一卵性ではなく、二卵性なのであればその条件にぴったり当てはまるが……。
「お姉ちゃんの特徴って覚えていますか?」
「えーっと。怖いけど、優しくって。ずっと、星の研究をしてて……そのせいで何時も目の下にクマがある。後は、黒に近い紫色の髪と、紫色の目かな」
案外、エリーナの言っていた特徴と幾つか合致していた。
「最初は、お姉ちゃんもここにいたんだけど…、急にいなくなっちゃって…。あの!お姉ちゃんを探してもらえませんか?」
少女はキッパリと言う。
「きっと、お姉ちゃんはセレディアの預言者です。ううん、絶対にそう」
「そこまではっきり言うんだ…」
「勿論ですよっ!お姉ちゃんは凄いんですから」
自慢げにアフダルはフンッと鼻を鳴らして言った。
* * *
「とはいったものの…。どうしましょうか」
部屋から出た甘猫は、ため息混じりに言う。
少女は、職員が引き取ってくれるので、そのまま部屋を出ても構わないらしい。
「それはもちろん。調査するに決まってるでしょ。娯楽小説に出てきたらきっと、マジカルタウンに行く、もしくは何も調査しないだよ」
「それで、何も調査しないを選んだらどうなるんですか?」
「うーんとね。ゲームオーバー最初からやり直し…」
「それ、断る方法無いじゃないですか…」
でも、幸い今回の任務はこれで終わりだし、デゼルダからマジカルタウンまでは箒で3時間くらいだ。
「じゃあ、デゼルダでの旅行計画は取りやめて、マジカルタウンに行こう」
「それ、本気で言ってます?」
その質問に、れいりは笑顔で頷いた。




