魔界資料1 魔力、魔術、魔界基礎
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【魔力について】
この世のあらゆる物質、惑星運動、大気、生命活動に携わる情報量と密接に関係する概念が魔力と呼ばれるものである。物質が存在しているだけで生成される魔力は、人間をはじめとした動物の意思、感情によって操作され得る性質を持ち、その操作によって想像し得るすべての事象を実際の現象として引き起こすことが可能である。
魔力は術者の意思によって様々なエネルギーへと変換され現実の現象として顕現される。その際の術者の意思と魔力操作の精密性によって、身体に貯めてある魔力量消費が僅かであっても多量の仕事量を発生させることが可能である。
これは術者の脳が生み出す情報量によって魔力が反応し急激に増大する事象であると考えられており、この考えを基にして現代における魔術の解明が進められている。
魔力量の単位としては【M】が国際標準規格として使用されている。目安として1M=10cal=41.84J=0.01μt(TNT換算マイクロトン)とされている。
【魔術について】
魔術とは魔力によって描き出された文字・紋様・象形・音波形である【魔術的結合】を利用することで魔力をより効率的に具象化する術を指す。
魔術は魔力の情報量によって増大する性質を利用する。具体的には、過去の儀式を再現することや言語の再現、知識の反芻によって過去の人類が蓄積してきた感情の情報を引き出すのだ。これにより個人の脳から生じる情報量を大きく超えて、より大きな魔力、大きなエネルギーを生成可能とするものと現代では理解されている。
こうした事象は有史以前から、現在ほど体系化されずとも続けられてきた。科学と魔術が未分であった時代における魔術の驚異的作用や奇跡的事象については魔力による事例も多数存在する。
【魔術六領域】
魔術の術式は非常に細かく分類していくことが可能であるが、最も一般的な分類としては『六領域分類法』が挙げられる。
『六領域分類法』はその名の通り、魔術の効果を六種類に分ける。各領域は正六角形の各頂点に対応した図示が為されることが多い、その場合は第一領域を六角形十二時を指す頂点とした時計回りに各領域があてがわれる。
また、各領域の適性ある魔術師は魔術を介さない単純な魔力操作においても簡単な各領域に応じた効果を発揮することができる。
もちろん、この六分類は各魔術術式の特性を大雑把に分類したものであり二つ以上の領域に渡る特性を有する術式は存在し、複数の術式を混成した魔術は当然二つ以上の領域に属する。
・第一領域『魔域』
魔を冠するこの魔術領域は純粋な情報に関わる魔術効果が分類される。例えば『仮想情報付与術式』は魔術効果対象に『仮想の質量情報』などを付与する。仮想質量情報を付与された地点・物品は現実の質量・密度といった物理的な状態は全く変化していないにも関わらず、質量が増大したように現実が振舞い始める。物理的な大きさや密度に囚われずに物体を重くしたり軽くしたりすることができ、巨大な物体を生成する必要なく重力場をゆがませ、わずかな時空間転移が可能となる。
このように魔域に関わる術式は情報に直接作用し思わぬ挙動を生み出すものが多い。他にも『認識改変術式』『異空間生成術式』『空間支配術式』『反法則術式』『浮遊術式』といった術式がこの領域の魔術として挙がる。
また、この領域に適性ある魔術師は魔力操作時に微弱な空中浮遊の付与や僅かな仮想質量増減などの効果を発揮することができる。
・第二領域『行域』
この魔術領域は魔術自体を規定する複雑な条件設定や法則性の操作に当たる術式が該当する。
具体的には強力な呪物の魔術的効能を発揮することや使い捨ての呪物などを作り出す事、既にある呪物を改造する事、物品に魔術を刻印して護符とし後で利用する事を指す『魔術刻印術式』。『封印術』、『介入術』といった相手の魔術そのものを封じたり無力化、反射する事。『結界術』のように仕切った特定の空間内を魔術結合で満たし効果を確実化させる術。魔術効果に条件を設け、ハンデを与えることで術者の精神を刺激し魔術の強度を上昇させる『条件付与術』などが挙げられる。また、魔力的攻撃から対象を防護する『防護術』も存在し、これは戦闘を行う魔術師ならば護符として携帯する事が一般的である。
以上の例に見られるように行域は他魔術効果の向上や無力化、反射、防衛といったものや呪物操作・作成など補助的な要素が強い。
また、この領域に適性ある魔術師は魔力操作時にモノへ魔力を与え、残留させる事でモノの耐久性や魔力に対する抵抗力と攻撃性能を高めることなどを得意とするほか、魔力の隠匿や魔術結合の隠匿を得意とする傾向がある。
・第三領域『力域』
力の名を持つ魔術領域。その名の如く物理的な力を操作する術式が該当する。
例えば力学的エネルギー操作術は爆発のように発熱を伴わず純粋に物体を押し出す力場を発生させる。古典力学の運動エネルギーを魔力から生み出すような奇怪な現象であり、念動力と呼ばれるものと相違ない。熱の発生が無いことから魔力からの変換効率が爆発以上に良いと思われがちだが摩擦や粘性、慣性などの抵抗による力の散逸が多く、大気を押したりするなどの質量をほとんど伴わない運動力であるため、熱に伴って様々な現象が発生する爆発などの術式以上に魔力からの変換効率は悪い。
また、この領域に適性ある魔術師は魔力操作時に力学的エネルギーを自在に発生させることを得意とする。
・第四領域『色域』
仏教用語で物質的世界を意味する『色』の名を持つ魔術領域。名の通りに物質世界に干渉する力。つまりはエネルギーを物質に変換する効果を持つ術式などがこちらに該当する。また、隣接領域の態域との中間に当たる効果として磁力操作や莫大な放電に伴う対生成なども一部が該当する。
この領域の最も代表的な術式としては『仮想物質生成術式』が挙げられる。この術式は理論上存在しない仮想の物質・化合物等を生成するものであり、非常に質量が軽く密度が希薄ながら通常の物質とほとんど同じ性質を持つ物質やこの世には存在しない物質などを生成することができる。質量や密度が希薄とは言え質量を生成していることから魔力の変換効率は非常に悪い。
また、仮想物質生成術式以外にも実際の物質を作り出す『物質生成術式』、質量をエネルギーに変換する『対消滅術式』、対生成により電子を発生させ電気エネルギーを生み出す『対生成術式』などがこの領域に挙げられる。
この領域に適性ある魔術師は魔力操作時に光の放射や静電気発生を行う事が得意である。
・第五領域『態域』
温度や物質の状態変化を操作する術式が該当する魔術領域。微弱かつ精密な電子操作や熱操作から、極高温や極低温、状態変化を引き起こす。例としては『熱力学操作術式』が物質の温度を操作する術式、『火炎操作術式』は物質の燃焼状態を操作する術式、『爆発発生術式』は高温の燃焼反応を瞬間的に発生させる術式などが挙がる。
また、生物の脳における電気信号を精密に操作することで対象の感覚を操作する『神経操作術式』や対象の体温を操作する『生体温度操作術式』など微弱であるが精緻な操作を必要とする術式も存在する。
この領域に適性ある魔術師は魔力操作時に高温や低温の発生、爆発や物質状態変化の発生などを操作することが得意である。
・第六領域『霊域』
生物の精神や霊魂などを操作・生成する術式が該当する魔術領域。
動植物、死人や人間の生体情報が魔力によって残留した存在である『霊魂』を招来・生成し混合した魔術の自律行動を制御するCPUのように利用したり、分身のように遠隔操作する『霊魂操作術式』が代表的。他に式神や守護神など信仰によって情報的に強化されている霊魂を生成、魔力によって外殻を与えることで魔術詠唱や物理的干渉を行えるようにする『式神操作術式』なども名称として存在するがこれは本質的に霊魂操作術式とほとんど変わりはない。『精神操作術式』は神経ではなく、人間の精神情報に直接作用することで術者の指定した幻覚や幻聴を引き起こす術式。このような精神や霊にまつわる操作を行う術式がこの領域に該当する。
また、この領域に適性ある魔術師は魔力操作時に幻覚や感覚の変化を付与することが可能。
【13傾向属性】
六領域分類法に付随し、魔術師の特異傾向を13種類に分類した魔術適性分類法。13種類の分類は正六角形の各頂点を結ぶ直線同士の交点数と一致し六領域分類法と共に図形的説明に長けているほか、六芒星の描画によって13交点が出現する事は魔術的意義が深く、この分類法を採用している魔術師たちの基礎出力を向上させる意図も含まれている。
1~12番の傾向属性分類は正六角形内12時の位置にある交点を1として時計回り。13番は中央の交点として示される。
領域の適性については以下の通り。なお、魔術使用時だけでなく各領域効果を術式に拠らない魔力操作で発揮しようとした際も効果の領域によって以下の出力低減が発生している。
『適性』はその領域の魔術効果を発動する際出力に低減なく効果を発揮できることを指す。
『準適性』はその領域の魔術効果を発動する際出力が半減する。つまり適性ある魔術領域の術式使用時と比べて同じ出力を発揮するために消費する魔力量が二倍となる。
『微適性』はその領域の魔術効果を発動する際出力が四分の一に減少する。つまり適性ある魔術領域の術式使用時と比べて同じ出力を発揮するために消費する魔力量が四倍となる。
『適性なし』はその領域の魔術効果を発動する際出力が本来の1%に減少する。
なお、各傾向属性の説明に領域名が特記されていない場合は『適性なし』を意味する。
・1.【魔道】:適性・魔域/準適性・霊域、行域
・2.【魔行門:準適性・魔域、行域/微適性・色域、態域】
・3.【行道:適性・行域/準適性・魔域、力域】
・4.【行力門:準適性・行域、力域/微適性・霊域、態域】
・5.【力道:適性・力域/準適性・行域、色域】
・6.【力色門:準適性・力域、色域/微適性・霊域、魔域】
・7.【色道:適性・色域/準適性・力域、態域】
・8.【色態門:準適性・色域、態域/微適性・行域、魔域】
・9.【態道:適性・態域/準適性・霊域、色域】
・10.【態霊門:準適性・態域、霊域/微適性・行域、力域】
・11.【霊道:適性・霊域/準適性・態域、魔域】
・12.【霊魔門:適性・霊域、魔域/微適性・力域、色域】
・13.【無限:微適性・全領域】
なお、傾向属性のうち、『色域』『力域』『態域』が含まれる属性の魔術師は全体の60%を占めており、やや多い傾向が見られる。
最も少数派である傾向属性は『無限』であり全体の0.017%、六千人に一人の割合である。
【魔界について】
魔界は古代より連綿と世俗文明と混在しながら人類の歴史を紡いでいたが地中海世界におけるローマ帝国の魔術排斥風潮が強まるにつれ秘密主義的性質は高まっていった。テオドシウス帝らによる三帝勅令以後、排斥される異端と異教、その中のいくつかが徒党を組み、ギリシャ以来の魔術研究家や異民族呪術師を中核とした【学会】が発足。欧州各地にじわじわと広がるキリスト教、民族大移動やフランクの隆盛、分裂、イスラームの隆盛といった呪術の排斥が大陸を席巻するにつれ、【学会】と協定を結ぶ秘密組織は増加していく。
この秘密主義的な【学会】が今日において欧州、北アフリカ、西アジア地域に点在する魔界の前身となっており、ルネサンス以降の科学文明を享受し始めた世俗世界から魔術をひた隠しにし続け、また科学知識の積極的な受容を拒否した原因でもある。
中央アフリカ以南やインド半島、東アジア地域や南北アメリカ大陸はそれと対照的に近代まで世俗と密接なかかわりがある地域が多く近代科学受容において優位となった。
世俗との交流が発生するのは1815年ウィーン会議。それ以前より秘密結社・隠者の薔薇による魔術知識の流布活動が問題視されることや、古代、中世、近世と千年近い確執がある神聖勢力が革命戦争によって一時退潮していたことも重なり、【学会】は世俗との限定的な交流を求めた。
会議の長期化はこの部外者の闖入もあっての事であったとも言われる。会議参加国はフランス含め保守王政国家が軒を連ね、無神論の権化とも言うべき学会との融和は拒まれたが、唯一、英国は会議後秘密裏に協定を結んだ。
それ以降、学会は大英帝国の躍進と激動の近代の中、全世界に魔界としての同盟を構築、近代科学文明の受容も徐々に推進していく。
第一次世界大戦、第二次世界大戦の影において学会は活躍を見せ、とくに第二次世界大戦に至っては枢軸国にて進められていた魔術の戦争応用を未然に防ぎ、被害の最小化を図った。
だが、学会が支払った犠牲は大きく、同盟を結ぶ魔界のいくつかがこの時に離脱し枢軸国や隠者の薔薇へと合流。
このような事態の反省から学会は終戦時、変革を宣言。連合国を母体とした国連の秘匿保障委員会として再結成し、国連加盟国と秘密裏に秘匿保障条約を締結。魔術知識の秘匿を徹底、魔界と世俗を別つことにより甚大な犠牲を再び出すことを防いでいる。
現在において秘匿保障委員会と国連常任理事国との関係性は公にされてはいないが、常任理事国は委員会の会合に代表者を送っており委員会運営の決定に対して強力な拒否権を持っている。しかしそれが行使されたことは一度として無い。
秘匿保障委員会は全世界に点在する魔界の同盟都市へ派遣員を送り、その魔界都市が所属する国家や地域の秘匿業務を監督させている。また、各魔界秘匿課実動員の人事にも権限を有する。
委員会は魔術師免許の発行も管理しており、魔界に所属する全魔術師の能力、住所、所属、氏名、家族構成と言った膨大な個人情報を全て把握しているが、委員会が管理に要している人員の数は公表されていない。
また、各魔界で回収された秘匿対象の呪物と言った物品や凶悪な違法魔術師の一部は直接委員会の管理する倉庫や牢獄に送られるが、そうした直轄管理倉庫等の場所は最重要機密とされ、場所は派遣員の一部のみが知る。
現在魔界において公表されている正規魔術師人口は全世界約6000万人。条約加盟都市数は812市を記録している。そのうち正規兵力として数えられる人口は45万人。
日本魔界府については人口約180万人。




