バス停にて 1
社会人2年目の僕は珍しく残業もなく定時に仕事を終え、バス停でスマホを片手に静かに時間を潰していた。
バス停の長椅子の端で脚を組んでスマホゲーのガチャを引きながら食い入るように下を向いていると……視界の端に女子高生、数人の脚が映る。そして自分の隣へ座る振動が伝わった。
『ス◯バの新作、飲んだ?あれマジでヤバいよ?』
『えー売れ切れててー、まだ飲めてなーい』
『そーなんだー、アタシもまだ飲んでないわー……あ!そうだ聞いてよー……アタシさー……ーー』
先程までの静かだったバス停は女子高生の登場ですっかりと騒がしくなり、多少なり居心地の悪さを感じた僕は心なしか少しだけ離れるように長椅子の端へ更に詰めた。当然、それに大した意味はなく女子高生達の会話は聞くつもりがあろうとなかろうと自然と耳に入ってくる……。
先生の悪口……テストの話、誰と誰が付き合っただの……別れただの……学校生活での噂、不平不満などを隣にいる僕の存在など気にも留めず大きな声で話す。どんな顔か見てやろうか……とも思ったが、そんな度胸もない僕は我関せずと視線をスマホの画面から外すことはなかった。それでも、声で女子高生3人組だということだけ分かった。
『そーいえばさー、ウチの学校の敷地内にくっそボロい【旧校舎】あるじゃん?』
『あー、あれでしょ?来月取り壊すってやつ?』
『……【旧校舎】がどうしたのー?』
『そうそう。その【旧校舎】にさー、夜に忍び込もうって話が出ててー……肝試しだってさー』
『うっそ!マジ?……ミカ行くの?』
『……絶対行かない方がいいよ』
『行くわけないじゃん!怖いのダメなの知ってるでしょー?アヤカも怖いのダメでしょー?』
『だよねー。私も無理無理、てか誰がそんなリスク冒してまで怖い思いしたいのよ。意味わからん』
『……ダメだよ、絶対に行っちゃ……』
『それがさー、サクラがさー先週行っちゃったらしくてねー』
『え!!なんで!?』
『………………』
『あの子、オカ研の先輩と仲良いから誘われちゃったらしくて……』
『てかウチの高校、オカ研なんかあんの?』
『ないけど、勝手に名乗ってるらしいわ。良く分からんけど』
『なんじゃそりゃ』
『それでねー、サクラがさー今週ずっと風邪で休んでんじゃん?大丈夫かなー?って』
『……風邪じゃないよ?』
『……それさ……。本当は風邪じゃないんじゃない?』
『ちょ!アヤカ!やめてよーー、アタシそーゆーの本当怖くてダメなんだから』
『ごめんって、ミカ怖がりだもんね……ゴメンゴメン……あ、だったらサクラに連絡してみたら?』
『いや、なんか既読つかないんだよねー……』
『……ごめんね。』
『そっかぁ……あ、バス来たよ。アヤカ』
『うん、行こっ』
……女子高生の会話が勝手に耳に入ってくる最中、僕はスマホゲームのガチャでSSRのキャラクターを2枚引きしていた。本来とても嬉しいことなんだけど……【とあること】が頭に引っかかっていてスマホゲームに集中出来ていない自分がいた。
それは、隣の女子高生3人の会話に
【違和感】を感じていたからだ。




