第1話 異世界召喚
「あーあ、異世界にでも召喚されないかなぁ」
青空を見上げながら、リョージはつぶやいた。
ぼんやりした頭で、現実から逃げたいとただぼやいただけだった。
_____________________
召喚希望受理
転生シークエンス始動
_____________________
視界の中央に、唐突に文字が浮かんだ。
「は?」
目の前に、広がる草原。
空は異常に青く、どこか作り物めいている。
妙に心地よい風がリョージの頬をなでた。
現実感がまるでない。
まるでゲームの世界に入り込んだかのようだ。
「マジかよ……異世界転生ってか?」
見渡す限りは緑の草原と丘、ところどころに岩場。
遠くには森が広がり、その奥には雪を戴いた山々が連なっている。
ずいぶんと空気が澄んでいる。
深呼吸すると気分がリフレッシュされるようだ。
_____________________
転生シークエンス終了
おめでとう
"アマツカ・リョージ"は無事にチキュウ世界からモデンリアナ世界への転生を果たした
_____________________
……転生? 神様、これ転生やない。
召喚や。
リョージの心の突っ込みにもひるむことなく、目の前に浮かんだ半透明の板にメッセージが走る。
_____________________
状況説明
モデンリアナ世界は今、滅亡の危機に瀕している
_____________________
ほう、それは大変だな。
というか随分雑なチュートリアルである。
_____________________
神はいろいろ忙しく、モデンリアナ世界にだけかまけている暇はない。
_____________________
いや、おまえの担当だろ、かまけろよ。
_____________________
そこで神AIに丸投げしたところ、チキュウ世界のニホンの住民を拉致……転生して召喚し、チートスキルを与えておけば大概なんとかなるらしい。
_____________________
……うわぁ……雑ぅ。
_____________________
神は転生アプリを使い、転生した"アマツカ・リョージ"に神AIで生成したスキルをインストールした。
_____________________
……俺はどうすればいい?
リョージは自分の体を見回した。
武器ナシ。
防具はRPGでの旅人の服ってやつか?
所持物は……ナシ。
もう少しこう……何というか、手心というか……。
_____________________
行け、リョージ。モデンリアナ世界を救うのだ!
_____________________
どうやって?! なにを?!
_____________________
行け、リョージ。モデンリアナ世界を救うのだ!
_____________________
……これ、繰り返すのか?
やれやれだな。
――とりあえずはあれか?
「ステータス・オープン!」
案の定、半透明のウィンドウが浮かんだ。
_____________________
【ステータス】
名前:アマツカ・リョージ
レベル:1
HP:100/100
MP:100/100
スキル:神チート〈ver.0.1.1α〉
_____________________
ずいぶんさっぱりしたステータス画面だな。
「スキル……神チート?」
ネーミング雑か!
だいたいアルファ版じゃねぇか!
ベータテスターですらねぇ!
説明ポップもなし、雑すぎるにもほどがある。
とりあえずこの世界の神は当てにならないということがよーく分かった。
まずは生き延びる方法を考えないと。
あたりを見回すと草原の丘の向こうから、煙が上がっているのが見えた。
多分そこに人がいるはずだ。
とりあえずその方向に向かって歩き出す。
歩き出して、三分。
――ゴゴゴゴゴゴ……
「は?」
空気の振動がリョージに伝わってくる。
強大な圧力。
イヤな予感全開で振り返り空を見上げた瞬間。
巨大な影が視界を覆った。
「……マジかよ」
全長二十メートルはある漆黒の巨体。
鋭い牙、鋼鉄のような鱗、赤く光る眼。大きく翼を広げたその姿は。
ドラゴン!!
ゲームや映画で見る、まさに伝説の魔獣そのものだった。
ドラゴンが咆哮する。
耳の奥が痛い。
風圧で草原が激しくなぎ倒される。
冗談じゃない。
こんなの、どうにかなるわけがない。
クソゲーかよ?
それとも死亡してからが本当のスタートパターン?
そして真上から、巨大な尻尾が振り下ろされた。
「うおっ!?」
反射的に腕を上げて防御した。
その瞬間。
――ドゴォォォォォン!!
耳元でバズーカ砲でもぶっ放したんじゃないかって轟音。
世界が揺れた。
ドラゴンが消し飛んだ。
——正確には。
リョージの拳がドラゴンの尻尾に触れた瞬間。
ドラゴンの全身は粉々に砕け散って、風に乗って霧散した。
草原が波打つ。
風圧で遠くの木々が揺れる。
空気が震えている。
「……え?」
リョージの拳は、軽く震えていた。
痛みは、まったくない。
むしろ、何も感じなかった。
「ワンパン……マジで?」
呆然としていると、ステータス画面が光った。
_____________________
【スキル発動】
神チート〈ver.0.1.1α〉:敵対存在を検知。
※ 初回戦闘特典『ワンパン撃破』を実行しました。
結果:災厄のドラゴン(Lv.500)撃破
経験値:500,000獲得
レベルアップ:Lv.1 → Lv.48
新スキル獲得:《言語理解》《無限収納》《魔法適正:ALL》
新称号獲得:【竜殺し】
※神チートはAI制御のため、誤りを含む可能性があります。回答内容は必ずご確認ください。
_____________________
「レベル48……?」
一瞬で、レベルが48。
しかも、スキルまでゲット。
まぁ……ドラゴンだしな。
さすがは神チート、名前だけの性能はある――ゲームバランス大丈夫か?
神チートが本気さえ出せば、ヌルゲーなのは分かった。
でも初回戦闘特典?
ワンパン撃破をスライムで消費してたかも?
実はハードコア設定なのか?
……いや、深く考えるのはやめよう。
とりあえず危機は去ったんだ。
――去ったよな?
一人、草原を歩く。
ようやく森の手前に村が見えてきた。
「水……飲みたい」
額の汗を拭い、顔を上げたリョージの頬を――
ピシュン――
風を裂く音と共に、一本の矢がかすめた。
お読みいただきありがとうございます。
お気に召しましたら☆☆☆☆☆、いいね、ブックマーク。いただけると大変嬉しいです。




