第1話 異世界召喚
「あーあ、異世界にでも召喚されないかなぁ」
青空を見上げながら、リョージはそう呟いた。
ぼんやりした頭で、現実から逃げたいとただぼやいただけだった。
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召喚希望受理
転生シークエンス始動
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視界の中央に、唐突に文字が浮かんだ。
「は?」
目の前に、広がる草原。
空は異常に青く、どこか作り物めいている。妙に心地よい風がリョージの頬をなでた。現実感がまるでない。まるでゲームの世界に入り込んだようだ。
「マジかよ……異世界転生ってか?」
見渡す限りは緑の草原と丘、ところどころに岩場。遠くには森が広がり、その奥には雪を戴いた山々が連なっている。
ずいぶん空気が澄んでいて、深呼吸すると、なんだか気分がリフレッシュされる。
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転生シークエンス終了
おめでとう
"アマツカ・リョージ"は無事にチキュウ世界からモデンリアナ世界への転生を果たした
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……転生? 神様、これ転生やない。召喚転移や。
リョージの突っ込みにも怯むことなく、目の前に浮かんだ半透明の板にメッセージが走る。
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状況説明
モデンリアナ世界は今、滅亡の危機に瀕している
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ほう、それは大変。というか随分雑なチュートリアルである。
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神の所管する世界は二百七十億にも及ぶため、モデンリアナ世界にだけかまけている暇はない。
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いや、お前の担当だろ、かまけろよ。
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そこで神AIに相談したところ、チキュウ世界のニホンに住む住人を拉致……もとい、転生者として召喚しチートなスキルを与えて放置しておけば大概の危機はなんとかなるという情報を入手――
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……うわぁ……雑ぅ。
それに拉致って言っちゃったよ。
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モデンリアナ世界の神は転生アプリをダウンロード。課金マッチング転生させた"アマツカ・リョージ"に神のスキルをインストールした。
行け、リョージ。モデンリアナ世界を救うのだ!
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……。
(俺はどうすればいい?)
リョージは自分の体を見回した。
武器もない、防具はRPGで言うところの旅人の服ってやつか?
所持物は……なし。
もう少しこう……何というか、手心というか……。
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行け、リョージ。モデンリアナ世界を救うのだ!
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どうやって?! なにを?!
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行け、リョージ。モデンリアナ世界を救うのだ!
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……これ、繰り返すのか?
やれやれだな。
――とりあえずはあれか?
「ステータス・オープン!」
案の定、半透明のウィンドウが浮かんだ。
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【ステータス】
名前:アマツカ・リョージ
レベル:1
HP:100/100
MP:100/100
スキル:神チート〈ver.0.1.1α〉
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ずいぶんさっぱりしたステータス画面だな。
「スキル……神チート?」
ネーミング雑か! だいたいアルファ版じゃねぇか! ベータテスターですらねぇ!
スキル名からは効果も使い方も分からない。意識すればポップアップウインドウが……でないかー。
そっかー。
とりあえずこの世界の神は当てにならないということがよーく分かった。
まずは生き延びる方法を考えないと。
あたりを見回すと草原の丘の向こうから、煙が上がっているのが見えた。多分そこに人がいるはずだ。
とりあえずその方向に向かって歩き出す。
◇◆◇
歩き出して、三分。
――ゴゴゴゴゴゴ……
「は?」
空気の振動がリョージに伝わってくる。
強大な圧力。イヤな予感全開で振り返り空を見上げた瞬間、巨大な影が視界を覆った。
「……マジかよ」
全長二十メートルはある漆黒の巨体。鋭い牙、鋼鉄のような鱗、赤く光る眼。大きく翼を広げたその姿は。
ドラゴン!!
ゲームや映画で見る、まさに伝説の魔獣そのものだった。
ドラゴンが咆哮する。耳の奥が痛い。風圧で草が激しくなぎ倒される。
冗談じゃない。
こんなの、どうにかなるわけがない。
クソゲーかよ? それとも死亡してからが本当のスタートパターン?
そして、巨大な尻尾が、真上から振り下ろされた。
「うおっ!?」
反射的に腕を上げて防御姿勢を――取った、その瞬間。
――ドゴォォォォォン!!
耳元でバズーカ砲でもぶっ放したんじゃないかってほどの轟音。
世界が揺れた。
ドラゴンが消し飛んだ。
いや、正確には、リョージの拳がドラゴンの尻尾に触れた瞬間。
ドラゴンの全身は粉々に砕け散って、風に乗って霧散したのだ。
草原が波打つ。風圧で遠くの木々が揺れる。空気が震えている。
「……え?」
リョージの拳は、軽く震えていた。痛みは、まったくない。むしろ、何も感じなかった。
「ワンパン……マジで?」
呆然としていると、ステータス画面が光った。
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【スキル発動】
神チート〈ver.0.1.1α〉:敵対存在を検知。
初回戦闘特典"ワンパン撃破"を実行しました。
結果:災厄のドラゴン(Lv.500)撃破
経験値:500,000獲得
レベルアップ:Lv.1 → Lv.38
HP:100/100 → 3,800/3,800
MP:100/100 → 3,800/3,800
新スキル獲得:《言語理解》《無限収納》《魔法適正:ALL》
新称号獲得:【竜殺し】
※神チートはAI制御のため、誤りを含む可能性があります。回答内容は必ずご確認ください。
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「レベル38……?」
一瞬で、レベルが38も上がった。しかも、スキルまで増えている。まぁ……ドラゴンだしな。さすがは神チート、名前だけの性能はある――ゲームバランス大丈夫か?
神チートが本気さえ出せばヌルゲーなのは分かった。
ただし初回戦闘特典ってことは……次からは普通に戦うんだよな?
貴重なワンパン撃破をスライムで消費してた可能性もあったわけで……本当にヌルゲーなのか実はハードコア設定なのか。
AI制御……いや、考えるのはよそう。
とりあえず目先の危機が去ったことに満足しておこう。
――去ったよな? いいんだよな?
最初の目的の通り一人とぼとぼと草原を進む。どうせなら移動系のスキルを獲得すればよかったんだけどな。
歩き疲れたら休み、息が整ったらまた歩く。普通のゲームだったらこの段階で客去るぞ。
休憩と徒歩移動を何度か繰り返し、草原の向こうの森の手前あたりにようやく村らしきものが見えてきた。
こんなに歩いたのは久しぶりだ。めっちゃ暑い。汗だくだ。早く冷たい水が飲みたい。
額の汗を拭い、顔を上げたリョージの頬を――
ピシュン――
風を裂く音と共に、一本の弓矢がかすめた。
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