第3章 オフ会などの集いに誘われたら、周囲の物やその人の持ち物を確認してみよう④
現状、オフ会という環境でカラオケに興じる者と、会話を楽しむ者にグループが分かれている。
その中でさらに約半分のベテラン勢が配置しているような状況だ。室内の広さに余裕がある分、皆さん自由に動いて会話に興じている。
さて、この会が闇の深いオフ会であったことを考慮すると、ここからどう面白い展開にもっていって引こうか。
そう思いながら隣の岳を見てみると、こっちの意図が読めているようでにやにやした顔をこちらに向けてきた。
「さて、智春よ。ここはベテラン勢の中で一番扱い易そうな者を扇動して楽し・・・ではなかった、皆に真実を伝えてもらうのはどうだ
ろうか。本人たちが告発するより効果的な展開があろう。」
彼の弁はいつも危険を孕むので、あいまいに流すことにする。
「真実を伝えて恨みを買い、この街に住めなくなるのは困るので却下だ。だが、一番扱い易そうな人をウキウキさせるのはやぶさかではない
とは考えているよ。こんな機会はそんなに多くないだろうし。ということで岳も一緒にそういった人を探そうか。」
そう考え、ターゲットを捜索するとそれらしい人物を発見する。
彼はオフ会初参加メンバーにアドバイスしつつ、月並みなボケをする。それを他のベテラン勢が笑って突っ込むことで和やかな雰囲気を作る流れだ。
歪んだ目的がなければ、民主社会においては非常に有効な手ではある。だが、今回の場合は底なし沼の入り口だ。
「岳、こいつをターゲットにしようか。純粋な子達を、いきなり社交界の闇に引き釣り混むのはやはり見過ごせないよ。」
「まぁ、智春がそういうなら構わないが。だがこの男はオフ会の幹事だぞ。ここで嗾けたら私は愉快だが、波乱が起きるのは間違いないぞ。」
珍しく忠告する岳だが、そんなことはどうでもいい。救いたいものは救いたいと思う。
これで住む場所を追われたら、メリアさんかゴーフルさんの所に逃げ込んでしまおう。
とりあえず、有望な初参加メンバーを演じるために彼と周囲の環境を観察する。
まず彼の服装。有名なブランドのシンプルなシャツに、腕時計やブレスレット等もかなりいいデザインだ。これはファッションにある程度は
気を使っていることの表れだ。まだ夜は肌寒いこの季節にサンダル履いてる点は理解しかねるが。
周囲のベテラン勢は・・・初参加メンバーの方を構いたい気持ちが隠せないのか、たまに幹事のボケに突っ込めてない時がある。
そして突っ込むことはしても、幹事と直接話す人がいない点に、少し疑問に感じた。
とりあえずこれらのカードくらいでまずは接してみよう。
「よし、岳がいると面倒なので弟君の所へ行ってくれないか。」
それよりもまずはお荷物をどかすところだ。弟くんの話している出さんは非常に魅力的な女性ではあるが、この毒牙は弟君には強すぎる。
後は岳がこちらにいると、基本的にスムーズに進む話が混沌とする場合があるので戦力外だ。彼はこの先で使えるので、そこまで取っておこう。
「考えていることは読めてるが、一番いいところは絶対に俺もいるときに頼むよ。その前に我が光源氏殿を救い奉らせて頂くとしよう。」
そう言って岳は弟のもとへ向かった。さて、ここからが勝負だな。