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この春一匹目の小鬼を見つけた。
小鬼は醜い躯をまるめ、「タキ。タキ」と己を呼ぶ。
そうすると。
ああ。
おれはタキだったのかと。ぼんやりと思う。
男の周りには美しい野辺の花々が咲き誇る。
男は花に囲まれて座っている。ここからは出て行けない。
両の足首には鎖が巻き付き、男の自由を奪っている。
男はもうずっとこうして、ここに居る。
鎖をずらすと、白い骨がある。ああ。肉が腐って落ちたのだな、と思う。
痛みは感じない。
煩わしさもない。
何もない。
ただ、ここから逃れられないという不自由さは感じている。
それだけだ。
何も変わりはしない。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
来月締め切りの公募作品の息抜きにと「化野ーあだしの」を書き始めたところ……うっかり本気で書き上げてしまいました。のめり込むくらい楽しかったのですが、なにせ時間がなくて色々ストーリーから抜け落ちている部分もあり、分かりづらかったかもしれません。
もし今後機会がありましたら、タキエとヨウジの出会いやタキエの壊れていく過程などを書いてみようかと考えております。