襲来! オススマン!!
襲来! オススマン!!
「オススマンと名乗る人物から、公開チャネルによる通信要求です。ど、どうします?」
ミーマが情報表示盤に現れた、オススマンからの通信要求におびえる。
「うー……。ちょっと、待たせておいてくれ……」
アークはミーマに無理な注文をつけると、ヘッドセットマイクのスイッチを入れる。
「ちぐにゃにゃん。いや、サディよ。至急応答せよ。至急応答せよ」
「配信中なんですけど?」
アークの自席の情報表示盤に、自室でRADIO・ちぐにゃにゃん配信中のサディからメッセージ。
「オススマン。という名に心当たりはあるか?」
アークの問いに
「オススマン! あの野郎! ぶっ殺す!」
と情報表示盤に四倍サイズの赤い文字が現れる!
「ぶっ殺す前にブロックはしたけどね!」
アークが返事をする前に、さらに続いて四倍サイズの赤い文字が現れる。
「にゃるほど。状況は理解した」
アークはそれだけ言うと、ヘッドセットマイクのスイッチを切った。
「つないでくれ」
アークの言葉に、ゴクリとつばを飲んだミーマが、公開チャンネルの通信をつなぐ。
「ちぐにゃにゃ〜ん。どうしたのぉ〜? なんだか最近コメント全然読んでくれないし、スーパーチャージにも無反応。オススマンさびしいから、ちぐにゃにゃんの電波を追っかけて、直接スーバーチャージしにきちゃったよぉ」
艦橋に流れたボイスに、アークの身体がぐらりと揺れる。
「……。こちらは、ちぐにゃにゃん運営・二次大惨事のスタッフ、眉毛ガ灰という者だ。端的に言ってDMは事務所管理、ダイレクトアタックつまりはDAに対しては完全にご法度となっている。ということで、ちぐにゃにゃんとの直接のやりとりは一切禁止させてもらっているのでな。この俺が今のメッセージはちぐにゃにゃんに届けるかどうか判断することになる。そんでもって、直接のスーパーチャージはちぐにゃにゃんはお断りでな。どうしてもというなら、ちぐにゃにゃん運営・二次大惨事の眉毛ガ灰がそちらに受け取りにうかがうが、そういうことはおまえさんも求めちゃいないだろ。ということで、早々にお引取り願いたいのだが……」
アークはなぜオススマンのことを? 配信を自室にうつしてからオススマンはくるようになったから、アークはオススマンのことなんて知らないはずだけど?
そんなことを思いながら、サディはなめらかに次の言葉をひねりだす。
「ちぐにゃにゃんは子猫になりたいのニャ。子猫になるにはどうするか? お腹に虫がわくんじゃないかと思うほど、お魚を食べるのが1番ニャン。そうしたら猫のお耳と尻尾までは生えてきたニャ……」
自室でアークが開発した秘密平気! ちぐにゃにゃんスイッチを背負い、頭にはヘッドセットマイク付き猫耳カチューシャ、つけ尻尾のフルアームドちぐにゃにゃん状態で、異次元へとサディ人格をブッ飛ばした配信を続けるちぐにゃにゃんの視界に……
「!?」
あの憎きクソキモコメントの嵐によって、ちぐにゃにゃんの心に焼印のように焼き付いた……、あのオススマンのアイコンと同じマークをつけた貨物航宙船が、お部屋の窓の外に浮かんでいるじゃありませんか!
「ごめんなさいにゃ。急用ができたのにゃ。ナニカがふらっとやってきたにゃ。今日の配信はここまでにゃ」
猫耳カチューシャのヘッドセットマイクのスイッチをまずはOFF。
そしてちぐにゃにゃんは器用に自分の背中に手を回し、秘密平気! ちぐにゃにゃんスイッチをバチンとOFFにする。
「あの野郎ぉぉぉぉ!」
通常の三倍カワイイちぐにゃにゃんから、通常の三倍以上に危険なサディに戻り、漆黒と深紅の着物と猫耳とつけ尻尾をかなぐり捨てる!
脱ぎ捨てた着物の中から現れたのは、肉体を縛り上げる拘束具のように、ベルトと金具が全身に交差する黒革のドレス。それが身につける者がもつ女性特有の身体の線をこれでもかと強調する。ドレスに合わせたボトムスはやっぱりハードな黒革製。なのだけど、デザインがフレアミニスカートの形でなんだかとってもぐっとくる。そこからのびる左脚には傷口を塞ぐ赤い縫い目のような編み上げが走る、太ももまで覆うハイヒールのサイハイブーツ。右足にはサイハイブーツとは対象的に、足首からフレアミニスカートまでの距離を無防備なまでに肌をむき出しにさらすハイヒールのショートブーツ。
ゴツ! ゴツ! ゴツ!
ボンテージなサイハイブーツと、魅力的な足をだいたんにさらすショートブーツが、キャプテン・パンダと愉快な仲間達号の回廊を走りだす。
「運営さん? ちぐにゃにゃん企業勢なの? 二次大惨事ってなんかどっかの有名どころパクってない? またまたそんなこと言って、ちぐにゃにゃん本当は個人勢でしょ? わかってるんだからぁ」
オススマンの発言に、アークが頭を抱えていると……
「公開チャンネルに割り込み通信!?」
AXEが突然告げる。
「エアロック稼働!? キャプテン・パンダと愉快な仲間達号の格納ハッチが、いつのまにか開放されています!」
ミーマが驚愕の状況報告!
「ななな?」
アークが状況を理解できずに混乱。
「私、ちぐにゃにゃん。いまあなたの貨物運搬航宙船のエアロックにきているの」
サディの声が公開チャンネルに突然流れる!




