あたしは、ちぐにゃにゃんの用心棒
あたしは、ちぐにゃにゃんの用心棒
「私、ちぐにゃにゃん。いままでのお礼をたっぷりしたいから、このエアロックを開けてくれないかしら?」
公開チャンネルから流れるサディの声。冷たい戦慄が、アイアンブルーとガンメタルグレイの艦橋に走る。
「まさか……」
アークが自席の操作盤を叩く。
「ヤヴァイヤヴァイヤヴァイ! これはヤヴァイ!」
目の前で操作盤に光る、人型をした赤い点滅表示にアークが震える。
「ちぐにゃにゃ〜ん。きてくれたんだねえ。今すぐ開けるよぉ〜」
とオススマン。
「オススマン! 絶対にエアロックを開けるな! 中にいれたら最後だ! 絶対に助からん!」
アークがヘッドセットマイクに向かって叫ぶ!
「運営さーん。ちぐにゃにゃんの気持ちは運営さんとは違うみたいよぉ?」
オススマンがエアロックの解除ボタンに手をのばす!
「言っていることがわからんか!? 絶対にエアロックを開けるな! そいつは宇宙で1番危険な、ブラックホールとか超新星爆発級にヤヴァイ存在なんだぞ!」
アークがさらに叫ぶが、オススマンはそれを無視。
ぽちり。とエアロックの解除ボタンを押したのだった。
「私、ちぐにゃにゃん。エアロックの中に入ったわ。ここは貨物室ね。はやくオススマンさんに会いたいわ」
オススマンは走った。全力で通路をぶっ飛ばした。
エアロックにはいま、通常の三倍カワイイ猫娘。ちぐにゃにゃんがきている!
胸は動悸動悸! 心は沸く沸く! 頭の中はパッパラパー!
「ちぐにゃにゃ〜ん!」
オススマンが貨物室のエアロックへ突入!
目の前に立っていたのは……
それは、巨大な金属のカタマリだった。悪霊退散と書かれた両の鉄拳。左肩に取り付けられたのは、六本の銃身を束ねたヘヴィマシンガン。通常の三倍かわいくポップな感じに見えるはずの赤い塗装も、いまは無味乾燥な貨物室の照明に照らされたせいか、大惨事後の血塗られた色に見える。
「え?」
オススマンの表情が凍りつく。
「安心して。簡単には殺さない。あたしはちぐにゃにゃんから依頼を受けた用心棒よ」
キュイーーーン。
巨大な金属のカタマリからアクチュエータの動作音。左肩の六本の銃身を束ねたヘヴィマシンガンが、すみやかにオススマンへと向けられる。
パァァンッ!
乾いた発射音が貨物室に反響する。
ヘヴィマシンガンからはなたれた一発の黒い弾丸が、空中で花開き十文字形へと変形しオススマンに飛来。オススマンは黒い十文字に直撃されて、後方へとふっ飛ばされる。
ばっちーーーん!
貨物室に積載された梱包物に、黒い樹脂製のバッテンマークでガッチリバッチリギッチリ固定されるオススマン。
ウィィィィン! ガチャン! ウィィィィン! ガチャン!
全高四メートルの金属製の巨人が作動音を貨物室に響かせながら、梱包物にはりつけにされたオススマンに向かって歩いてくる。
「あああああ……」
ちぐにゃにゃんに会える幸せの絶頂から、地獄の底の冷たさの中に突っ込まれたオススマン。
「あなた。クソキモコメントの嵐で、ちぐにゃにゃんに数々のセクハラをしたわね? さらに、あなたはちぐにゃにゃんをコメントでバカにし続けた。ちぐにゃにゃんに三割しか実入りのない、高額スーパーチャージをいくらしても、その罪が消えるなんてことはないの。というか、高額スーパーチャージをする分、即ブロックすることをちぐにゃにゃんにためらわせたあなたは、とにかくやたらと異常なまでに質が悪かった。そんなあなたの行為は、あなたが贈った高額スーパーチャージをあたしへの依頼に使うことを、ちぐにゃにゃんにためらわせなかった。安心して死になさい。あなたの高額スーパーチャージは、間違いなくちぐにゃにゃんが有効に活用しているの」




